最近、死刑囚によって、
奇妙な提訴がなされた、と報道されている。
提訴したのは、東京拘置所に収容中の確定死刑囚の男性。
2007年に死刑判決が出、
2013年に最高裁で死刑が確定した。
14年以上にわたり、
着替えや排泄の様子まで、
24時間カメラで監視され続けたが、
こうした運用はプライバシー権の侵害だとして、
国に1892万円の賠償を求める訴訟を、
近く東京地裁に起こすというのだ。
この男性は、一審で死刑判決を受けた2007年から東京拘置所に収容され、
理由の説明がないまま、天井にカメラがついた「カメラ室」に入れられた。
3畳半ほどの居室に、カメラの死角になる場所はなく、
24時間監視され続け、着替えや排泄も撮影されていた。
(トイレ使用中は、下半身を隠す衝立がある、という説もある)
この記事に対して、
ネットにコメントが多数寄せられて、
みなさんの意見を読むことができたのだが、
1日ほどでコメントが表示されなくなり、
「違反コメント数などが基準を超えたため、
コメント欄を自動的に非表示にしています。」
と書かれている。
コメントが人権侵害や差別に当たりうる投稿は禁止されており、
それに該当したらしい。
同内容の別な記事では
まだコメント欄は非表示になっていない。
こちらの記事では、
賠償額の根拠も示され、
「プライバシー権侵害は甚大で、
精神的損害は1カ月10万円をくだらない」とのこと。
10万円×12カ月×14年間=1680万円だが、
それ以外にいろいろ加味されているのだろう。
それにしても、10万円の根拠は?
カメラ室に関する法律はなく、
刑事施設長が決める細則で規定されている。
東京拘置所の場合は「特別要注意者」は
原則としてカメラ室に収容するとしており、
死刑囚については「特に厳格な監視の必要がある者」とされる。
一方、2018年には熊本地裁が、
216日間にわたってカメラ室に収容した事例で
「必要性がなくなったにもかかわらず、
漫然と収容を継続することは許されない」
として3カ月間の収容について慰謝料を認める判決を出している。
ただし、この囚人が確定死刑囚であったかどうかは、
記事からは判然としない。
拘置所がカメラで監視する理由は、
自殺されたら困るからで、
それは間違っていないと思うが。
逆に一般室に入れて自殺でもされたら、
それはそれで、拘置所は激しく非難されるだろう。
コメントの内容で番多いのは、
死刑確定後、6カ月以内に執行すると、
法律で定めているのに、
なぜ長期にわたり死刑が執行されないのか、
執行されていれば、
こんな問題は起こらないだろう、
という意見。
刑事訴訟法では、
法相が死刑判決確定から6カ月以内に執行を命じ、
5日以内に執行するよう定めている。
しかし、このような迅速にされた例は、ほぼない。
7月現在、未執行中の確定死刑囚は106人いるという。
無為の囚人に食べさせている、
その経費は税金だ。
死刑執行は法務大臣のサインが必要で、
歴代の法務大臣は、それを回避してきた。
中には「私は仏教徒だから、サインしない」
と言った法務大臣もいたし、
サインして死刑執行を多数させた大臣には
「死刑執行人」という烙印さえ押された。
死刑判決確定後6か月という期間制限は
あくまで努力目標を定めたものに過ぎない、
という意見があるが、
法律に定められているものが「努力目標」だとは恐れ入る。
執行をためらう理由は「冤罪」の可能性がある場合だが、
衆人監視の中の殺人行為で、
冤罪の余地がない者でも執行されていない。
要するに、法務大臣の腹が座っていないからだろう。
もう一つ執行が延びる要因は、
死刑囚から再審請求が多数出されているからで、
執行逃れのための再審請求の側面が大きい。
棄却されても請求を繰り返す死刑囚もいるため、
「先延ばしのために請求している」との批判もある。
法務省内には、再審請求中の死刑囚には執行しないという
「暗黙のルール」があるという。
法律より「暗黙のルール」が優先される、
というのもおかしな話だ。
記事を読んで不思議なのは、
そもそも死刑囚にプライバシーを主張する権利があるのか、
ということ。
犯罪(しかも殺人)を犯して逮捕され、
刑務所(死刑囚の場合は拘置所)に収監されて、
自由を拘束されて
監視下に置かれている立場で、
プライバシーも何もないと思うが。
それに、賠償金を得て、どうするというのだろうか。
死刑執行後、家族に残すとでもいうのだろうか。
どうも、「人権派」の弁護士に丸め込まれているとしか思えない。
コメント中、次の主張が端的に世論を代表しているだろう。
自分が他の人の命を奪っておいても尚、
自分の権利のみを主張するのはあまりにも身勝手だと思う。
まさか、このコメントが違反だとは言うまい。
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