美津島明編集「直言の宴」

政治・経済・思想・文化全般をカヴァーした言論を展開します。

3月16日(土)開催・藤井厳喜の白熱教室のご報告

2019年03月17日 22時34分37秒 | ブログ主人より


昨日、都内で開かれた藤井厳喜氏の「白熱教室」の模様をご報告いたします。

当教室は、ケンブリッジ・フォーキャスト・レポート(C・F・R)の正会員が無料で参加できる、藤井厳喜氏の月一度の講演会です。実施時間帯は午後の約四時間です。一般の方が参加するには二万円を出費する必要があります。今回初参加の当方は、正会員なので無料でした。要するにC・F・R会員の「特典」、ということですね。当講演会の特徴は、講演の大半が参加者と藤井氏との応答で構成されていることです。みなさん、盛んに質問なさっていました。
今回のテーマは、「安倍政権、7つの大罪:首相は何故、自滅の道を歩むのか」でした。

安倍政権の「7つの大罪」とは、以下の通りです。( )内は、大罪たるゆえん等です。

① 消費増税(不況をもたらすことが必至だから)
② 対中従属外交(それはすなわち反米外交となり、また、中共による間接侵略を促進することになるから。私見によれば、この局面での親中への傾斜は、大東亜戦争と同様の戦略的失敗を招きます)
③ 対韓・慰安婦謝罪(慰安婦問題に関する日韓共同宣言なるものが、日本の謝罪の上に成立しており、事実無根の歴史問題について謝罪することは、日本国民にいわれなき汚点を残すことになるから。このあたりのことについては、山岡鉄秀氏が目下インターナショナルに大活躍なさっています)
④ アイヌ新法(当法律は、歴史的に根拠のないアイヌ先住民族説を甘受したものであり、そのことで、日本国民を分断し、反日勢力の拠点を提供することにつながる。みなさん、この論点については、インターネットで検索し、問題意識を深堀りなさってください)
⑤ 憲法改正後退(安倍政権は、9条改正の意志を喪失してしまった。消費増税が、経済不況を招き、憲法改正機運に鉄槌を下すことになる)
⑥ 移民受け入れ(新入管法は事実上の移民受け入れ法である)
⑦ 天皇陛下のご「退位」・ご「譲位」問題(天皇皇后両陛下は「譲位」というお言葉を使われているのに、安倍政権はあくまで「退位」で通そうとしている。不敬である)

その他、国際情勢について氏が触れたことを以下に列挙します。

・2月27日28日の米朝首脳会談が失敗した最大の原因は、北朝鮮がアメリカの現状を読み誤ったから。金正恩は、トランプがもっと大胆な妥協をするだろうと予想していた。同期間に米国議会で行われたマイケル・コーヘン弁護士(トランプ大統領の元個人弁護士)の証言で、北朝鮮は、コーヘン氏が、ロシアゲートに関してトランプ大統領が不利になる爆弾発言をすると予想していた。だから、トランプは大胆な妥協をするだろう、と。ところが、その内容はむしろトランプ大統領のロシア疑惑関与を否定するものだった。それゆえトランプ大統領は、同証言によってまったく追い詰められなかった。北にとってみれば、「当てが外れた」ということ。金正恩は、米国政権中枢のディープ・ステイトの反トランプ情報に安易に乗っかったのでは。

・中共の習近平は、3月下旬に予定されていた訪米をキャンセルした。中共は、対米貿易黒字の削減には対応できる。しかし、国営企業に対する大量の補助金を削減し、知的所有権の窃盗を止めること(これらはアメリカが要求していること)は、共産党一党独裁という中共経済の核心を揺るがすことがらであるから、アメリカの要求を呑むのは構造的に無理である。それゆえ、訪米の成果が望めないので、習はキャンセルしたのだろう。したがって、米中経済戦争は長引く。日本政府は、アメリカに就くのか、中共に就くのか、旗幟鮮明にしなければならない。「いいとこどり」は、命とりになる。

・イギリスの「合意なきEU離脱」の可能性は高い。イギリスが離脱の延期をしたいと思っても、EU加盟27か国が全員一致でそれに賛成しなければ実現しないから。もともと、ブレグジットとトランプ現象とは似ているところもあるが、大きく異なる点がある。それは、トランプ政権が米国国民各層の幅広い経済ナショナリズムの支持の潮流から生まれた政権であるのに対して、イギリスのブレグジットの場合、経済ナショナリズムを支持する真面目な一般国民の上に、英国旧植民地利権勢力が上乗りしてこの運動を進めたことである。英国旧植民地利権勢力は、ブレグジットによって、シティのタックスヘイブンとしての金融利権を維持しようとした。ブレグジット問題の本質は、イギリスが抱えているタックスヘイブン問題である。具体的にいえば、同勢力は、ジャージー島・ガーンジー島・マン島という3つの英王室属領のタックスヘイブンという砦を守り続けてきた(これらの領域には、イギリスの法律が通じない)。イギリスがこれらのタックスヘイブンをきちんと規制しない限り、EU側は、英国とまっとうな交渉をすることを拒んできたのである。それが今日の「合意なきEU離脱危機」を招いているのである。いずれにしても、金融センターとしてのロンドンシティの地盤沈下は避けられない。シティが辛うじて生き延びることができる唯一の道は、イギリスに本社を置くすべての金融サービス会社が、EUの監督下に入ることである。

・そのことに関連して、アメリカのファーウェイ排除に抵抗している筆頭はイギリスである。英国旧植民地利権勢力は、元々親中派であり、英政府通信本部が「5Gにファーウェイ製品を導入しても、リスクを抑える方法はある」とするのも、同勢力が水面下で中共と提携関係にあることを考えればむべなるかな、というよりほかはない。英米は一体ではない。英米の対立関係が見えていないと、本当の国際情勢は見えない。

ほかにもいろいろと話は出ましたが、このあたりでやめておきます。藤井氏から得たものを当ブログを読んでくださっている方々と共有するため、これからいろいろな形で発信いたしますので、気長にお待ちください。当「白熱教室」のサブタイトルは、「日本の未来を創る!」です。その趣旨に、当方、大いに賛成なので、藤井氏が発信するところは、お伝えしていきたいと思っております。

PS 「退位」「譲位」問題に関連して、当方からひとつ藤井氏に質問をしました。ついでながら、それを述べておきましょう。
氏は当問題についておおむね次のように述べました。

すなわち〈天皇皇后両陛下は「譲位」というお言葉を使われているのだから、それを尊重して「譲位」を使うべきなのに、安倍内閣は、「譲位」を使うと天皇陛下が主体的に国事に関する行為を行ったことになるからという理由で「退位」を使っている。
しかし、憲法第憲法7条「天皇の国事行為」には「内閣の助言と承認により」とある。これは、天皇の主体的意思の所在を前提している。だから政府見解は、「譲位」を否定する根拠とはなりえない。
天皇陛下の「譲位」決意の御心の根底には、長らく続いている平成不況と東日本大地震などの大規模自然災害による国民の苦しみの引き受けによる自責の念があるように思われる。歴代の天皇陛下は、国民の苦しみを引き受け続けてこられた。それが皇室の伝統的なあり方でもある。
その御心を尊重すれば「退位」などとんでもない〉と。

それに対して、私は〈今日のお話のすべてに感心しましたが、とりわけ、今上天皇に対する藤井先生の真心に感銘を受けました。
他方では、藤井先生がおっしゃるように、消費増税は、一般国民に深甚なる苦しみをもたらすので、なんとしても阻止しなければならない。
今上天皇の御心を汲むならば、安倍政権は、御代替わりをきっかけに消費増税凍結を世に向けて宣言し、新天皇の新しい時代を寿ぐことが、人心にかなっているのではないか。
消費増税凍結は、一般国民の心に、新天皇の「恩赦」と映り、天皇陛下に対する国民の心寄せをゆるぎないものにすることになるのではないか〉という意味のことを申し上げました。

藤井氏は、ご自身の反消費増税の論考が掲載されている、藤井聡氏の『クライテリオン』を掲げながら、「私が言いたかったのは、そういうことだ」という意味のことを発言なさり、私に謝意を表されました。とても嬉しかったですね。

目にした藤井厳喜氏の姿勢は、率直そのものでした。自然体をキープなさっていました。偉ぶったところは、微塵もありませんでした。それは、20年間読書会を通じてお付き合いいただいた小浜逸郎氏のお人柄に通じるものでした。一流の人士には、やはり共通するところがある、と再認識いたしました。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする