☀ 8月最後の朝日歌壇 ☀
今日で8月の朝日歌壇は終わる。もし太平洋戦争がなかったら異なる入選歌が載ったであろう、と思いながら読む。少し涼しくなり、蝉の鳴きごえも元気がないような午前10時。
佐佐木幸綱選
◆ 烈日のなか八月の貨車が来る過去の闇乗せ重き貨車来る (福島市) 美原凍子
実景ではなく心象風景だろう。財政破たんの夕張から福島に移り住み、花桃を楽しんだのも束の間、3・11。凍子の被爆へのおそれは過去の闇を乗せた重い貨車となる。
高野公彦選.
◆ 乗り組みし人みな鬼籍に入りてなおエノラゲイの名消ゆることなし (岐阜県) 野原武
エノラ・ゲイは太平洋戦争末期に運用されたアメリカ陸軍爆撃機、B29の機名らしい。この機により原爆が投下されたのだ。機上から投下した乗組員は他界したといえども、、。
朝日歌壇選者の島田修二氏が亡くなられたのは2004年9月15日。原稿執筆中の急死だったらしい。その数日後の欧州旅行を楽しみにされていたとか。あれは10年前だった。
♠ 八月と共に去るもの思うとき蚊が鳴きながら我にまつわる 松井多絵子
これは島田修二選に採られた私の歌である。朝日歌壇に掲載された時には、島田先生は他界の方。わたしの大切な方が8月と共に去ってしまったのであった。
8月25日 松井多絵子