からちゃん<その2>
♪♪♪ からちゃんは川を流れる桃を見る昔話の絵本の桃を (松井多絵子)
アキがキッチンで昼食の後片付けをしているとき、からちゃんは家を抜け出す。火曜の午後はイヤな午後、先月から「おんがく教室」へママにつれられて行くようになった。教室には女の子が4人いて、5、6歳らしい。今のところ、その子たちが唄うのをまねするだけ。唄わなくても、聞いているだけでもいいけれど、退屈だ、窮屈だ。図書館で絵本を見ている方が楽しい。
区立図書館の本の貸し出し係りのサヨリさんは32歳独身女性。4か月位前、からちゃんに絵本を読んであげた。そのときは図書館が空いていたが忙しいときはダメ。ひとりで読めるように平仮名を教えたら、からちゃんはすぐ憶えてしまった。「この子は利口だわ。男の子みたいだけど、可愛い、絵本を見ている時とても可愛い。結婚しなくてもこんな子供が欲しい」とサヨリさんはおもう。三度も失恋して男には懲りている、来月は33歳に。
✿サヨリ 「からちゃん、今日は桃太郎の絵本ね」。
✿からちゃん 「うん、だけど桃のなかに子供がいたなんてホント?」 そのとき窓にママ。
「ねえ、サヨリさん。ママが来たからボクはいないって言ってね」 からちゃんはトイレへ行く 自分のことを「ボク」というが、toiletは女性用へ。サヨリさんもtoiletへ。アキは図書館のなかをぐるぐるまわる、からちゃんは見当たらないので、隣接している公園に向かうアキ。
今日はここまで。明日もよろしくネ。 もうじき未婚の母になったユイちゃんが登場します。
10月2日 「からちゃん②」を読んでくださった方の忍耐力に感謝しながら。松井多絵子