植物園「 槐松亭 」

バラと蘭とその他もろもろの植物に囲まれ、野鳥と甲斐犬すみれと暮らす

物を書くこと ココロザシは人生のエッセンス

2020年09月04日 | 書道
高校生の頃、母親がワタシに向かって真顔で言いました。
「物書きだけにはならないで」と。その頃までには、小学校の頃から家庭新聞・学校新聞と新聞作りに興味を持っていましたので、新聞部に在籍していました。絵が好きだったので、中高生では、美術部にも在籍していました。更に親の影響で詩を書いたり、小説まがいの文章を書いたりしていました。

 そんなワタシに、才能の無さか根性の無さを見ぬいたのか、「新聞記者は夜討ち朝駆けのやくざな仕事で身が持たない。小説家やら物書きでは食べていくのも大変だから」と諭しました。もう一つ「平凡に生きることは簡単そうに見えて大変なことよ。それで十分価値があるのよ」とも。大学の勉強やサラリーマン生活に何故とはなく物取りなさを感じていたワタシですが、素直に母の教えを守り、望まない大学の経済学部に入り、望まない金融機関に就職して半生をおくることになりました。

 あの時、反発していたらと幾度となく考えました。いまだに、物を書くという仕事に就いていたらどうであったろうと夢想したりします。しかし後悔してもせんないことであります。その時その時に自分で良かれと歩いた道程であります。

 さて、現役生活でパソコンが浸透し始めたのはワタシが30歳になったころでしょうか。それまでは、ほとんど手書きであったものが、ワープロが取って代わることになりました。当初ワープロソフトは富士通のオアシス、NECの一太郎などが主流でありましたが、段々とMicrosoftのWORDが席巻してきました。

 営業部というところに在籍していた時を思い出します。手が遅く、ワープロに大変な時間をかける部下がいました。わずかな文章を残業して書いて添付書類を作っていたのです。こういうのは、ずるだ、と思いましたね。仕事が出来て、ワープロなんか数分で終わらせ定時で帰る社員は残業ゼロ、同じ仕事を残業すれば残業手当が出る、というのが不合理だと感じました。彼は、結局課長代理という最も下の役職で早期退職しました。

 隣の部署の課長は、ワタシと同期でしたが、レポート用紙に原稿を書いて、部下にワープロ打ちをさせると言っていました。これもどうなんだ?と思いましたな。要領がいい彼は、とんとん拍子に出世し役員になりました。

 ワタシはといえば、器用貧乏で何でもササっとやっつけるのをいいことに、いろいろ押し付けられました。ほんの少し字が上手で書き慣れていたので部全体会議の式次第とかスローガンとか香典の名前書きなどを頼まれました。役員交代挨拶状の宛名書きもやりました。ほとんど庶務職のオジサン。念のために言いますが、ワタシの字は独学、書き慣れているだけで本当に大してうまくないのです。
 かつての本部長が、常務になっていて、どこかで葬式があった時、葬儀委員長をすることになったそうです。弔辞を読むのに式辞用御巻紙を用意することになって、営業部にこういうのを書くとうまい奴がいると名指しされたのがワタシ、秘書が紙と筆ペン持って頼みに来ました。その常務は、字の巧拙はともかく、ワタシが普段ヒマで、この手の作業を手早く失敗せずにやることをご存じだったようです。その時はお礼にゴルフボールを頂戴しました(笑)

 その頃から、仕事でペンを使うことがどんどん減りました。稟議書も書類もすべてワープロ書きに代わり、ペンを使うのは電話の伝言と会議のノートくらいのものです。

 そうこうするうちに、50歳くらいになって自分の字が下手になっていることに気づきました。漢字も忘れて平仮名が増えました。人間、使わないと衰えるのですよ。頭でも手先でも何でも。リタイアしたら書道をやりたい、そう思いだしたのはその頃からでしょうか。ちゃんと基礎から勉強して、正しく美しい字を書きたいと思いました。

 予定通り60歳で定年退職し、書道教室に通い始めました。4年間ほぼ毎日習字をいたしております。そして、このブログです。この程度の文章力ですから、中高生の頃の、物書きになりたいという夢は叶える由も無かったのです。しかし60歳も半ばになって曲がりなりにも文書を毎日書くという習慣・タスクが出来ました。日々これ好日であります。

 やらなかったことを悔いるより、ならばやってみようと思うことが生きていくうえでも有用、いつからでも遅くないのだと感じます。

志を持つことは決して無駄でも無意味でもない、と思うこの頃であります。


 

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