えくぼ

ごいっしょにおしゃべりしましょう。

☀ 光の溺死 ☀

2014-10-19 09:11:04 | 歌う

               ☀ 光の溺死 ☀

 『行け広野へと』 は服部真里子の第一歌集である。19歳から27歳までの作品289首が収められている。「光」の歌が頻出していて眩しい。若さに圧倒される。

 ♠ 三月の真っただ中を落ちてゆく雲雀、あるいは光の溺死

     この歌から始まり次の歌で歌集は終わる。

 ♠ エレベーターあなたがあなたであることの光を帯びて吸い上げられる

     彼女の歌にわたしは溺死するか、あるいは吸い上げられるか。

 ♠ 日のひかり底まで差して傷ついた鱗ほどよく光をはじく

     前の2首に比べて低音である、この歌ならなじめる。次の歌も好きになれる。

 ♠ どの魚もまぶたをもたず水中に無数の丸い窓ひらいている

     魚にはまぶたがないことを私は初めて知る。「丸い窓」とは素晴らしい比喩だ。

 ♠ どこをほっつき歩いているのかあのばかは虹のかたちのあいつの歯形

     パンチが利いている。大胆である。ユーモアがある。乾いた歌を詠める女性だ。

 まだ20代だが服部真里子は短歌の操縦を心得ている。大胆にして細心、光と陰に焦点を当てる。感情に溺れない。今後が楽しみだ。いやオソロシイ新人である。

               ※    ※    ※    ※    ※ 

 服部真里子  1987年 横浜生まれ  2006年  早稲田短歌会入会

           2012年より 未来短歌会所属

           第55回短歌研究新人賞次席、 第24回歌壇賞受賞。

           2014年 歌集『行け広野へと』 本阿弥書店発行(2000円税別)

  

      真理子さま  第一歌集おめでとうございます。 10月19日 松井多絵子


医者の嘘

2014-10-18 09:11:18 | 歌う

             ・・・ 医者の嘘 ・・・

❤ ロボットのように問診する医師よアナタに会うため1時間待った  松井多絵子

    たちまち重版!『医者の嘘』~誰も明かさなかった命にかかわる驚愕の真実~

 こんな本の広告を見ても私は驚かない。老女が3人寄れば医者の悪口である。医療とは「治さない方が儲かる商売」らしい。日本人の1年間の平均通院回数は13、8回。これは世界のどの国よりも圧倒的の多い。日本人がいかに医者を信頼しているかという証ではないか。私が親しくしていた女2人も毎月1度は開業医で健康診断していた。鼻かぜ程度でもおなじみの医者に診てもらう。医者に絶えず贈り物をしていた。「私の命綱を握っているのだから」と医者に縋っていた。その彼女たちが70代であの世へ行ってしまったのだ。1人は癌で、もう1人は腦軟化症とか。しかも病状が進むまでお抱えの医者が気が付かなかったとは。

 『医者のうそ』の第1章は ◆ 「癌治療の嘘」 抗がん剤には発癌性があるとはオソロシイ。抗がん剤では再発、移転を防げない。免疫療法の99%は効果なし。発売から10年後に 「効果なし」 と判明した 「抗がんサプリメント」 の嘘などなど。

 わたしは以前、カナダへのツアーを申し込んだ後に風邪をひき咳が止まらなかった。1か月後の旅行までに治さなければと隣町のクリニックに駆け込んだ。まずレントゲン。その他いろいろな検診、渡された薬をの飲むほど咳がひどくなる。再三診察を受けそのたびに薬、さらに体調が悪くなる。わたしは薬を飲むのを止めてみた。すると次第に咳が止まり体調もよくなってきた。私の歌友でむかし看護婦さんのE子のアドバイスのおかげである。彼女は薬の副作用に注意せよ、医院の過剰な検査は断れと言う。いくつも持病を持つE子は冷静に自分の体と付き合っている。医者もE子にはいい加減なことはしないのか、86歳になり、夫に先立たれても彼女は特に病むこともなく過ごしている。

  全国のお医者サマ   患者たちも賢くなってますよ。 10月18日 松井多絵子

 

 


ぶらぶら歩く秋月祐一

2014-10-17 09:26:14 | 歌う

            ♠ ぶらぶら歩く秋月祐一 ♠

 今週の朝日夕刊 「あるきだす言葉たち」 は秋月祐一。未来短歌会所属だが私は会ったことがない。加藤治郎選歌欄に所属する新興勢力の1人である。1969年生まれ、すでに歌集『迷子のカピバラ』を刊行している。 「あるきだす・・・」は「走りだす言葉たち」が多く、作者を見失いがちだ。でも秋月祐一は、ぶらぶら歩いている。時々立ち止まりながら。

          透明な生き物図鑑 十首より四首抄出

  ◉ 透明な生き物図鑑をながめては何度 「負けた」 とおもつたことか

 この歌の前の歌の中の駱駝をおもわせる。骨格のみの駱駝。砂漠で貨車のように動くラクダの逞しさに作者は敬服したのか。何に 「負けた」 かは読者の想像に任せている。

  ◉ 「イグアナがオレンジ色になる季節あなたはいかがお過ごしですか」

 あるいはこの一首は「未来」の新星・服部真里子へのご挨拶か。真里子はイグアナを描くのを楽しんでいる。彼女の白黒の画のイグアナがオレンジ色になるのか。紅葉の頃は。

  ◉ 青い帽子を年がら年中かぶつてる 実はいくつも持つてゐるんだ

  ◉ のこぎりを弾いてみたいと夢みつつその日は来ないやうな気もして

 秋月祐一は、ぶらぶら歩く。ときどき立ち止まりタバコを吸いながら辺りを見回す、「青」は未熟を楽しむ作者の「ゆとり」か。弦楽器のように鋸を弾いてみたい彼の遊びの楽しさ。

           ※     ※     ※     ※     ※

 文芸情報10月17日   第27回小説すばる新人賞 (集英社主催)

  ◆ 中村理聖 (28歳・会社員)   「砂漠の青がとける夜」  副賞200万円

     贈賞式   11月14日   東京・内幸町の帝国ホテル。

  男子か女子かわからない中村理聖サマ 「すばる新人賞」おめでとうございます。

                                10月17日  松井多絵子

 

        


菊池寛賞にタモリさんら

2014-10-16 09:32:55 | 歌う

         ✿ 菊池寛賞にタモリさんら ✿

◆ 白よりも黄色の菊が年配の女に見えて昼が熟れゆく   松井多絵子

 日本文学振興会主催の 第62回菊池寛賞が発表された。受賞者は次の方々である。

♠ タモリ   テレビ番組の顔として<日本の笑い>を革新。

♠ 白石加代子  朗読劇<百物語>を99話まで続けた。

♠ 毎日新聞取材斑   <老いてさまよう>についての報道。

♠ NHKスペシャル  <認知症の身元不明者>についての報道。

♠ 若田光一  日本初の国際宇宙ステーション船長として活躍。

♠ 阿川佐和子  「週間文春」の連載対談が1千回を達成。 

          受賞式は12月上旬、都内で、副賞は100万円。

※ 菊池寛賞は日本文学振興会が主催する、文芸、映画などさまざまな分野の業積をあげ 
   た個人や団体を表彰する賞である。     


 菊池寛(1888~1948) 小説家、劇作家、ジャーナリスト。短編小説の 「父帰る」 は多くの人を感動させた。・・・妻子を捨て愛人と出奔した父が零落して帰ってくる。母と弟妹は喜んで迎えようとするが長男だけは父を許さない。家族の複雑な心情が描かれている。

 受賞の1人の阿川佐和子サマ  『聞く力』のおかげですね。「聞く」は「菊」
                                 あなたは黄色い菊かしら。

                            10月16日  松井多絵子 


『海辺のカフカ』を

2014-10-15 09:28:22 | 歌う

              『海辺のカフカ』を 

 ことしのノーベル文学賞はフランスの作家P・モディアノ氏に決まった。この数年この賞の有力候補と騒がれている村上春樹について、昨日夕刊朝日で 辛島デイヴィット(早大講師)と鴻巣友季子(翻訳家)が語り合っていた。

 ♠ 辛島  「選考委員の多くがフランス語を読めるのでモディアノ氏のような文体で勝負する作家には有利。文体の特異性まで翻訳するのは難しいので。

 ♠ 鴻巣  「ただ、賛否は分かれた。最新長編 『色彩を持たない。。。』は思索的だとおおむね好評のようです。少しノーベル賞方向に舵を切ったかも?(笑)

 村上春樹は1949年1月、京都生まれ。いま65歳か、もっと長生きしなければ。書き続けなければ。次は長編『海辺のカフカ』を読み終えた時に詠んだ私の六首。

            ❤ 『海辺のカフカ』を     松井多絵子

    夜もふけて海辺のカフカを見るための一人の旅を、読書の旅を

    歩くほどカフカの海辺の霧ふかく波のくずれる音のみの浜

    五十二の女と十五の少年が・・・そういうこともあるのだ男女

    少年をひとり浜辺にすわらせて夜のわだつみは母となるべし

    ラ・メールは海なり母なりフランスの、かなたのことは計り知れない

    はるかより朝のひかりが走りきて 『海辺のカフカ』の下巻は終章

                               歌集 『厚着の王さま』 より

 

          文芸にかかわる人々はつねに迷路を、暗い迷路を。

                             10月15日  松井多絵子