まさおレポート

ソフトバンクの光1回線貸し出しを求める訴訟が却下

今回のソフトバンクの訴訟はその相手を間違えたためか、あるいは地裁への訴状内容の説得材料が不足したためか、東京地裁に一蹴されている。

毎日新聞の記事からは、地裁は「訴訟するならNTTの8回線単位の光回線貸出を認可した総務省に対する行政訴訟にしてくれ」と言っているように読める。東京地裁の却下は認可というタームから当然推測されるものだとの見方もできるが、しかし過去の公取での類似の審判と比較検討してみるとなかなかそう簡単に割り切れるものでもないことがわかる。結論は訴訟テクニック上の問題ではなかろうか。

以下 毎日新聞より引用して今回の訴訟却下を眺めると。

 光回線貸し出し:ソフトバンクの請求棄却「NTTに義務」 毎日新聞 2014年06月19日 20時29分より

 NTT東日本とNTT西日本の光回線(光ファイバー)貸し出し方式は、独占禁止法が禁じる不当な取引拒絶に当たるとして、ソフトバンクグループが差し止めを求めた訴訟の判決で、東京地裁(氏本厚司裁判長)は19日、請求を棄却した。

  ソフトバンクはNTTが保有する光ファイバーを借りたサービス提供を検討しているが、NTTは貸し出しを8回線(光ファイバー1本分)単位でしか認めていない。このためソフトバンクが「余計なコスト負担を強いられる」と1回線単位での貸し出しを求めた。

氏本裁判長は判決で、8回線単位の貸し出し方式は国の認可を受けていると指摘、「NTTは1回線での貸し出しに応じてはならない義務を課されている」などと述べた。【山本将克】

引用終了

裁判長は「NTTは1回線での貸し出しに応じてはならない義務を課されている」と認可の本質から一蹴している。総務省は認可を行うに当たり8回線単位での貸し出し料金を合理的と判断している。1回線での貸し出しが無いと言う前提での合理性であり、つまり「NTTは1回線での貸し出しに応じてはならない義務を課されている」という帰結になるようだ。

では参考までに過去の光回線貸出でNTTと争った類似のケースをみてみると、今回の却下となにが異なるかが見えてくる。

2003年12月4日に委員会がNTT東日本が戸建て住宅向けBフレッツプラン「ニューファミリータイプ」で、月額料金を4500円に設定した価格がほかの事業者に光ファイバー1芯を貸し出す際の接続料、5074円を下回り、独占禁止法に基づく勧告を行ったが、同社がこれを応諾しなかったため、審判を開始した。

2004年2月25日 NTT東日本に対する審判を公正取引委員会審判廷で開始

2007年3月29日 公正取引委員会は2004年2月15日審判開始から3年後にようやく審判審決を行った。

主文の概要: 加入者光ファイバ設備を保有しない他の電気通信事業者が,被審人の加入者光ファイバ設備に接続して戸建て住宅向けFTTHサービス事業に参入することを困難にし,これを排除していたものと認めることができる。

被審人の行った本件排除行為は,市場支配的状態を維持し,強化する行為に当たり,東日本地区における戸建て住宅向けFTTHサービスの取引分野における競争を実質的に制限するものに該当するというべきである。

2010年12月17日 NTT東日本が審決取り消しを求めた訴訟の上告審判決で、最高裁第2小法廷(千葉勝美裁判長)は17日、NTT東側の上告を棄却した。実に6年以上かかって決着を見たことになる。

最初の入り口が地裁か公取かの違いがあるが、両訴訟で本質的に異なる点は2004年2月25日のNTT東日本に対する審判事例では、NTTは戸建て住宅向けBフレッツプラン「ニューファミリータイプ」で、月額料金を4500円に設定した価格がほかの事業者に光ファイバー1芯を貸し出す際の接続料、5074円下回っている点である。つまり過去のケースは4500円も5074円も認可済みの料金である。今回の訴訟では認可されていない1回線貸し出しを争っている。

この過去の審判事例も双方の料金が認可されているのであり、却下されてもおかしくなかったがそうはされていない。

そうなると、今回の地裁却下は単なる訴訟テクニックの問題とも解釈できる。光1回線認可をめぐる訴訟は①相手を変えて公取に審判を請求するか、②地裁に過去の公取審判事例を付加して却下する理由のないことを添えて再申請するかということになろうか。

 

 

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