
母が事故で亡くなり、再婚相手の継父と暮らす連と楓の兄妹。
両親を事故と病気で亡くし、父親の再婚相手の継母と暮らす辰也と圭介の兄弟。
自分達に暴力を振るい、部屋に篭って働かない継父をうとましく思って、いつしか殺意を抱くようになった連。
母親が海で死んだのは、継母の計画的な殺人だったと思っている辰也。
そしてタイトルにもなっている『雨』
物語が進む間、雨はずっと激しくなったり小雨になったりしながら、降り続けています。
雨って、傘をさすから両手の自由がきかないし、気をつけていても足元が濡れて気持ち悪いし、なにより外出がおっくうになりますよね。
そんな重苦しい天気が、この2組の複雑な家族を包む感情をますます暗いものにしているようで、読んでいる私も気持ちが引きずられてしまいました。
連と楓の継父があるきっかけで死んで、そこから連・楓・辰也・圭介の4人の人生が大きく動き出します。
しかも、なにをやってもどんどん悪い方向に転がっていくようで、運命の糸はますます絡まってしまうし、読んでいる間はずっと、この4人を助けてほしいと祈るような気持ちになっていました。
雨が、災害の元にも豊作の元にもなるように、人間には誰にでも表の部分と裏の部分がある。
相手が本当はどういう人なのか、その判断は本当に危ういものだと思います。
道尾さんらしい文章のトリックも盛りだくさんだし、突然全てがクリアに見える衝撃の演出もさすが!です。
上にも書きましたが、全編を通して降り続ける雨の役割もすごいです。
本当にとても面白い本でした。
道尾さんの本がどんどん文庫化されてきてるので、しばらく続けて読んでみようかなと思います
