徒然映画日記。

食わず嫌いは卒業し何でも観よう。思い切りネタバレありの「観た帳」です。

痴人の愛

2008年06月10日 | ★★★




痴人の愛
おすすめ度
製作:1967年 日本
監督:増村保造
原作:谷崎潤一郎
脚色:池田一朗
出演:安田道代 小沢昭一 田村正和 倉石功 村瀬幸子 紺野ユカ

谷崎潤一郎の同名小説を映画化した「痴人の愛」です。この作品はこれ以前にも2度映画化されているそうです(1949年・1960年共に木村恵吾監督)。

工場のエンジニアである河合譲治(小沢昭一)は酒も煙草も博打もしない生真面目な男です。身を固めるように、と上司からも心配されていますが、彼は秘かにナオミ(安田道代)という女と同居していました。カフェの店員として働いていたナオミを引き取り、彼女を理想の女性に仕立て上げようと日々彼女の世話をしていたのです。そして、1年後遂にナオミと結婚します。譲治はナオミに教養をつけさせようと、英語やピアノやイタリア語を習わせますが、ナオミは学生の浜田(田村正和)や熊谷(倉石功)らのボーイフレンドと遊びまわり、勉強をする様子がありません。そのうえ、ナオミが誰彼の構わず身を任せているという噂がたちはじめ、会社の同僚にも耳に入ります。遂に「彼女とは別れた方がよい」と忠告されてしまいますが…。

この作品、一度BSでやっていた時、中途半端に観ていたのですが、今回レンタルしてようやく全編観てみました。

作中に出てくる「ナオミの日記」というアルバムがすごく印象的。子猫のように無邪気でわがままな少女ナオミが妖艶さを増しだんだん「女」になっていくのです。それにしても自分が育てたはずの女性に破滅させされるとは…。哀れです。真面目な男ほどのめり込むと怖いんですねえ。あ。でもそれもまた一種のプレイか!じゃあ、こんな幸せはないですねっ。めでたし、めでたし。

監督は安村保造。独特な視点で描いた愛憎劇は、一度観たら忘れられない強烈なインパクトを残します。最近は安村作品もDVD化されているようなので、少しずつ観ていきたいと思います。


痴人の愛@映画生活
前田有一の超映画批評



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太陽を盗んだ男

2008年06月09日 | ★★★★★
太陽を盗んだ男
おすすめ度
製作:1979年 日本
製作:山本又一朗
監督:長谷川和彦
脚本:長谷川和彦 レナード・シュナイダー
出演:沢田研二 菅原文太 池上季実子 北村和夫 

原爆を作り政府を揺する凶悪犯を沢田研二がスタイリッシュに演じた「太陽を盗んだ男 」です。

無気力な中学校の理科教師・城戸誠(沢田研二)。彼は兼ねてからある計画を企てていました。それは自分の手で原爆を作り、日本政府を脅迫する事——。
ある日それは実行されます。原子力発電所から液体プルトニウムを強奪し、遂に自宅アパートで原爆を完成させてしまいます。早速、金属プルトニウムの欠片と梅干を仕込んだダミー原爆を国会議事堂に持ち込み、日本政府を脅迫★
そして誠は、交渉人に山下警部(菅原文太)を指名します。彼は以前誠が引率していたクラスがバスジャック事件に巻き込まれたときに、自分の身を呈して救出した男でした。

1979年と言えば米ソの冷戦時代真只中。その時期に「核爆弾モノ」。
あははは…(汗)。

この作品は何と言っても沢田研二ありき!彼の魅力なしには語れないと思います。拳銃を構えるシーンなんてのは「タクシードライバー」のデニーロそのもの!ほかにも老人・泥棒・妊婦・髭メン…などなど色んなジュリーのコスプレが堪能できます。

「相棒」で再ブレイク中の水谷豊や、「探偵ナイトスクープ」(←ジャンル違うし 殴)で大活躍の西田敏行もちょい役で出演。キャストひとつとっても何かと見どころの多い作品です。

また、皇居前広場や国会議事堂、メーデーのデモ隊行進で騒然とした町並みなど、ゲリラ撮影ならではの臨場感溢れる映像もわくわくします。そして、そして!異色の競演とも言える沢田研二と菅原文太との絡みがスゴイ!ラストの壮絶な格闘シーンは釘付けになる事受け合いです。

結構社会派で重いテーマにも関わらず、粋でポップ。いつ観ても色褪せる事のない邦画史に残る名作だと思います。





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カリガリ博士

2008年06月08日 | ★★★★★


カリガリ博士
おすすめ度
原題:Das Kabinett des Doktor Caligari
製作:1919年 ドイツ
監督:ローベルト・ヴィーネ
脚本:ハンス・ヤノヴィッツ カール・マイヤー
出演:ヴェルナー・クラウス コンラート・ファイト フリードリッヒ・フェーエル リル・ダゴファー

芸術続きで(ちと強引??)1919年に制作された、ドイツ表現主義を代表するサイレント映画「カリガリ博士」です。

物語は1人の男が「恐怖体験」を語る回想シーンから始まります。
フランシス( フリードリッヒ・フェーエル)は、友人のアランと、村のカーニバルに出かけます。彼らはポスターに誘われ、カリガリ博士(ヴェルナー・クラウス)が主催する見世物小屋に入場します。小屋の中ではカリガリ博士が、23年間箱の中で眠り続けている、眠り男チェザーレ(コンラート・ファイト)を紹介していました。博士は、チェザーレにどんな事を尋ねても質問に答えられると言います。そこで、アランがちょっとした悪戯心で「自分の寿命はいつまで?」と尋ます。するとチェザーレは「明日の夜明けまで」と答えるのでした。その回答に驚いた2人は急いで見せ物小屋を後にします。そして翌朝、フランシスは村人から、アランが何者かに殺されたことを知らされます。この村ではつい最近も役場の職員が殺されたばかり。騒ぎは大きくなり、連続殺人事件に発展します。平和だった村は一気に緊張が走ります。

今さら言うまでもない名作中の名作ですねっ。
映画界だけに留まらず、これまでどれだけのクリエイターに影響を及ぼしたかしれない伝説の作品です。

まず驚かされるのはその芸術性。
この作品が製作された頃のドイツの美術・工芸・写真・デザイン・建築における水準は世界のトップクラス。バウハウスの設立(1919年)なんかはその象徴とも言えます。全て書き割りによるデフォルメされたセットは本当に素晴らしく、まるで騙し絵を見ているような不思議な感覚に陥ります。メイクや特殊効果を駆使した演出も秀逸です。また、ストーリーも画期的。今ではサスペンスの定番になっている「どんでん返し」。この作品にもあっと驚く仕掛けが用意されています。

目からうろこが連続のこの作品、機会があれば是非!

ちなみに、この作品と並んで必ず名前の挙がるのが「メトロポリス」。
実はまだ観た事がありません。
セルでもこの作品だけない事が多くて…。
うーん。是非観てみたい。


カリガリ博士@映画生活
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ニキフォル  知られざる天才画家の肖像

2008年06月07日 | ★★★★




ニキフォル知られざる天才画家の肖像
おすすめ度
製作:2004年 ポーランド
製作:ジュリアス・マチュルスキ
監督:クシシュトフ・クラウゼ
脚本:クシシュトフ・クラウゼ ヨアンナ・コス
出演:クリスティーナ・フェルドマン ロマン・ガナルチック イエジ・グデイコ ルチアナ・マレク アルトゥール・ステランコ
キャッチコピー:神さまがくれた色使い。

ポーランドの画家ニキフォルと、彼の晩年を支えた男性を描いた伝記映画「ニキフォル  知られざる天才画家の肖像」です。

1960年のポーランドはクリニツァ。役所で働きながら画家としての活動に励むマリアンは、事務所の一角に小さなアトリエを持っていました。ある冬の日、一人の老人がアトリエに入ってきます。彼の名はニキフォル。マリアンは、アトリエに居座りマイペースに振る舞うニキフォルに大いに困惑します。しかし、肺病に侵された彼を見放す事も出来ず渋々面倒を見始めます。芸術に精通したマリアンには確かな審美眼がありました。アトリエで共に過ごす時間の中で彼は、ニキフォルの絵の素晴らしさに気付きはじめます。そして彼は家族と過ごす時間よりニキフォルの世話を優先するようになり、妻ハンカは不満を募らせ、平和だった家庭に亀裂が生じはじめます。

生涯画家として描き続ける事にこだわるニキフォルとそれを献身的にサポートするマリアンとの微妙な関係がとても切なくて胸が締めつけられます。クリニツァの静寂な雪景色も印象的でした。

私はこの作品を観るまでニキフォルの事を知りませんでした。なので、ここで彼の事を少しお勉強。

ニキフォルは(1895~1968年)は言語障害のため、周囲とのコミュニケーションがうまくはかれなかったため、観光客相手に絵を売る事で生計をたてていました。作品のほとんどは水彩画で、鉄道の駅や汽車、田園風景、聖堂、工場、役所などをモチチーフに生涯4万点もの作品を残したそうです。ニキフォルの才能は晩年に高く評価され、アール・ブリュット(フランス語で「加工されていない生の芸術」という意味で「アウトサイダー・アート」「障害者アート」を指す意味もある)の先駆者としても知られるようになったといわれています。

小柄な老人、ニキフォルを演じるのはなんと男性ではなくクリスティーナ・フェルドマンという女優さん!ビックリです。自由奔放で頑固で偏屈なアーティストを見事に演じ上げています。

久々の芸術家の伝記ものでしたが、とても良質な作品に大満足です。


ニキフォル 知られざる天才画家の肖像@映画生活
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パンズ・ラビリンス

2008年06月06日 | ★★★★



パンズ・ラビリンス
おすすめ度
原題:El laberinto del fauno 英題:Pan's Labyrinth
製作:2006年 メキシコ スペイン アメリカ
製作:ベルサ・ナヴァロ アルフォンソ・キュアロン フリーダ・トレスブランコ アルバロ・アウグスティン
監督・脚本:ギレルモ・デル・トロ
出演:イヴァナ・バケロ セルジ・ロペス アリアドナ・ヒル マリベル・ヴェルドゥ
キャチコピー:だから少女は幻想の国で、永遠の幸せを探した。

第79回アカデミー賞で撮影・美術・メイクアップの3部門を受賞したファンタジー大作「パンズ・ラビリンス」です。

舞台は1944年、内戦終決後のスペイン。仕立て屋だった父を亡くした少女オフェリア(イヴァナ・バケロ)は妊娠中の母(アリアドナ・ヒル)と共に再婚相手の待つゲリラが潜む山奥へと向かいます。独裁政権軍でレジスタンスの弾圧を指揮する冷酷で残忍なヴィダル大尉が新しい父親です。大尉にもそこでの生活にも馴染めないオフェリア。そんな彼女の前に妖精が現れ、森の中の迷宮へと導かれます。そこではパンという迷宮の番人が待っていました。そして、オフェリアを魔法の国の王女であると言い、魔法の王国に戻るために3つの試練を与えるのでした。

うわあ…。

やられました。

ファンタジーもたまにはいいかな?とかなり軽い気持ちで観始めたんですが…。

凄い作品でした。

本が大好きな少女の空想の世界。
内戦が続く中で反りの合わない義父の元での辛い現実の世界。
このふたつの世界が交錯しながら物語が進行します。

あまりにも辛すぎる現実世界。
そんな世界から逃避するために、少女は空想をします。
現実と空想のギャップが悲しくて、虚しくて、とても切ないです。

こんなファンタジー、観た事ないです。

やられました…。


パンズ・ラビリンス@映画生活
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ナチョ・リブレ 覆面の神様

2008年06月05日 | ★★




ナチョ・リブレ 覆面の神様
おすすめ度
原題:Nacho Libre
製作:2006年アメリカ
製作 ジャック・ブラック デヴィッド・クローワンズ ジュリア・ピスター マイク・ホワイト
監督・脚本:ジャレッド・ヘス ジェルーシャ・ヘス マイク・ホワイト
出演:ジャック・ブラック エクトル・ヒメネス アナ・デ・ラ・レゲラ リチャード・モントーヤ ピーター・ストーメア

ジャック・ブラックのキャラクター全開の「ナチョ・リブレ 覆面の神様」です。ジャレット・ヘスってなーんか聞いた事あるなあ…って思ってたら、バス男を監督した人だったんですね〜。

宣教師だった両親と死に別れたナチョ(ジャック・ブラック)はメキシコの修道院で育ちます。大人になり、彼は料理番として孤児たちの面倒を見ていましたが、修道院の資金難でろくに仕入れも出来ず子どもたちに満足に食べさせることができません。そこで、小さな頃から憧れだったプロレス“ルチャ・リブレ”のレスラーとなって賞金を稼ぐことを決意。ナチョは覆面とタイツの戦士となって闘いのリングへ向かいますが…。

このジャケット(笑)完全に出落ちです(爆)。

おバカ映画も、ジャック・ブラックも好き。

期待は膨らみます。

ところがどっこい(←死語?)

あらら…。

乗り遅れてしまったみたいです。

うーんと…。

感想は、「ジャケットが一番面白かった」って事で。

残念。

ナチョ・リブレ 覆面の神様@映画生活
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ダーウィン・アワード

2008年06月04日 | ★★★



ダーウィン・アワード
おすすめ度
原題:The Darwin Awards
製作:2006年アメリカ
製作:ジェーン・シンデル ジョニー・ウー ジェイソン・ブラム
監督・脚本:フィン・テイラー
出演:ジョセフ・ファインズ ウィノナ・ライダー デヴィッド・アークエッ ジュリエット・ルイス ジュリアナ・マーグリーズ タイ・バーレル
キャッチコピー:うっかり死んじゃいました

「ダーウィン賞」にすっかりハマっちゃった元プロファイラーの再出発の旅(?)を描いた「ダーウィン・アワード」です。

血を見ると失神してしまうという致命的な弱点を持つプロファイラーのマイケルは警察をクビになってしまいます。そんな彼の目下のマイブームは、インターネットの“ダーウィン賞”。ある時彼は、この賞で取り上げられている人たちが保険会社に莫大な損害を与えていると確信します。元プロファイラーの能力でそのリスクを回避できると保険会社に自分を売り込みに行き、会社側はそれを証明できれば採用すると約束します。こうしてマイケルは、保険調査員のシリ(ウィノナ・ライダー)をパートナーに、全米各地のダーウィン賞候補の再調査へと出掛けます。

「The Darwin Awards」って、本当にあるんですね!「人類をより長く存続させるために、崇高なほどバカバカしい方法で自らの遺伝子を抹消する人々を賞賛する」というコンセプトらしいです。うーん、ブラック〜。

作中には

強化ガラスの強度を証明しようと窓ガラスに体当たりをして高層ビルから落下した男性。
自販機に手を突っ込んで動けなくなった怒りを自販機にぶつけ(殴る蹴る)、その拍子に倒れてきた機械の下敷きになり死亡した男性。
ドライブ中に自動運転機能を使い、いちゃついている最中に車は大きくコースアウト。道路添いにあるデンタルクリニックに追突し、重傷を負う医師と患者(←キュイーンとやってる最中 震)と乗車していたバカップル(男性の大事なところは大惨事 ex:ガープの世界)。
メタリカのライブを見たい一心で無理矢理会場に忍び込もうとする男2人組。訳の分からないうちにどんどん深みにはまり、遂に落下してきた自分の車で圧死する男性。

まー、色んなおバカちゃんたちが考えられない状況でバッタバッタと死傷します(笑)。

他にも、サスペンスあり、ちょっとしたロマンスもありと色んな要素がてんこもり。「あほやー」と言いながら気楽に観れる娯楽作です。映画的にどうだこうだ言う作品ではないと思います。でも私、基本的にあほには弱いのです(笑)。

「ダーウィン賞」は書籍もあるらしく、ちょっぴり読んでみたいな。なんて思っています。


ダーウィン・アワード@映画生活
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ゆれる

2008年06月03日 | ★★★★



ゆれる
おすすめ度
製作:2006年 日本
製作:熊谷喜一
監督・脚本:西川美和
出演:オダギリジョー  香川照之  伊武雅刀 早川 勇 新井浩文  真木よう子
キャッチコピー:あの橋を渡るまでは、兄弟でした。

やっと観ました。色んな人からおすすめされていた西川美和監督の「ゆれる」です。

故郷を離れ、東京で写真家として活躍する弟・猛(オダギリジョー)。母親の法事で久々に帰省し、兄・稔(香川照之)と昔の恋人・智恵子(真木よう子)と再会します。猛と智恵子が一夜を過ごした翌日、3人は渓谷へと向かいます。猛が智恵子を避けるように吊橋を渡り林の中で写真を撮っているとき、智恵子が渓流にかかる吊橋から落下します。その時、近くにいたのは稔だけ。事故だったのか、事件なのか。そしていよいよ裁判がはじまりますが…。

足元がおぼつかない古い吊橋から
下を見た時に沸き起こる不安や恐怖のような——。
まさに「ゆれている」ときの心理を見事に描いた作品。
これ以上ないぴったりなタイトルですね。

香川照之の演技が凄いです。
哀愁漂う背中の演技は本当に惹き付けられました。
洗濯物をたたむ後姿なんてもうたまりません。

幼馴染みの死により今まで封印していた思いが爆発してしまう兄。
華やかな弟の人生とは対照的に家業を継ぎ、いつも人に為に地道に頑張ってきたはずなのに。
淡い恋心を抱いていた幼馴染みの気持ちは弟に傾いていた。
彼女の死に対する罪悪感。

対して

自由気ままに生きてきた自分とは対照的に地元に残り信頼関係を築き上げ周囲からの人望も厚い兄。どんなに頑張ったってあんな風には生きられない。
そんな兄に起こった「事件」
兄の変貌に戸惑う弟。
兄を助けたい、と弁護士の叔父の事務所や刑務所に通うも
それは兄を助けいという純粋な気持ちからなのか?
今までの兄への負い目をこの事件を機に解消したかったのか?
あるいは自分への影響を恐れての行動なのか?
建て前か?本音か?
(全部正解な気もするが。)

物語がすすむにつれ、ふたりに感情移入してしまい何とも言えない気持ちになりました。兄の居る私。自分ならどうするだろう、と考えずにはいられません。



ラストの稔の笑顔がこの作品の唯一の救いでした。


ゆれる@映画生活
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新幹線大爆破

2008年06月02日 | ★★★★





新幹線大爆破
おすすめ度
製作:1975年 日本
製作:
監督:佐藤純弥
脚本:小野竜之介 佐藤純弥
出演:高倉健 山本圭 織田あきら 宇津井健 千葉真一 小林稔侍 福田豊土 山下則文 滝沢双 千葉治郎 志村喬 永井智雄 丹波哲郎

引き続き70年代の作品をば。先日邦画好きの女性からおすすめしていただいた作品「新幹線大爆破」です。この作品、キアヌ・リーブス主演の「スピード」の下敷きになった作品なんだそうです。

約1,500人の乗客を乗せたひかり109号博多行は定刻どうり東京駅を発車します。列車が出発して間もなく、国鉄本社公安本部に109号に爆弾を仕掛けたという電話が入ります。仕掛けられた爆弾はスピードが80キロ以下に減速されると自動的に爆発するというものだったのです。

おすすめしてくれたのは20代のお嬢さんなのですが、何と彼女は健さんファン。うーん、渋いぜ。あんなに目を輝かせておすすめされたら観ない訳にはいきません。きっと凄い作品に違いない!と期待をして観賞。

なんと良い作品でした〜。
期待し過ぎるとがっかりしてしまう事が多いのですが、期待以上の良作!
パニック系サスペンスとしての素晴らしさはもちろんですが、それ以上に心惹かれたのは事件を通じ交錯する様々な人間模様。焦躁、絶望、狂気、様々な心情が描かれた群像劇としての出来も秀逸でした。

自動車工場の経営に失敗し、一家離散してしまった沖田哲男(高倉健)。
渋い。
渋すぎる。
何があっても慌てない。
無駄な台詞は一切なし。
その存在だけでひとりの男の人生を饒舌に語る健さん、男前です。

元過激派で、反骨精神旺盛の古賀勝(山本圭)。
彼は、見ていてとっても切ない。
元過激派ということでも分かりますが、ある意味彼は時代に取り残された男なんですね。志半ばで挫折した改革。その時にぽっかり空いた心の穴を埋めたくてこの犯行を持ちかけたんですね。
何かを成し得るために。
うーん、しょっぱい。

沖田を慕う19歳の元整備工大城浩(織田あきら)。
彼はこの犯行グループの最年少。まだあどけなさが残る素直でかわいらしい青年。事の重大さを本当に分かっていたのかな、と思ってしまうほど幼い。うーん。

挫折という共通点を持った男たちが「誰も血を流さない完全犯罪」を計画し実行に至るまでの犯人側のバックグラウンドが何とも切ないのです。

また、彼らと対峙する

正義感の塊のような男、運転司令長(宇津井健)。
人名救済を第一に、的確に状況を判断し指令を出す優秀な司令官。事件が長引きはじめ非情な決断をせまられる一連の場面は心が熱くなります。

ひかり109号を運行した青木運転士(千葉真一)。
一瞬たりとも気を抜けない緊迫した密室の中でとんでもない運行を強いられます。緊張、焦躁、誰にぶつけて良いか分からない怒り。元SL運転士というプチ情報もはさみつつテンションの高い役をダイナミックに演じています。

…とまあ、こういう究極の状況下なので、当然人間のエゴはむき出しです。乗客たちもまた然り。妊婦、女医、3兆円の取引を控えた商社マンなど様々な事情をかかえた人間たちの背景もきちんと描かれています。

スリリングな展開にハラハラしながら全神経を画面に傾けた2時間半。
これは是非スクリーンで観てみたい作品のひとつです。
どこかでリバイバル上映されないかな?

隠れた名作との出会いに感謝です。

新幹線大爆破@映画生活
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パンダコパンダ

2008年06月01日 | ★★★★★


パンダコパンダ
おすすめ度
製作:1972年パンダコパンダ/1973年パンダコパンダ雨降りサーカス
原案・脚本・画面設定:宮崎駿
演出:高畑勲
声の出演:杉山佳寿子 熊倉一雄 太田淑子 山田康雄 瀬能礼子 峰恵研

トトロとハイジのモデルとなり、宮崎アニメの世界の原点とも言われている名作「パンダコパンダ」です。35年経とうとしている今でも色褪せる事なく幅広い層に支持されています。この作品は1972年に上野動物園にパンダ送られたことをきっかけに起きたパンダブームに便乗し製作されたアニメーションなんだそうです。

ミミ子は祖母を法事へ送り出し、しばらく一人暮らしをすることになります。夕飯の買物をして帰宅するとしかしそこには言葉を話す子供のパンダ、パンちゃんとその父親のパパンダが居ました。すっかり仲良くなったミミ子はパパンダにはお父さんになってもらい、パンちゃんには自分がママになると決め、一緒に生活をすることになりました。

いいですねえ。
パンちゃんが可愛くて仕方ない。
オープニングなんてもう最高です!
疲れたときや癒しを求めているときに観たくなる作品のひとつです。

正直最近のジブリ作品にはあまり興味はありませんが、「アルプスの少女ハイジ」(1974年)「未来少年コナン」(1978年)「ルパン三世 カリオストロの城」(1979年)などを観て育った世代としてはこの70年代の宮崎駿関連アニメはたまりません。

DVDには「パンダコパンダ」の続編「パンダコパンダ雨降りサーカス」も収録されています。他にも1994年の宮崎駿と高畑勲の対談や2000年に収録した高畑勲の製作秘話インタビューなど特典映像満載のおすすめの1本です。


パンダ・コパンダ@映画生活
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