ギリシャ問題についてのメモ(その2)――フェイスブックより (美津島明)
ギリシャの財政破綻さらにはユーロ離脱問題についての続報です。
●7月16日(木)「ギリシャ 財政改革法案を可決」(YAHOO!ニュース)
http://news.yahoo.co.jp/pickup/6167281?fr=fb_pc_tpc
マスコミでは、「これで、ギリシャのEU脱退がなくなって一安心。デフォルトも回避されそうだし、やれやれ」というノリの報道がなされている。私には、ギリシャの財政主権が、EUの緊縮財政派に乗っ取られた、無残なニュースとしか感じられない。緊縮財政派の軍門に下ったチプラス首相が、反緊縮財政の選挙公約に反し、国民投票で示された国民の意思を無視する振る舞いをしてしまったことは間違いない。EUに首根っこをつかまれたなかでの、ギリシャ国政の動揺が、悲惨な末路を迎えることを危惧する。私は、絶望したギリシャ国民が、極右勢力に期待をかけるようなことにならなければよいが、と思っているのである。ギリシャの次の総選挙がいつになるのかは分からない。しかし、「反緊縮財政路線」を選挙公約に掲げた政党が、ふたたびギリシャ国民の心をつかむことは間違いないだろう。今回、極左連合から裏切られた国民が、今度は極右勢力に望みを託す可能性が少なからずあるような気がする。まあ、素人話だから、話半分で聞いていただければけっこうだが。
●7月16日(木)「薬の輸出禁止=国内流通分の不足警戒―ギリシャ」(YAHOO!ニュース)
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20150716-00000097-jij-eurp
6月から導入されている資本規制の影響で、あらゆる資金の流れが滞っていることが、薬の輸出禁止の原因らしい。薬剤の輸出は、輸出総額のほんの数%にすぎない。輸出総額の35%は石油精製なのだが、資本規制の影響がそこにも及んでいるのだとすれば、ギリシャ経済への打撃は甚大なものだろう。輸出の減少は、端的にGDPの減少をもたらす。緊縮財政の縛りが法制化された現在、私たちは、これからずっとギリシャ経済の惨状を目の当たりにするほかないのだろうか。
●7月16日(木)「アテネで大規模デモ、一部が暴徒化 機動隊が催涙弾発射」(朝日新聞DIGITAL)
http://news.goo.ne.jp/article/asahi/world/ASH7J1QMMH7JULFA001.html?fb_ref=Default
「財政改革法案は祖父母や両親の世代にはいいのだろうが、自分たちにとっては苦しいだけだ」。これは、財政改革法に反対するデモに参加したギリシャの若者の発言である。このように、緊縮財政は、「子や孫の世代に借金を残さない」ものなのではなくて、子や孫の世代の未来を奪うものであることが、これでよく分かるだろう。いつか言ったことを、いまふたたび、言おう。緊縮財政思想と一定の距離がとれていない論者を、私は、価値ある知識人であるとはまったく思っていない。少なくとも、経済政策に関しては、口をつぐむだけの節操を持っていただきたい。
〔追加分〕
7月11日(土)に配信された、青木泰樹氏の「ギリシャ危機は対岸の火事ではない」(「三橋貴明の「新」日本経済新聞」より)は、とても意義深い論考である。
https://www.facebook.com/mitsuhashipress/posts/513768658788764
財務省シンパのマスコミの緊縮財政肯定論のデマをなで斬りにしたうえで、緊縮財政思想が、ギリシャ経済をずたずたにした道筋を、青木氏は、次のように述べている。なお、引用文中の「PB(プライマリーバランス)目標」とは、「税収だけで、一般歳出(国債費を除く政策経費)をまかなえるようにすること」である。いいかえれば、「基礎的収支を単年度で均衡させる財政目標」である。これが、緊縮財政派の金科玉条であることはいうまでもない。
欧州委員会(EU)、欧州中央銀行(ECB)、国際通貨基金(IMF)という三者、いわゆるトロイカに押し付けられたPB目標を達成しようとして、ギリシャは忠実に増税と歳出削減を履行し、結果的に経済を破綻させました。
5年間でGDPは25%減少しました(日本に置き換えて考えるなら、日本の名目GDPは約490兆円ですから、120兆円以上が消し飛んだことになります)。失業率も平均で26%超、若年層に至っては60%超です。若者が希望の持てない、未来のない国にしてしまったのです。万死に値する所業です。
ここまで経済を破壊して得たものは何か。若干のPB黒字だけです。それによって財政再建はかなったのでしょうか、財政破綻の危機は去ったのでしょうか。とんでもない、PBを黒字化しても財政破綻寸前です。PB目標の達成は、国家の安寧も財政再建も、何ももたらさなかったという歴史的事実が残ったのです。これを教訓とせずして、何を教訓とすべきでしょうか。
安倍政権がいま目標に掲げている「PB目標」なるものが、どれほど国民経済に深甚なる害をなすものであるのかを思い知ることが、われわれ日本人にとって、ギリシャ問題から得られる教訓の最たるものである、と青木氏は主張しているのだ。そのとおりである、と申し上げたい。氏の緊縮財政批判が主流にならない日本言論界の惨状を、私は深く憂慮している。氏が語っているのは、いわば、常識にほかならないのである。
常識といえば、「日本の借金は、1000兆円。GDPの200パーセント超で大変。財政破綻なのだ。ハイパー・インフレなのだ。消費増税なのだ」という、毎度毎度、新聞を三か月に一度の年中行事のように賑わせている記事がある。これは、一般国民にとっては常識になっているのであろうが、会計学のイロハからすれば、噴飯物にすぎない。いわゆる「金融の異次元緩和」の断行によって、日本にもはや財政問題など存在しないのである。私ごときがいくら言い募ってみても、大方は信じないのだろうから、ぜひ、青木氏の言葉に耳を傾けてみていただきたい。それでも信じられなければ、北極か南極に行って、その融通のきかない頭を強烈な冷水に突っ込んでみてはいかがか。
ギリシャの財政破綻さらにはユーロ離脱問題についての続報です。
●7月16日(木)「ギリシャ 財政改革法案を可決」(YAHOO!ニュース)
http://news.yahoo.co.jp/pickup/6167281?fr=fb_pc_tpc
マスコミでは、「これで、ギリシャのEU脱退がなくなって一安心。デフォルトも回避されそうだし、やれやれ」というノリの報道がなされている。私には、ギリシャの財政主権が、EUの緊縮財政派に乗っ取られた、無残なニュースとしか感じられない。緊縮財政派の軍門に下ったチプラス首相が、反緊縮財政の選挙公約に反し、国民投票で示された国民の意思を無視する振る舞いをしてしまったことは間違いない。EUに首根っこをつかまれたなかでの、ギリシャ国政の動揺が、悲惨な末路を迎えることを危惧する。私は、絶望したギリシャ国民が、極右勢力に期待をかけるようなことにならなければよいが、と思っているのである。ギリシャの次の総選挙がいつになるのかは分からない。しかし、「反緊縮財政路線」を選挙公約に掲げた政党が、ふたたびギリシャ国民の心をつかむことは間違いないだろう。今回、極左連合から裏切られた国民が、今度は極右勢力に望みを託す可能性が少なからずあるような気がする。まあ、素人話だから、話半分で聞いていただければけっこうだが。
●7月16日(木)「薬の輸出禁止=国内流通分の不足警戒―ギリシャ」(YAHOO!ニュース)
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20150716-00000097-jij-eurp
6月から導入されている資本規制の影響で、あらゆる資金の流れが滞っていることが、薬の輸出禁止の原因らしい。薬剤の輸出は、輸出総額のほんの数%にすぎない。輸出総額の35%は石油精製なのだが、資本規制の影響がそこにも及んでいるのだとすれば、ギリシャ経済への打撃は甚大なものだろう。輸出の減少は、端的にGDPの減少をもたらす。緊縮財政の縛りが法制化された現在、私たちは、これからずっとギリシャ経済の惨状を目の当たりにするほかないのだろうか。
●7月16日(木)「アテネで大規模デモ、一部が暴徒化 機動隊が催涙弾発射」(朝日新聞DIGITAL)
http://news.goo.ne.jp/article/asahi/world/ASH7J1QMMH7JULFA001.html?fb_ref=Default
「財政改革法案は祖父母や両親の世代にはいいのだろうが、自分たちにとっては苦しいだけだ」。これは、財政改革法に反対するデモに参加したギリシャの若者の発言である。このように、緊縮財政は、「子や孫の世代に借金を残さない」ものなのではなくて、子や孫の世代の未来を奪うものであることが、これでよく分かるだろう。いつか言ったことを、いまふたたび、言おう。緊縮財政思想と一定の距離がとれていない論者を、私は、価値ある知識人であるとはまったく思っていない。少なくとも、経済政策に関しては、口をつぐむだけの節操を持っていただきたい。
〔追加分〕
7月11日(土)に配信された、青木泰樹氏の「ギリシャ危機は対岸の火事ではない」(「三橋貴明の「新」日本経済新聞」より)は、とても意義深い論考である。
https://www.facebook.com/mitsuhashipress/posts/513768658788764
財務省シンパのマスコミの緊縮財政肯定論のデマをなで斬りにしたうえで、緊縮財政思想が、ギリシャ経済をずたずたにした道筋を、青木氏は、次のように述べている。なお、引用文中の「PB(プライマリーバランス)目標」とは、「税収だけで、一般歳出(国債費を除く政策経費)をまかなえるようにすること」である。いいかえれば、「基礎的収支を単年度で均衡させる財政目標」である。これが、緊縮財政派の金科玉条であることはいうまでもない。
欧州委員会(EU)、欧州中央銀行(ECB)、国際通貨基金(IMF)という三者、いわゆるトロイカに押し付けられたPB目標を達成しようとして、ギリシャは忠実に増税と歳出削減を履行し、結果的に経済を破綻させました。
5年間でGDPは25%減少しました(日本に置き換えて考えるなら、日本の名目GDPは約490兆円ですから、120兆円以上が消し飛んだことになります)。失業率も平均で26%超、若年層に至っては60%超です。若者が希望の持てない、未来のない国にしてしまったのです。万死に値する所業です。
ここまで経済を破壊して得たものは何か。若干のPB黒字だけです。それによって財政再建はかなったのでしょうか、財政破綻の危機は去ったのでしょうか。とんでもない、PBを黒字化しても財政破綻寸前です。PB目標の達成は、国家の安寧も財政再建も、何ももたらさなかったという歴史的事実が残ったのです。これを教訓とせずして、何を教訓とすべきでしょうか。
安倍政権がいま目標に掲げている「PB目標」なるものが、どれほど国民経済に深甚なる害をなすものであるのかを思い知ることが、われわれ日本人にとって、ギリシャ問題から得られる教訓の最たるものである、と青木氏は主張しているのだ。そのとおりである、と申し上げたい。氏の緊縮財政批判が主流にならない日本言論界の惨状を、私は深く憂慮している。氏が語っているのは、いわば、常識にほかならないのである。
常識といえば、「日本の借金は、1000兆円。GDPの200パーセント超で大変。財政破綻なのだ。ハイパー・インフレなのだ。消費増税なのだ」という、毎度毎度、新聞を三か月に一度の年中行事のように賑わせている記事がある。これは、一般国民にとっては常識になっているのであろうが、会計学のイロハからすれば、噴飯物にすぎない。いわゆる「金融の異次元緩和」の断行によって、日本にもはや財政問題など存在しないのである。私ごときがいくら言い募ってみても、大方は信じないのだろうから、ぜひ、青木氏の言葉に耳を傾けてみていただきたい。それでも信じられなければ、北極か南極に行って、その融通のきかない頭を強烈な冷水に突っ込んでみてはいかがか。
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