【日本を良くし強くする 国民の憲法】
(5)-1 「決められる政治」へ
2013.5.1 10:32
「アベノミクス」によって、経済ひいては社会に明るい雰囲気が戻りつつある。しかし、昨年暮れまでの日本は「衰退する大国」という印象で語られることが多かった。その理由に挙げられたのが、ねじれ国会による「決められない政治」だった。厳しさを増す内外情勢の下、日本は、必要な法律の制定を迅速に行うことが求められている。
「今の憲法の第59条では、衆院が法案を可決して参院が否決(や採決見送りを)したら、衆院の再可決は3分の2以上の賛成が必要だ。非常に厳しい。これが決められない政治につながっている」
「国民の憲法」起草委員の西修駒沢大名誉教授は4月26日の憲法シンポジウムで、ねじれ国会の弊害をこう指摘した。
今世紀に入ってからでも日本の政治は、第1次安倍晋三内閣下の平成19年参院選、菅直人内閣下の22年参院選で、ねじれ国会に陥った。政権交代があった昨年12月の衆院選以降も、国会はねじれている。ただ、与党が衆院で3分の2超を占めたため、法案の衆院再可決が可能になった点が異なっている。
一票の格差の是正をはかる公職選挙法改正案が、後半国会の対決法案になっている。4月19日の衆院政治倫理・公選法改正特別委員会で、民主党や日本維新の会などが欠席する中で、与党が可決。同23日には、維新が欠席した衆院本会議で可決され、野党が多数を占める参院へ送付された。
与党が急いだのは再可決問題がある。憲法59条の規定で、参院が法案を否決したとみなして衆院が3分の2以上の賛成で再可決できるのは、参院送付から60日以降。国会法68条は、会期内に議決されなかった議案は廃案とする「会期不継続の原則」を定めている。
改正案を今国会で成立させるには、参院送付から会期末(6月26日)まで60日以上が必要だからだ。
与党が衆院で3分の2以上を占めているため再可決を想定できるが、時間はかかる。現行制度の再可決は、世論の評判を気にする与党にとって政治的ハードルが高く、いつも使えるわけではない。
「国民の憲法」は、衆院の法案再可決の要件を「過半数」へ緩和、みなし否決期間も30日に短縮した。衆院議員任期を一つの会期とみなす「立法期」を導入したのは「会期不継続の原則」をなくすためだ。国会は日程闘争から論戦重視への転換を促され、論議の質の向上が期待できる。
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現行制度の下で与党が衆院で法案を再可決しようとする際、必ず出るのが「参院軽視」という批判だ。野党は「参院選での民意」を主張して政府・与党を牽(けん)制(せい)する。衆参両院の選挙制度が似ているため、両院が代表する「民意」の性質に違いを見つけにくいことに原因がある。
「国民の憲法」は、法律の議決の面で衆院の優越を強化する一方で、抜本的な参院改革を行う。参院に一部、間接選挙を導入し、地方の声を反映する議員の選出を想定している。参院は「行政監視院」という手足を持ち、衆院がポピュリズム(大衆迎合主義)に陥らないよう抑制する。
参院が「良識の府」としての役割を取り戻すことが求められている。(憲法取材班)
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【要綱の条文】
第五章 国会
第六〇条(参議院議員の選挙) 参議院は、直接選挙および間接選挙によって選出される議員で組織する。
第六五条(立法期および会期) 衆議院議員の任期をもって、立法期とする。立法期中に議決に至らなかった案件は、次の立法期に継続しない。
第七一条(法律の議決) 2 衆議院で可決し、参議院でこれと異なった議決をした法律案は、衆議院で出席議員の過半数により再び可決したときは、法律となる。ただし、衆議院で再び可決するときは、参議院で議決されたのち、30日を経なければならない。
第七四条(人事案件の同意) 法律で定める公務員の就任については、国会の同意を得なければならない。
2 前項の案件は、先に参議院に提出しなければならない。
第七八条(行政監視院) 参議院に、行政監視院を設置する。
MSN Japan産経ニュース
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