まさおレポート

バリのバビグリン(豚丸焼き)

今日本に一時帰国中で、寒いので外に出る気にもなれず、あり合わせのものを作って、ビールのつまみにしている。木綿豆腐と鮭とセロリ、それにちりめんじゃこが冷蔵庫にある。少し考えたが、そうレパートリがあるわけでもないので、あり合わせのものをすべてごま油炒めにする。結果、けっこうおいしくできあがった。豆腐の淡泊さがごま油とマッチしている。バリだとオリーブ油かココナツオイルなので、久しぶりのせいもあり、美味い。それにときどき塩鮭が濃厚な味で顔をだし、舌を刺激する。セロリは食感が楽しめる。つれあいの実家から送っていただいた音戸のちりめんは上品な塩味で、これまたセロリと豆腐に良く合う。しごく満足なつまみにできあがった。もちろんおかずもこれのみだ。

ここで、自然な成り行きで、バリの食い物が比較の対象として頭の中に顔をだす。
ナシゴレン(焼きめし)やミーゴレン(焼きそば)がポピュラーだが、なんといっても筆頭はバビグリンで、これはバリ人が最も好む食い物ではないかと思う。バビグリンとは豚の丸焼きのことだが、豚の丸焼きがそのまま出てくるわけでは無い。

かなり多くのバリ人が日本語を話すので、20年前にバリに来たときは、バビグリンを「豚丸焼き」と教えてくれた。それで頭のなかには、子豚の丸焼きがそのまま皿に乗って食卓に出てくるイメージをもったのだが、それは全くの誤りだった。確かに焼き上げるときは丸い棒を通して、イメージ通りに薪で丸焼きをするのだが、食卓にはそれぞれの部位を適切に調理したものが出てくる。

スープには必ずリブのぶつ切りが入っている。皿の盛りつけの花形は豚の皮で、北京ダック風に焼いてある。豚肉はスパイスをきかせて煮込んである。腸詰めのソーセージがあり、レバーの黒焼き風があり、豆ともやしが豚肉のおそらく脂身とまぶしてある。

バビグリン屋では、ガラス越しに素材が陳列してあり、大抵の店では黙ってすわるとそれらが組み合わされて盛られ、ご飯とスープとともにでてくる。バリエーションは一切無い。盛りつけの内容もどの店も例外はない。スープもどの店も一緒だ。それでも味の善し悪しはでてくるものらしい。私はどの店のバビグリンも美味しいと思ったが、聞いた範囲ではすべてのバリ人がウブドのイブオカがナンバーワンだという。一度ウブドにいったら喰ってみたいものだが。

どの店も同じ盛りつけで同じスープ、「何とか風バビグリン」は存在しない。このあたりが、バビグリンが聖なる食事=特別な食事を強調しているのかもしれない。バビグリン屋でバビグリン以外を喰うのはありえないらしい。これも日本の比較では見あたらない。だからメニューをみてあれこれ迷う事は必要ない。選択の余地があるのは飲み物とデザートくらいなのだ。他のワルン(ローカル食堂)にいくと選択は自由に広がるのに。

もう一つの特徴は、これだけ人気がある食べ物なので、どこでもかなり繁盛しているので、あるエリアに競合がかなりあってもよさそうなのだが、そうではない。初めてのエリアでは探すのに骨をおる。土地の人に聞いてやっと店がわかる。そんな程度にまばらなのだ。これも不思議な現象だ。バリ人は儲かる商売にはすぐまねをしてあっという間に類似の店が乱立するのに。ひょっとすると、ブラフマン階級(僧侶)しかバビグリンを作ってはいけないのかと根拠の薄いことを考えてみる。しかし全く根拠がないわけではない。20年ほど前にバリを訪れたときは、知り合いのバリ人の父はブラフマン階級の僧侶で、サヌールで豚丸焼きの店をやっていると言っていた。彼の家を訪れると庭の一角に子豚を飼っていて、豚のイメージとは裏腹に、毛皮が真っ白に磨きあげられ清潔そのものだったのが印象に残っている。

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