えくぼ

ごいっしょにおしゃべりしましょう。

朝日歌壇を中退した私

2014-08-19 09:25:38 | 歌う

         ☀ 朝日歌壇を中退した私 ☀

 昨8月18日の 「朝日歌壇」 を見ながら少し淋しくなった。私が投稿していた頃に活躍していた方は2人しかいない。相原法則と松井恵。この2人はいまだにこの欄の常連だ。相原法則は児童図書文化賞受賞、平和のための絵本を作ったらしい。朝日歌壇賞も受賞。

 松井恵 は浜松市に住み女性には少ない社会詠。今年も特定秘密法関連の入選歌がときどき掲載されている。彼女は朝日歌壇の優等生だ。卒業しない優等生と、中退したボツ常連の私。しかし朝日歌壇に入選するのは、何百人に一人、だからボツが続くと投稿しなくなり、他の新聞、雑誌などに投稿先を変えてしまうのか。私もその一人だった。

 オランダのモーレンカンプふゆこ は朝日歌壇、俳壇でも咲き続けている。昨日は俳壇で。

☁ 雲海の怒涛まといて富士立てり  

 大串章選 評 「怒涛まといて」と言ったところに強さあり

 モーレンカンプふゆこ 1943年、東京生まれらしい。22歳で単身渡米しニューヨーク国連本部に勤務。1970年オランダに渡り結婚、2児の母となった。1984年朝日歌壇に投稿 翌年には朝日歌壇賞受賞、その後俳壇でも活躍、朝日俳壇賞も受賞。両手に賞のひと。

 ✿ 人生が旅と思えば重たやなスーツケースにあこがれ詰めて

 2014年4月7日の彼女の1首である。まことに人生は「重たやな」ですね。退職後も朝日歌壇に投稿し続け、手作りで、私家版歌集 『還れわがうた』 を出版した。美智子皇后も彼女のファンの一人とか。モーレンカンプふゆこ は私には眩しすぎる女性である。

      いま このパソコンにまで陽が射しています。☀☀☀眩しいこと。

                       8月19日   松井多絵子 


宗谷岬に立つ

2014-08-18 09:38:23 | 歌う

             { 宗谷岬に立つ }       

 岬、その突端から眼前に広がる海原は格別である。ある調査で人気NO1は宗谷岬。ここより先へは行けない自分を感じた、2年前の6月、はじめて宗谷岬に立った時に。日本最北端の地を標す記念碑、東にはオホーツク海、西は日本海、宗谷海峡をはさんで4キロ先にはサハリンがある。わたしの憧れのサハリンを想いながら、二年前の六首を。

             宗谷岬に立つ     松井多絵子

宗谷岬に立ち尽くせども現れぬこの海原の彼方のサハリン

聞かずともよきことを聞く 「昨日はここからサハリンはっきり見えた」

花の名のようにも聞こえるサハリンは、俯く枝に眞白き花を

星の名のようにも聞こえるサハリンは冬の星座のなかの光星

美少女の名にも思えるサハリンのひとみは時おり遙か彼方へ

いま我は間宮林蔵に会いそしてカメラを向ける林蔵の像に

 日本の数多の岬のなかで宗谷岬が特に人気があるのは、この海が外国につながる、ここで陸が終わるのではない、彼方に 「サハリン」 があるという安心感からだろうか。

              ※  ※  ※  ※  ※  ※ 

 ☀ 8月の短歌情報②  今野寿美新刊歌集  『さくらのゆゑ』 

  ♠ ペンギンも逃げたいフラミンゴも逃げたい十九世紀末まで逃げよ

 今野寿美は1952年生まれ、歌誌 「まひるの」 「かりん」 を経て1992年、夫の三枝昂之と共に 歌誌 「りとむ」 を創刊。古典的な語を用いて、深い味わいのある美しい作品を詠んでいる実力派。来年は歌会始の選者の1人になる。   

        ペンギンに会いに行きたい東京を逃れて旭山獣園へ 

                    8月18日  松井多絵子  

       

 

 

 

 

 

 

 


淋しい人はボケる

2014-08-17 09:05:27 | 歌う

           { 淋しい人はボケる }

♥ 淋しいとウサギは死んでしまうとかペットショップにウサギはいない  松井多絵子

 8月になってから本の広告に、「靖国神社」「日本の軍歌」など戦争に関わるものが多い。そのなかに ✿ 「淋しい人はボケる」 朝刊片隅のスリムな広告だが、気になる。著者・高島明彦は国立長寿医療研究センター理学博士。中年を過ぎると知っているはずの言葉、人名が出てこない人は ボケ予備軍ですよ と警告している。 私もその一人ではないか。

 「孤独だな」と思ったら要注意! 孤独にしたマウスの脳には萎縮がみられるが、実際に独身者がボケるリスクは既婚者の2倍も高い。このような心理・習慣をいかに避けられるかが、ボケる脳とボケない脳の境目となる。老化しない脳を保つ秘訣を伝授、してくれる本だそうだが。

 ウサギは淋しいと死んでしまうとか、人間だって孤独が死を招くのではないか。Y子の死を思う。毎月1度健康診断を欠かさず、血圧が少し高い程度で健康そのものだった彼女が76歳で亡くなった。メリーウイドウ10年。しかし亡くなる数年前には彼女はだれとも交流がなかったらしい。

 地方に育ったY子は東京の人と結婚、夫は中堅会社の役員、2人の息子が国立大の学生になった頃から、彼女の人脈作りが始まった。歌会に参加して、作品より作者の素性を知りたがる。旅行や園芸にはまつたく興味がない。仲間の家庭のことばかり話題にする。息子たちの嫁に上流階級の娘を得る為の交際、仲間たちが彼女から離れ、息子たちは相手を見つけ、ご主人は他界した。実益のない趣味は興味のない彼女は、働き蜂、遊ぶこと、楽しむこができなかったのだ。健康管理の行き届いていた彼女の死に私たちは驚いた。子供たちからも疎外された彼女の死因は定かではない。おそらく孤独だったであろう。淋しいと人間だって死んでしまうのではないか。長く生きれば自分の相手は自分がするしかない。自分をいかに楽しませ、退屈させないか、高齢者の課題であろう。

    高島明彦先生  わたしが今一番コワイのはボケることです。 

                     8月17日  松井多絵子

  


大文字山焼き

2014-08-16 09:29:43 | 歌う

            { 大文字山焼き }

 8月16日 午後8時の大文字からスタートし、妙法、船形、鳥居形で送り火は終わり、この夏も終わる。大文字山は銀閣寺から1時間ほどで頂上へ登れる。歌人で大学教授の永田和宏は、河野裕子とデートでもこの山へ登っている。4年前の8月12日、妻の河野裕子は64歳で逝ってしまった。戦後生まれを代表する女流歌人の早すぎる他界。

♥ たつたこれだけの家族であるよ子を二人あひだにおきて山道のぼる   河野裕子

 家族4人で登った。永田が先頭に立ちまだ子供だった長男・淳と長女・紅をはさんで河野が一番後ろを歩く。子供を守りながら。いっしょに遊びにゆく時期を経て巣立つのを見守る。盛んに山登りした頃を 「家族の青春期だったなあ」 と永田は懐かしくおもう。

♥ 遺すのは子らと歌のみ蜩のこゑひとすぢに夕日に鳴けり   河野裕子

 2000年、河野は54歳で乳癌の手術をした。8年後に再発。病と闘い、歌を詠み続けた。そして蜩の鳴く夏、自宅で家族がみとった。次の歌は亡くなる前日の最後の一首。

♥ 手をのべてあなたとあなたに触れたきに息が足りないこの世の息が  河野裕子

 息子の淳も娘の紅も歌人となり、それぞれ家族をもつ。次の一首は永田の近詠である。

♥ かなしいが親子ではなく夫婦だとひとり飯食ふときに思ふも  永田和宏

 大文字焼きは今夜終わり夏が終わる。河野裕子の好きなコスモスの花の秋がまた来る。

※以上は8月12日河野裕子の命日に朝日に掲載された 「京ものがたり」から引用しました

     わたしには河野裕子さんはまだ生きていて逞しくやさしい方です。

                           8月16日  松井多絵子


グアムという島

2014-08-15 09:27:06 | 歌う

 

            { グアムという島 }

 1945年8月15日正午、NHKラジオは天皇の肉声により、全国民に、日本が戦争に負けたことを知らせた。これにより太平洋戦争が終わり、8月15日は終戦記念日となった。

         ☁ グアムという島        松井多絵子

左右とも指紋をとられいて気づくこのグアム島は米国なのだ

なんとなくオバマに似ている何ゆえにグアムに来たかと問う審査官

台風のときには海になるらしい道はハマナスの花を咲かせて

ラムラム山に背をむけ歩く今ここに津波がくれば駆け上る山

鉄砲の銃口のぞけばコカ・コ―ラ空き缶のあるアガット砦

終戦を知らずに日本兵ひとり隠れし穴へのツアーは百ドル

そこかしこ戦の傷跡ありながらグアムとう島は厚き化粧を

リザールビーチに拾いし貝殻みな貝に去られてしまいし儚い器

                   松井多絵子歌集 『厚着の王さま』 より

              ※  ※  ※  ※  ※  ※  ※  ※  ※  ※

 8月の俳句情報①

✿ 鶴岡加苗句集 『青鳥』   丹念に日常を詠んだ第一句集。

 ♠ 眠る子の隣の部屋を灯し秋   (角川学芸出版・本体2300円)

✿ 奥坂まや 『飯島晴子の百句』  言葉と格闘し続け、79歳で自死の俳人の代表百句。

 ♠ 葛の花来るなと言つたではないか  (ふらんす堂・本体1500円)   

                ※  ※  ※     8月15日    ※  ※  ※