植物園「 槐松亭 」

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石印材を鑑定する 中編

2023年12月18日 | 篆刻
昨日掲載した写真の石の鑑定、というか値踏みをいたしたいと思うのです。

石印材に限らず、骨とう品や貴重品の鑑定の最も重要な要素・ポイントは本物かどうか、であります。石印材に限って言えば、側款や友箱に「作者名(印を彫った人の名前)または石印材に美しい「紐・薄意」を施した名人の名前がある場合の評価・鑑定と、未刻印であっても石そのものの美しさや希少価値で鑑定する、という要素が加わります。紐や薄意の名人作家と言えば「秋堂」さんが有名で、立派な台付き、木箱入りの田黄石にはよくこの「秋堂」という文字が刻まれています。

そこで、そうした細工や署名が偽装される贋作が大量に生み出されているのです。明清の時代の中国の篆刻家ならば、呉熙載・趙之謙・文彭、呉昌碩さんなどが思い浮かびます。もっと遡れば米芾(べい ふつ)さん近年では斉白石なども超有名であります。そうした人の真作ならばとんでもない価値があるのですから、それの偽物を作ろうという人が無数にいるのが中国であります。
また、石の新旧は石そのものが数億年にわたって組成されたものなので、何百年程度では全く石そのものに変化はありません。しかし、その採掘・採取された時代が古いほどまたそれが希少であるほど「銘品・美品」で高価値になるのです。従って、石が世に出た時代によってその評価は大きく変わっていくのです。

そこで、偽物をどう見破るか?が決め手になるのですが、はっきり言って経験と総合的な判断としか言えません。例えば友箱、これが印に合わせて当初から作られているか、それに貼られた布地がいつの時代のもので、絹地か否か、どんな紋様の織かなどを観ます。また、経年相当の汚れや色褪せなども検討材料になりますね。時代を感じる木箱・塗のある箱などに入っているのは本物の可能性が高いです。但し、「寿山石章」とか「西冷印社」とかなんとか表書きのある黒などの塗の木箱は「お土産ものレベル」と思った方がいいですね。

専用の箱に入っていない場合には、側款の彫った文字が、有効な判断材料です。きちんと一刀できりりとした線が引かれて、その作家のくせや書き様に合致するかなどを調べます。白や朱・薄い緑色の塗料が文字に埋められていたら近世のものです。
紐などもよく見ると、パートのおばさんが細かい電気ドリルで流れ作業で作ったものと、丁寧に手造りしたものでは全く価値が違いますし、子細に観察すればそのくらいのことは分かります。

まず中島藍川先生の側款・説明文がある印
これは非常に丁寧に作られた「印材の紐(馬)」の形まで想定して作られた専用の箱であります。ビロードが内側に貼られていて馬の向きまで計算して作られています。4,50年ほど前の商品ではないかと思いますね。
石自体は印材4宝と言われるような種類ではなく、切り出した山坑の「寿山石系の微凍石」ですが、なにより馬の彫刻が美しい造形であります。こうした一流品の印材は、恐らく販売価格は、物価が安かった当時でも5千円前後はしただろうと思います。入手は、石の生産・掘削している中国の現地ではなく、中国都市部か、輸入されて日本の書道・篆刻用品専門の店だったかもしれません。

中島藍川先生は、写真にあるごとく1958年日展に初入選、特選を2度受賞後審査員などを経て、 篆刻連盟の会長まで務め、2018年2月に物故されています。ここ半年ほど先生の公募展への受賞作の「元石」がヤフオクによく出品されています。その落札額はおよそ5万円~10万円というところでしょうか。3回忌を過ぎて、恐らく遺族の方や関係者がまとめて処分している、と想定すれば偽物は少なかろうと思います。中国人が関与してはいないでしょうし(笑)。
関係した過去の記事のひとつがコレであります。

今回の落札品は、書道をやっている方が藍川先生に彫って貰った「雅印」で、それがまた人手に渡ったあとにヤフオクに出たのであろうと思います。これは本物だろうと思います。落札額は4,500円でありました。石・印箱代だけで、十分元が取れる金額ですが、これが藍川先生作であるならば、軽く1万円以上する、で良かろうと思います。

さて、もう一つの石ですが今日はこれまで。後編は後日ということでご容赦願います。


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