えくぼ

ごいっしょにおしゃべりしましょう。

8月最後の朝日歌壇

2014-08-25 09:22:28 | 歌う

            ☀ 8月最後の朝日歌壇 ☀

 今日で8月の朝日歌壇は終わる。もし太平洋戦争がなかったら異なる入選歌が載ったであろう、と思いながら読む。少し涼しくなり、蝉の鳴きごえも元気がないような午前10時。

 佐佐木幸綱選

◆ 烈日のなか八月の貨車が来る過去の闇乗せ重き貨車来る (福島市) 美原凍子

 実景ではなく心象風景だろう。財政破たんの夕張から福島に移り住み、花桃を楽しんだのも束の間、3・11。凍子の被爆へのおそれは過去の闇を乗せた重い貨車となる。

 高野公彦選. 

◆ 乗り組みし人みな鬼籍に入りてなおエノラゲイの名消ゆることなし (岐阜県) 野原武

 エノラ・ゲイは太平洋戦争末期に運用されたアメリカ陸軍爆撃機、B29の機名らしい。この機により原爆が投下されたのだ。機上から投下した乗組員は他界したといえども、、。

 朝日歌壇選者の島田修二氏が亡くなられたのは2004年9月15日。原稿執筆中の急死だったらしい。その数日後の欧州旅行を楽しみにされていたとか。あれは10年前だった。

♠ 八月と共に去るもの思うとき蚊が鳴きながら我にまつわる  松井多絵子

 これは島田修二選に採られた私の歌である。朝日歌壇に掲載された時には、島田先生は他界の方。わたしの大切な方が8月と共に去ってしまったのであった。                

                                  8月25日  松井多絵子


シュウマイ歌会のこと

2014-08-24 09:42:55 | 歌う

           { シュウマイ歌会のこと }

 わたしの所属している歌誌 「未来」 の夏の大会が昨日と今日横浜の崎陽軒本店で行われている。崎陽軒が会場のためか 別名「シュウマイ歌会」と呼ぶ会員が多い。 

 昨23日1時から 歌集 『やがて秋茄子へと到る』 で注目されている堂園昌彦をゲストに迎えた大島史洋との対談から、夏の大会がはじまった。

❤ 秋茄子を両手に乗せて光らせてどうして死ぬんだろう僕たちは

 この堂園昌彦の歌がわたしは大好きだ。1983年生まれ、若い人たちのひねりすぎた歌に悩まされている私はこのうたの素直さがこころにしみる。高校2年の時担任が大松達知だったとは恵まれた短歌のスタートだったのだ。大島史洋も高校生のときから短歌をはじめている。二人の対談は父と息子のオシャベリのようで楽しかった。

 シンポジウムは 斉藤斉藤、大辻隆弘、中沢直人、司会の田中槐は金髪だが日本人。
斉藤斉藤はいまNHK短歌で活躍している。特殊な独特の表現を追求しているようだが、彼の解説を聴いても私はどうもわからない。斉藤斉藤という筆名など、短歌を便宜的に考えていないか、歌集が腹立たしいなどとなど大辻隆弘の発言が気持ちがいい。中沢直人も「斉藤斉藤の作品は最初から目だっていたので抵抗感があった。起爆力はいつまで続くか」と。斉藤斉藤よ、あなたはマー君になりかねませんよ。変化球など。短歌で体をケガした人なんていないようですから色々実験する人がいてもいいかも。でもそれを批判する人も必要だ。大辻、中沢氏の発言は私のメモによるもので多少、あるいはかなり異なっているかもしれない。懇親会でシュウマイがおいしくてビールを飲み過ぎて、松井多絵子の記憶はますますアテにならないかもしれないが次の短歌情報は確かですよ。  8月24日   松井多絵子 
 

        ※   ※   ※   ※

 8月の短歌情報③ 歌誌 「塔」 を発行する短歌結社「塔短歌会」は23日、来年1月に主宰が交代すると発表した。現主宰の永田和宏さん(67)から、「塔」選者の吉川宏志(45)が引き継ぐ。吉川宏志氏は現在「塔」短歌会の選者である。「塔」短歌会は歌人の高安国世が1954年に創設。この日京都市内で開かれた60周年記念大会で交代が発表された。

 

 


今年の短歌研究新人賞

2014-08-22 09:29:41 | 歌う

          ☀ 今年の短歌研究新人賞 ☀

 7年前まで8月22日は私にはコワイ日だった。今年も応募者560人にはコワイ日、でも最良の日の人もいる。寒さに強い北海道の ✿ 石井僚一さん おめでとうございます。

✿ 石井僚一さんは、平成元年北海道生まれ。北海学園大学在学中に受けた 田中綾
氏の講義「創作論」で短歌に出会う。本年4月より北海道大学短歌会に参加している。現在、札幌リハビリ専門学校作業療法学科の学生でもある。

       ✿ 受賞作   父親のような雨に打たれて   30首より5首抄出

 遺影にて初めて父と目があったような気がする ここで初めて

 コンビニの自動ドアにも気づかれず光として入りたくもなる

 傘を盗まれても性善説信ず父親のような雨に打たれて

 「父の死」が固有名詞であることの取り戻せない可笑しさで泣く

 ネクタイは締めるものではなく解くものだと言いし父の横顔

     ※  ※  ※

 新人賞選考委員の言葉より 「ひとこと」

♠ 加藤治郎  沈鬱な挽歌である。危篤の知らせを受けてはじめて父と意識されたのだ。

♠ 栗木京子  父親の死の心の揺れがややハードボイルドなタッチで詠まれている。

♠ 米川千嘉子 現代を生きる自分の苦しさが折々に噴出するような迫力がある。

♠ 穂村 弘   読んでいて迫力がある。モチーフが父の死だからということもあるが。

     ※  ※  ※

 短歌に関わるのは圧倒的に女性が多いのに、今年の新人賞応募者の 50.8%は男性である。20代以下が25%、30代が22%、だが50代・60代ともに約15%。短歌をはじめたのが還暦だったら60代でも新人である。老人、ことに老女たちは遠慮なく 短歌研究新人賞に応募したらどうか、無記名で年齢も選考委員にはわからない。私は若い歌人たちに
「今年は応募して新人賞を取るから受賞式に来てね」 などと触れ回りながら応募しなかった。来年は応募してみようかなあ。平成生まれよりも若々しい30首を作って。

                                       8月22日  松井多絵子

 


アスペルガーを病む

2014-08-21 09:33:46 | 歌う

           「アスペルガーを病む」

 ♠ 冗談と冗談が傷つけ合っている彼のタバコの煙のなかで  松井多絵子

 朝刊の本の広告 『ぼくはアスペルガー症候群』 を見ながら思う。あの人もあの人もアスペルガーを病んでいるのではないか。もしかして私も。まさか!でも気になる。

 「空気が読めない」「人の話を聞けない」「冗談が通じない」。大勢で話している時は気が付かないが、2人で話していてこの人は私の話を何も聞いていないのだ、と気つく。淋しい。

 ♠ 卵黄の崩れたような返事なら耳よゆめゆめ聞いてはならぬ

 ♠ わたくしの顔が怒っているような熱きピザパイを召し上がりませ君

 相手への不満をまともに言いにくい場合に、冗談めかして言ってみる。しかし通じない、
ますます2人の間の溝がひろがる。溝が深くなってしまう。❤ 「ぼくはアスペルガー症候群」の著者・権田真吾は40歳でアスペルガーと診断された。その著者が自身の幼少期から今までの楽しい話も、苦しい話も交えた実体験を書いたそうだ。説得力がありそうな本である。

 「ちょっと変わった人たち」と向き合う一冊だというこの本。「ちょっと困った人」はどこにでもいる。「あの人は病気なんだ。気の毒だなあ」とやさしく向き合えばいいのか。甘やかしたら病はますます、ではないか。コワイのはこの本を読んで 「わたしはアスペルガー症候群」の場合である。いま、つぎつぎに色々な病気が現れ、加齢とともに私たちは病気持ちになる、そして貯金は失ってゆく。色とりどりの薬の錠剤に囲まれながら。

    10日前に伊吹山で転んだ腰痛はほぼ治まったが、まだ毎日黄色の錠剤を。

                            8月21日   松井多絵子


短歌研究賞は内藤明氏に

2014-08-20 09:44:45 | 歌う

          ☀ 短歌研究賞は内藤明氏に ☀

 昨日、短歌研究社より今年の三賞の授賞式と祝宴のご案内をいただいた。

第54回 短歌研究賞  内藤明 「ブリッジ」 30首

第57回 短歌研究新人賞 石井遼一 「父親のような雨に打たれて」 30首

第32回 現代短歌評論賞 寺井竜哉  「うたと震災と私」

 授賞される三人の方、おめでとうございます。9月19日を楽しみにしております。

✿ 短歌研究賞の内藤明氏は、宮中「歌会始の儀」の選者としておなじみの歌人です。1954年生まれ。早稲田大学社会科学総合学院教授、国文学者、万葉学者。『壺中の空』、『斧と勾玉』などの歌集あり。昨年短歌研究年間作品から氏の作品を5首抄出します。

 使ひたることはなけれどそのむかし伝言板が駅舎にありぬ

 拾はれし言葉一つに執しゆく退路を断つといふにあらねど

 道のうへに蜂の巣置かれ二、三十散らばつてゐる蜂の亡骸

 花の下逝きたる人の面影のいくつ重なり水の上ゆく

 病む者を一人残して帰りゆく丘の道より街の灯の見ゆ

     ※  ※  ※

 内藤明先生   このたびは おめでとうございます。15年前私は歌人協会全国大会で「内藤明選者賞」をいただきました。私にとってはじめての大きな賞でした。この9月19日は
先生への感謝をこめて、祝宴で乾杯させていただきたく楽しみにしております。
                                         8月20日 松井多絵子