植物園「 槐松亭 」

バラと蘭とその他もろもろの植物に囲まれ、野鳥と甲斐犬すみれと暮らす

友達と印は古い方がいい

2022年05月17日 | 篆刻
ワタシはいつの頃からか、あまり友人を作りたくない、と思うようになりました。特に書芸・園芸・篆刻・メダカなど趣味に没頭するようになると、誰にも邪魔されたくない、際限ない友人・人間関係の維持は、生活を乱すとも考えています。

若い人は、LINEの登録件数が、人付き合いの良さ交友関係の広さを測るバロメーターとする風潮があるようですが。なるべく増やさないようにしております。結果として、今お付き合いのある友人と呼べるような人たちとは最低10年、長いものでは50年来の友であります。女房と畳は新しい方がいい、と言いますが、友達は古いのに限ります。

先日、大分に住む幼馴染(小・中の同級生)と再会して、篆刻印を作ることを約束したのです。長い空白を経て十数年前に再会し、以来ずっと連絡を取り合う仲間であります。別に印を彫れるのを自慢するつもりではありません。以前グループLINEで、その同級生たちの希望者数人に、篆刻印を作ってあげたのです。今回会食すると、他の人が、実は私も欲しいと言い出しました。九州の田舎に暮らす友達は、いたって奥ゆかしく慎ましやかなので、頼みにくかったのだそうです。

ここ半年ほど摸刻主体に彫っていると、オリジナル印もやりたくなるのです。それは、昔の大家が彫ったお手本をただ真似るという刀法の上達だけでなく、「字法」(昔の時代によって異なる篆書体を選び、その文字を集める)、そして「章法」(方寸の印面に、いかに字を配置し、空間を生かして美しい字列を作るか)を練習することになるからです。

摸刻だけでは、そうした篆刻に必要なノウハウがおろそかになります。また、ただ練習で彫っているだけでは、いい加減なところで妥協し、中途半端なままに次の印に移っていく、という好ましくない傾向も出ておりました。彫る方のことを思い浮かべながら、妥協しないで勝負する、という気概が必要なのです。

いくらでも彫ります。印材は山ほどあります。そこで以前から言われるのが、彫ってあげると「お金は幾ら?」と聞かれるのです。金はとりません、修行の身で、まだ未熟ですから、とお答えしますと、では石代くらいはお支払いしますと仰る。

これが、困るのです。ワタシは印材屋さんから仕入れているわけでもホームセンターで買っているわけでもありません。ネット、ヤフオクで気に入ったもの良さそうな石を1個~100個位で落札して数千個保有しているのです。仕入れ値・「定価」や相場など無いに等しいのです。ましてや、その印材も一個数十円の安物から数万円までの高級印材があり、時代物の「骨董的価値」があるものまで様々であります。
 例えば数日前に届いた落札品がこれ。9千円ほどでワタシにとってはなかなかの高額落札でありました。田黄石のような数万円するような1点物ではありませんが、「時代物」と言える古い印材であります。
 
この中で最も高価なものは、手前の紐つき自然形の石です。牛角凍と呼ばれ、半透明な灰色を基調とし、結着した黄土色の石層に飾り彫りを入れるという高級印材と見ました。印材に薄意や彫刻を施して側款を入れるのは中国では「董滄門 」さんや「秋堂」さんが有名で、その本物は軽く数十万円致します。
 この印はそんな一級品ではありませんが、少なくとも1,2万円はするようなお値打ちものであります。また、右の対になる獅子紐の印材は、硬い非常に精緻な石質と見え、古材・良材に共通する温潤な趣があります。もしかすると印材の三宝と言われる田黄石・鶏血石・芙蓉石に準ずる「黄高山石」かもしれません。紐自体も手彫りで美しく、もし絹箱入りであれば一対1万円以上で販売されているものでしょう。左の二個は印面を削った形跡があり、市場に出る時所有者を特定されない様にしたのでしょう。これは普及品で高いものではありませんが、石全体にある「アタリ」や「すれ」などの傷を見るまでも無く、数十年以上経過している古い寿山石であります。

 ワタシが分かるのはおおよその石の種類と、見た目や紐や側款の細工の良し悪しで、粗悪品・普及品・良材・希少品の区別です。彫りやすいもの=高価とはなりません。

 ですから、用いる印材を選ぶときは、摸刻(練習)か、好意(押し付け)で差し上げるのか、注文を受けてお代を頂くのかで決めます。最近では。宝の持ち腐れはバカみたいなので、出来るだけ良材を優先するようにしております。

話を戻して、古くからの友人4人から、彫ってくれと言われてほぼ出来上がりました。印材は、かつてどれも一般的に売られていたような普及品でありますが、かなり古いものであります。篆刻家さんや書道家さんが数十年も前に入手して、長らく眠っていたものでしょう。
久しぶりにオリジナルの姓名印を制作しました。これに仕上げの「側款」を入れ、全部の汚れを落とし磨きます。そしてそれぞれに合った布張りの印箱を探します。当然印箱もほとんどがオークションで手に入れた中古品であります。今買えば300円から高いもの(革張り)で2千円位ですが、これもサービスします。人にものを差し上げるのにむき出しというのは失礼にあたりますからね。

古い印材を再利用し、古い友のために印を彫り、古い箱に入れます。そしてワタシの(勝手につけた)篆刻の雅号は「篩(ふるい)石」で、側款に刻みます。
友人も印材も女房も「古い」ほうがいいのであります。

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