★★★ 「三ツ星のおでん屋」 ★★★
<佐佐木・高野・永田選>
☆☆☆「やってる?」と研究室に顔を出すおでん屋の客みたいな先輩
(瀬戸内市) 安良田梨湖
今日の朝日歌壇は「三ツ星のおでん屋」。三人の男性選者に選ばれた歌である。お酒がお好き、おでんもモチロンお好きな選者たちの「わかるなあ」という声が聞こえてくる。この夏は暑さに耐えられず冷房の部屋で過ごした人たちが、温かいものを食べたとか。コンビニの「おでん」がよく売れたとか。でも「おでん」は秋になると急においしくなりますね。
「やってる?」の初句が「おでん屋の客」みたいな先輩にふさわしい。先輩が顔を出した研究室は、大学か、あるいは企業の研究所か。研究室の先輩との人間関係で鬱になる人もいるらしいが、この「先輩」は自分より年配の人、経験も学術、技術なども自分より優れていて信頼できる人であろう。「おでん屋の客みたいな」で先輩の人間像が鮮やかになる。
おでんは「御田」と書くらしい。日本の煮込み料理のひとつで、大根、ちくわ、こんにゃく、ゆで卵などをだし汁で煮込む。おいしく作るにはだし汁と具の下ごしらえが大切だ。何十年か前は、大根を軟らかく煮るのにガスのとろ火で半日かかった。今はレンジで3分。早煮の昆布を使えば30分で「おでん」ができる。それぞれの具は特にオイシイわけでもないが、共に煮ている間に味が混ざり合い沁み込みおいしくなる。家族みたいな味。なにも外で食べなくてもよさそうだが、一杯の飲みながらアツアツのおでんを仲間と食べるとオイシイのだろう。作者の梨湖さんは、女性の名前かという気もしたが、きっと男性でしょうね。お酒の大好きな、、、。
10月21日 今夜はおでんにしょうかしら。レンジで大根を3分。 松井多絵子