植物園「 槐松亭 」

バラと蘭とその他もろもろの植物に囲まれ、野鳥と甲斐犬すみれと暮らす

栄寶齊さんいらっしゃーい

2021年04月30日 | 書道
 書道具研究に余念のないワタシ、ヤフオクで興味深いものちょっと珍しいものを見つけては、コツコツ落札しております。一件数千円のものでも、数を重ねれば相当な金額になりますが、これも、ワタシの探求心を満たし、文化研究のためさらには経済を回すためであります。

 骨董品集めとなってはならない、これが一応戒めとしております。ただ蒐集して眺めて喜ぶのはいけません、さりとて一種の投資として将来の値上がり、あるいは安物の中からお宝さがしを目的ともいたしません。一たび骨董趣味の罠にはまってしまえば、その先には、贋作模造品粗悪品の山が見えます。貯えを失い家族からの非難を浴びて収拾がつかなくなるのが目に見えているのです。おそらく、処分することになれば二束三文は必定であります。

 書道具・篆刻用品限定、しかも実用品で販売時価格より相当安いもの、というのが自主ルール(但し例外規定あり)なのです。今のところ、筆や書道紙などは過剰にあります。篆刻印は、消耗品ですが、一部の彫があるものの中には芸術品ともいえるような、篆刻家による精緻で巧みな印も混じっており、大事に観賞しつつ、自分の篆刻の技術や知識向上に取り入れるのです。なので、田黄石や鶏血石といった宝石並みの印材蒐集は原則控えております。特に時代物田黄石は、実用品どころか骨董価値の高い美術品となり、20万円は下らないのです。最近でもチェックした数点は軒並み25万円以上になりました。

  そんなところで、趣味の収集品として集めているのが唯一「水滴」であります。手のひらサイズの水差しで、書道では墨を薄める、固形墨を磨る際に用います。これは、「書道具をまとめて」という出品物に紛れて入っております。もともと書道ではわき役、実用品で小さなものなのでさほど凝った高価なものはないのです。ヤフオクでも一個500円位から落とせますし。まとめて数点で出てくるのも多いのです。

 ところが、先日どうしても欲しいな、というものに出くわしました。このブログで触れたことがある「栄寶齊」であります。1672年創業の中国書道具の老舗中の老舗、で多くの文人たちが訪れたと聞きます。そのブランドはよく知られていて、今は一流の書人の作や書画骨董販売の他、木版印刷も有名であります。

 墨の販売も勿論しておりますが、中国の墨は贋作粗悪品が多く本物が少ないようです。ぜひ欲しいと思っていた「北京栄寶齊印泥」は滅多にヤフオクにも出品されず2,30万円するそうで手が出ません。書道具研究・愛好家として臍を嚙む日々でありました。

 今回見つけたのは底面に「栄寶齊」の銘刻がある水滴でした。出品説明には「黄銅毛彫り水滴」とだけ記され、紹介写真をよく見ないと気づかないのです。本物かどうかは全く分かりませんし、古いものならばネットで類似品も発見できません。もし年数を経た栄寶齊ならば、非常に貴重で良質なものに相違ありません。写真で見ても黄銅の古色が美しく、繊細な線彫が見て取れました。

 もうこれは行くしかない、と心に決めてかなりの金額で入札しました。水滴は、印材ほど蒐集家が注目・集中しないジャンルで、栄寶齊では検索ヒットしない品物だったことも幸いしたのかで6人ほどの入札者で済みました。落札価格は16センエン!!!。ワタシとしては掟破りで高かったのですが、これは入手できたのは幸運だと思いました。

 そして昨日到着いたしました。

いやー、いいですね。いい仕事をしています。細かな線で魚が6匹跳ねております。一か所ちょっとへこんでいますが、柔らかなツヤがあり造形もすっくりとした佇まいであります。これは、ワタシのコレクションとしては一級品となりましょう。実際の価値などはどうでもいいことです。何十年かあるいは100年以上前に中国の書家や文人が愛玩した文物と思えば、書道をやるものにとっては、非常に好ましいものであります。

 さらにもう一つ「メルカリ」で見つけた印泥が「一得閣」の印泥でありました。1865年に、史上初の墨汁を発明して売り出したのが一得閣墨汁でした。これが 大好評で1960年「北京製墨廠」という名で国営化されました。その後一得閣に名前を戻していまも営業しているそうです。墨汁とともに好評だったのが「印泥」、こちらは麗華斎 さんという人が作った「八寶印泥」をもとにしているのですが、最近ではその名を模した印泥が盛んに作られ品質は非常に落ちたそうです。
 前述の栄寶齊さんの印泥は入手不能としても、質が落ちる前の時代物、一得閣印泥も欲しいと思っていたのです。朱紅印泥 北京一得閣製と表記されたものが玄武彫刻の紐がついた印材と両方こみで2,700円でした。(笑)

 これは、印泥の容器の蓋が割れて接着されていました。しかしその龍の絵柄はくっきりとして、手書きされております。大量に生産される転写した絵付けの安物とは異なるのです。 説明書は経年数が長いことを物語り、薄く一部は剥落しておりました。箱は非常に細かで複雑な紋様が織り込まれた絹張と思えます。印泥そのものは長らく通常の押印に使われていたらしく、小さな丸印を押し付けた跡が残っていました。これが、特別な印泥であることを示すのは、もう一つ、匂いであります。紹介文にもありましたが成分に「麝香(人工)」が含まれているのです。それで蓋を開けると得も言われぬ状品な香りがふっと鼻をくすぐるのです。

 これも現在価格や価値は存じませんが、販売当時は良質で高価なものであったろうと思います。ともあれ念願の「栄寶齊」さんと「北京一得閣製」朱紅印泥が入手出来て満悦至極なのであります。

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