*2010-09-07さんへ。これから、あなたのコメントの文言をあれこれと取り上げて、いろいろと申し上げますけれど、あなたのコメントにイチャモンをつけてやろうとか、やっつけてやろうとかいった不届きで攻撃的な動機はまったくありません。私の拙文に真摯なコメントをいただけたことに対しては感謝の念でいっぱいです。「TPP参加で、日本は進路を誤る」という危機感をお互い共有しているとも僭越ながら思っています。
TPPという国境を越えた大きくて複雑な問題を、ちゃんと考えるのは、けっこう難しいことです。私の反対の立場に変わりはありませんが、その難しさ・大変さをこの頃身にしみて感じ始めています。
大きくて複雑な問題だからこそ、なるべく論点をしぼって、具体的に考えなければならない、と私は考えるのです。その場合、TPPをめぐっての上念司氏の言動をどう考えるか、というのは、格好の材料になるのではないかと思うのですね。
そんなつもりですので、しばし、お付き合いくださいませ。
******
昨日ブログアップした「東京新聞の『特ダネ』は真実か」に、「2010-09-07 さん 」から次のようなコメントをいただきました。
Commented by 2010-09-07 さん
はじめまして、こんにちは。
この件に関する上念氏の主張は私も見聞きしましたが、上念氏の主張は信用するに値するのか、きわめて懐疑的であるというのが正直な感想です。
まず、ドッキング条項の実態については何も立証されていません。さらに、国会での質疑において岸田外相は、東京新聞のスクープをもとにした指摘を認めておられたはずです。この時点で決着がついているのではないでしょうか。
そもそも上念氏は、TPPに対して容認の見解を示してこられたというのが私の認識です。みんなの党を押している方でもあります。これらの認識から、日本のメディアのマイナスイメージを利用し、TPPの危険性を低く見せる意図があるのではないかという見方すら成立し得ると思います。
いずれにせよ、美津島さんのおっしゃるとおり賛成の理由にはなり得ないと思います。今後も注視したいですね。
2010-09-07さんの知的でバランスの良いコメントの中身は、痛烈な上念司批判です。
上念司氏について、私がこれまで抱いていたイメージを列挙すると、次のようなものでした。
三橋貴明氏と同じく、経済問題について分かりやすく、本質をふまえた議論の展開できる人。日銀批判の急先鋒。企業活動の現場をよく知っている人。常識人。安倍内閣成立後、「保守分断」の動きに敏感に反応してきた人。中川八洋の陰謀史観に大きな影響を受けている人。「まさに近衛内閣末期です」をキャッチ・コピーにしている人。
まとめれば、陰謀史観的な物言いがやや気になるが、一貫した日銀批判は評価すべきである、となりましょうか。
だから、2010-09-07さんの「日本のメディアのマイナスイメージを利用し、TPPの危険性を低く見せる意図があるのではないかという見方すら成立し得る」という視点に、はっとさせられたのですね。そうして、考え込んでしまったのです。
そもそもの話に戻りましょう。安倍政権成立までは、上念司氏・三橋貴明氏・藤井聡氏・中野剛志氏などはいわばゆるやかな共闘関係にあったのではないかと思われます。彼らは、同政権成立とアベノミクスの影の功労者である、とさえ私は思っています。なんといっても、彼らのバイタリティはすごいですからね。
ところが、安倍政権が発足し、アベノミクスが現実に展開しはじめると、「戦時」からいわば「平時」に移行するわけですから、それぞれのモノの考え方の違いが目立ってくるのは、当たり前といえば当たり前のことでしょう。
この四人のなかで、戦後レジームからの脱却という課題を最も深刻に受け止めているのは、おそらく中野剛志氏でしょう。それに続くのが、藤井聡氏でしょう。その点、三橋氏と上念氏はそれほど深く思うところはないような気がします。
つまり、三橋氏と上念氏は、ほかの二人と違って、政治を語るにしても、経済問題に対するリアリズムをベースにしているような印象を受けます。もちろん、それはほかの二人にもなくはないのですが、政治に関心のウェイトがかかっている感じは否めないのではないでしょうか。
では、三橋氏と上念氏の大きな違いは何なのでしょう。それは、端的にデフレの定義の仕方に表れています。三橋氏は「デフレとは、ありあまる生産能力と現実の有効需要の差、すなわちデフレギャップのこと」と定義します。それに対して、上念氏は「モノの価値よりもおカネの価値が大きい現象」と定義します。
だから、三橋氏は、デフレからの脱却のために、積極的な財政出動、平たく言えば公共事業の積極展開を強調します。それに対して、上念氏は、おカネの価値を低くするために大胆な量的緩和こそがデフレからの脱却をもたらす、と金融政策の重要性を強調します。
しかしながら、彼らはリアリストですから、アベノミクス擁護の立場から、積極財政と大胆な金融緩和とのパッケージを肯定します。頭でっかちの学者とは、そこのところが違います。
それにしても、それぞれの力点の置き方の違いは、国家観の違いに微妙な影を落としているように、私には感じられます。
財政政策、すなわち国民経済への政府の直接介入を強調する三橋氏の方が、上念氏よりも「国家の枠」を強く意識している、ということです。
だから三橋氏は、TPPを国家主権をおびやかすものとして大きく問題にします。それに比べれば、上念氏のTPP反対のトーンがかなり低く感じられるのは事実です。というよりむしろ、TPPに関して、上念氏が旗色鮮明な論陣を張ったことはない、というべきなのでしょう。おそらくその印象が、2010-09-07さんの「上念氏は、TPPに対して容認の見解を示してこられた」という認識につながるのではないでしょうか。
では、上念氏の正体は「隠れTPP推進派」なのでしょうか。次は、「H25.03.13 上念司 ザ・ボイス そこまで言うか!」というタイトルのyou tube です。どうぞ、ご視聴ください。最初から6分3秒までが、TPP関連の発言です。
(当該you tube は、現段階では削除されています。2013・12・10)
いかがでしょうか。上念氏が積極的な反対派として発言していないのは確かです。しかしながら、積極的なTPP反対派である私の耳に、彼の発言は「TPPに反対するなら、日本国内で孤立して頑張っていても効果は薄いよ。もっと視野を拡げて、アメリカ国内のTPPをめぐる具体的な動向を踏まえましょう。そうすれば、推進派がふりまく『アメリカは、自動車以外TPP推進の一枚岩』というイメージが幻想に過ぎないことが分かると思うよ。アメリカの99%と共闘を組む道を探ることも考えてみましょうね。だから、反TPPに反米の情念を重ねるのは意味のないことだよ」と聞こえます。これはこれで貴重な情報であると私は考えるのですがいかがでしょうか。それこそ、情念的国粋主義的な反TPP派の言葉より断然聴き応えのある発言なのではないでしょうか。そういう有用な発言をする人を、反対派か容認派か推進派かという色分けの対象にするのは、どうも気が進みません。
「ドッキング条項の実態については何も立証されていません」。これは、その通りであると思います。インターネットで「ドッキング条項」を検索してみましたが、見当たりませんでした。おそらく日本では、上念氏がはじめて使った言葉なのではないでしょうか。だから、私の能力ではそれ以上なにも言えなくなります。
「国会での質疑において岸田外相は、東京新聞のスクープをもとにした指摘を認めておられたはず」。これは、微妙です。You tube に該当する場面があるのでご覧ください。タイトルは「2013/03/08 衆議院 予算委員会 日本維新の会 松野頼久の質疑」です。
2013/03/08 衆議院 予算委員会 日本維新の会 松野頼久の質疑
松野議員の執拗な追及を、岸田外相も安倍首相も、のらりくらりとかわし続けて、言質を取られることをまぬがれています。しかしながらなんとなく、日本も実は、メキシコやカナダと同じ不利な条件を呑まされている印象が残りました。限りなく怪しいのは確かなのですが、政府は東京新聞のスクープを認めるところまでには至っていませんね。だから、「決着がついている」とは言い切れないのではないでしょうか(第二信・第三信をいただいているので、2010-09-07さん、ここはこれくらいでいいですね。ここの私の発言は岸田外相の発言内容を知らない一般向けということでご容赦ください)。
最後に、上念氏の支持政党について。2010-09-07さんによれば、上念氏はみんなの党を支持しているとのこと。リフレ派を自称する上念氏が、みんなの党に一定の親和感を抱いているのは間違いないでしょうね。しかしながら、ちゃんねる桜の討論番組で、上念氏は、先の衆議院選での自民党の圧勝を受けて「これから私は、御用評論家ですから」と何度も言っているのです。
ようするに、彼は、みんなの党支持者というよりも、リフレ派としての自分の、金融政策にまつわる信条(デフレ脱却のための大胆な金融緩和)を実現してくれる政党ならなんでもいいという功利主義あるいは是々非々の立場なのではないかと思うのですね。いかがでしょうか。ちなみに、私はリフレ派を許容する国民経済派と自分のことを思っています。日本国民の間に悪意に満ちた対立軸を持ち込んで、その分断を図り日本の弱体化を目論む勢力が敵であると思っている者です。国民経済に過激な競争原理を持ち込もうとする構造改革派や市場原理主義者は、もちろんそういう「敵」であります。
*****
2010-09-07さん。私の返事はこんなところです。上念氏についてこんな考え方をする反TPP論者もいるのだと、思っていただければ幸いです。むろん、あなたの「日本のメディアへの不信感を利用した上、不明確なハフィントンのソースを引用してTPPへの警戒心を解こうとする言動に対して強い不信感を持つという私の見解は変わりありません」という考え方は尊重します。その可能性もゼロとは断言できませんので。それが判明した段階で、私はあなたに素直に脱帽します。
〔追伸〕「TPPに限って交渉参加したらいきなり発効」なんて議論は、初耳です。そんな馬鹿な、としか取りあえず反応のしようがありません。TPPは条約でしょう?国会の承認抜きに発効なんて、いくらなんでもありえないのでは?情報ソースが判明しないと、確かにそれ以上のことは言えませんね。ここでの上念氏はやや軽率な感じがします。
〔コメント〕
Commented by 2010-09-07 さん
こんにちは。丁寧な検証記事と御返信、ありがとうございます。
上念氏、三橋氏、藤井氏、中野氏それぞれを取り巻く枠やバランス、そういったものに対する美津島さんの認識はすごくよくわかります。モノとカネに対する違いもおっしゃるとおりですね。理論や範囲、そして人品骨柄が、明確に、主張にあらわれていると思います。
以下に私が考えたことを素直に書かせていただきます。(私が正しいと主張しているわけではありません)
まず、容認派か否かという点。おっしゃるように区分けするのはよくないかもしれませんね。その上で、稚拙ながら私が考えたことは
上念氏のTPPに関する発信を見ますと、TPP反対派の主張(危険性)に対するアンチテーゼに偏っていると思われます。海外の動向にも視野を広げるべきであるとの点はおっしゃるとおりですが、廣宮氏などは、同じく海外の動向を挙げつつ主として懸念材料を示されます。「情報を取得し、何を主として発信するか」にはその人の意思やスタンスが反映されると考えます。「マスコミフィルター」などがよい例でしょうか。あくまで私の見聞きした範囲ですが、上念氏が積極的に危険性を論じられた印象はなく、危険性に対するアンチテーゼが主であるとのことから、私は容認派ではないかと考えてきました。
加えて、反省すべき点は言葉足らずであったことです。私は上念氏の功績は大きいと考えます。日銀の件、金融緩和の解説などは言うまでもありません。にもかかわらず、前回記事のコメントは批判のみ、陰謀論的なものまで(あくまで「成立し得る」ですが)発出してしまいました。例えば○○を肯定する文を見て「危険性も併記してよ」などと思ってしまうのですが、非常に不十分な表現でした。気をつけたく思います。
その他、思うことはあるのですが、うまく表現できない部分もあります。時間的制約や文章の長さの問題もありますので、このあたりで切り上げさせていただきます。
言葉とは本当に難しいですね。やりとりを通じて改めて痛感しました。美津島さんの柔軟な考え方や俯瞰での視点、非常に参考になります。私の硬直的な部分について顧みることもでき、反省材料もいただきました。考えを深めるきっかけにもなり、非常に楽しかったです。重ねまして、ありがとうございました。
Commented by 美津島明 さん
To 2010-09-07さん
2010-09-07さんのおかげで、上念司氏の発言を受けとめる新たな視点を持つことができました。オピニオン・リーダーの発言を冷静に受けとめて、自分なりに咀嚼することはとても大切なことですね。それに気づかせていただいたことを感謝します。
TPPという国境を越えた大きくて複雑な問題を、ちゃんと考えるのは、けっこう難しいことです。私の反対の立場に変わりはありませんが、その難しさ・大変さをこの頃身にしみて感じ始めています。
大きくて複雑な問題だからこそ、なるべく論点をしぼって、具体的に考えなければならない、と私は考えるのです。その場合、TPPをめぐっての上念司氏の言動をどう考えるか、というのは、格好の材料になるのではないかと思うのですね。
そんなつもりですので、しばし、お付き合いくださいませ。
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昨日ブログアップした「東京新聞の『特ダネ』は真実か」に、「2010-09-07 さん 」から次のようなコメントをいただきました。
Commented by 2010-09-07 さん
はじめまして、こんにちは。
この件に関する上念氏の主張は私も見聞きしましたが、上念氏の主張は信用するに値するのか、きわめて懐疑的であるというのが正直な感想です。
まず、ドッキング条項の実態については何も立証されていません。さらに、国会での質疑において岸田外相は、東京新聞のスクープをもとにした指摘を認めておられたはずです。この時点で決着がついているのではないでしょうか。
そもそも上念氏は、TPPに対して容認の見解を示してこられたというのが私の認識です。みんなの党を押している方でもあります。これらの認識から、日本のメディアのマイナスイメージを利用し、TPPの危険性を低く見せる意図があるのではないかという見方すら成立し得ると思います。
いずれにせよ、美津島さんのおっしゃるとおり賛成の理由にはなり得ないと思います。今後も注視したいですね。
2010-09-07さんの知的でバランスの良いコメントの中身は、痛烈な上念司批判です。
上念司氏について、私がこれまで抱いていたイメージを列挙すると、次のようなものでした。
三橋貴明氏と同じく、経済問題について分かりやすく、本質をふまえた議論の展開できる人。日銀批判の急先鋒。企業活動の現場をよく知っている人。常識人。安倍内閣成立後、「保守分断」の動きに敏感に反応してきた人。中川八洋の陰謀史観に大きな影響を受けている人。「まさに近衛内閣末期です」をキャッチ・コピーにしている人。
まとめれば、陰謀史観的な物言いがやや気になるが、一貫した日銀批判は評価すべきである、となりましょうか。
だから、2010-09-07さんの「日本のメディアのマイナスイメージを利用し、TPPの危険性を低く見せる意図があるのではないかという見方すら成立し得る」という視点に、はっとさせられたのですね。そうして、考え込んでしまったのです。
そもそもの話に戻りましょう。安倍政権成立までは、上念司氏・三橋貴明氏・藤井聡氏・中野剛志氏などはいわばゆるやかな共闘関係にあったのではないかと思われます。彼らは、同政権成立とアベノミクスの影の功労者である、とさえ私は思っています。なんといっても、彼らのバイタリティはすごいですからね。
ところが、安倍政権が発足し、アベノミクスが現実に展開しはじめると、「戦時」からいわば「平時」に移行するわけですから、それぞれのモノの考え方の違いが目立ってくるのは、当たり前といえば当たり前のことでしょう。
この四人のなかで、戦後レジームからの脱却という課題を最も深刻に受け止めているのは、おそらく中野剛志氏でしょう。それに続くのが、藤井聡氏でしょう。その点、三橋氏と上念氏はそれほど深く思うところはないような気がします。
つまり、三橋氏と上念氏は、ほかの二人と違って、政治を語るにしても、経済問題に対するリアリズムをベースにしているような印象を受けます。もちろん、それはほかの二人にもなくはないのですが、政治に関心のウェイトがかかっている感じは否めないのではないでしょうか。
では、三橋氏と上念氏の大きな違いは何なのでしょう。それは、端的にデフレの定義の仕方に表れています。三橋氏は「デフレとは、ありあまる生産能力と現実の有効需要の差、すなわちデフレギャップのこと」と定義します。それに対して、上念氏は「モノの価値よりもおカネの価値が大きい現象」と定義します。
だから、三橋氏は、デフレからの脱却のために、積極的な財政出動、平たく言えば公共事業の積極展開を強調します。それに対して、上念氏は、おカネの価値を低くするために大胆な量的緩和こそがデフレからの脱却をもたらす、と金融政策の重要性を強調します。
しかしながら、彼らはリアリストですから、アベノミクス擁護の立場から、積極財政と大胆な金融緩和とのパッケージを肯定します。頭でっかちの学者とは、そこのところが違います。
それにしても、それぞれの力点の置き方の違いは、国家観の違いに微妙な影を落としているように、私には感じられます。
財政政策、すなわち国民経済への政府の直接介入を強調する三橋氏の方が、上念氏よりも「国家の枠」を強く意識している、ということです。
だから三橋氏は、TPPを国家主権をおびやかすものとして大きく問題にします。それに比べれば、上念氏のTPP反対のトーンがかなり低く感じられるのは事実です。というよりむしろ、TPPに関して、上念氏が旗色鮮明な論陣を張ったことはない、というべきなのでしょう。おそらくその印象が、2010-09-07さんの「上念氏は、TPPに対して容認の見解を示してこられた」という認識につながるのではないでしょうか。
では、上念氏の正体は「隠れTPP推進派」なのでしょうか。次は、「H25.03.13 上念司 ザ・ボイス そこまで言うか!」というタイトルのyou tube です。どうぞ、ご視聴ください。最初から6分3秒までが、TPP関連の発言です。
(当該you tube は、現段階では削除されています。2013・12・10)
いかがでしょうか。上念氏が積極的な反対派として発言していないのは確かです。しかしながら、積極的なTPP反対派である私の耳に、彼の発言は「TPPに反対するなら、日本国内で孤立して頑張っていても効果は薄いよ。もっと視野を拡げて、アメリカ国内のTPPをめぐる具体的な動向を踏まえましょう。そうすれば、推進派がふりまく『アメリカは、自動車以外TPP推進の一枚岩』というイメージが幻想に過ぎないことが分かると思うよ。アメリカの99%と共闘を組む道を探ることも考えてみましょうね。だから、反TPPに反米の情念を重ねるのは意味のないことだよ」と聞こえます。これはこれで貴重な情報であると私は考えるのですがいかがでしょうか。それこそ、情念的国粋主義的な反TPP派の言葉より断然聴き応えのある発言なのではないでしょうか。そういう有用な発言をする人を、反対派か容認派か推進派かという色分けの対象にするのは、どうも気が進みません。
「ドッキング条項の実態については何も立証されていません」。これは、その通りであると思います。インターネットで「ドッキング条項」を検索してみましたが、見当たりませんでした。おそらく日本では、上念氏がはじめて使った言葉なのではないでしょうか。だから、私の能力ではそれ以上なにも言えなくなります。
「国会での質疑において岸田外相は、東京新聞のスクープをもとにした指摘を認めておられたはず」。これは、微妙です。You tube に該当する場面があるのでご覧ください。タイトルは「2013/03/08 衆議院 予算委員会 日本維新の会 松野頼久の質疑」です。
2013/03/08 衆議院 予算委員会 日本維新の会 松野頼久の質疑
松野議員の執拗な追及を、岸田外相も安倍首相も、のらりくらりとかわし続けて、言質を取られることをまぬがれています。しかしながらなんとなく、日本も実は、メキシコやカナダと同じ不利な条件を呑まされている印象が残りました。限りなく怪しいのは確かなのですが、政府は東京新聞のスクープを認めるところまでには至っていませんね。だから、「決着がついている」とは言い切れないのではないでしょうか(第二信・第三信をいただいているので、2010-09-07さん、ここはこれくらいでいいですね。ここの私の発言は岸田外相の発言内容を知らない一般向けということでご容赦ください)。
最後に、上念氏の支持政党について。2010-09-07さんによれば、上念氏はみんなの党を支持しているとのこと。リフレ派を自称する上念氏が、みんなの党に一定の親和感を抱いているのは間違いないでしょうね。しかしながら、ちゃんねる桜の討論番組で、上念氏は、先の衆議院選での自民党の圧勝を受けて「これから私は、御用評論家ですから」と何度も言っているのです。
ようするに、彼は、みんなの党支持者というよりも、リフレ派としての自分の、金融政策にまつわる信条(デフレ脱却のための大胆な金融緩和)を実現してくれる政党ならなんでもいいという功利主義あるいは是々非々の立場なのではないかと思うのですね。いかがでしょうか。ちなみに、私はリフレ派を許容する国民経済派と自分のことを思っています。日本国民の間に悪意に満ちた対立軸を持ち込んで、その分断を図り日本の弱体化を目論む勢力が敵であると思っている者です。国民経済に過激な競争原理を持ち込もうとする構造改革派や市場原理主義者は、もちろんそういう「敵」であります。
*****
2010-09-07さん。私の返事はこんなところです。上念氏についてこんな考え方をする反TPP論者もいるのだと、思っていただければ幸いです。むろん、あなたの「日本のメディアへの不信感を利用した上、不明確なハフィントンのソースを引用してTPPへの警戒心を解こうとする言動に対して強い不信感を持つという私の見解は変わりありません」という考え方は尊重します。その可能性もゼロとは断言できませんので。それが判明した段階で、私はあなたに素直に脱帽します。
〔追伸〕「TPPに限って交渉参加したらいきなり発効」なんて議論は、初耳です。そんな馬鹿な、としか取りあえず反応のしようがありません。TPPは条約でしょう?国会の承認抜きに発効なんて、いくらなんでもありえないのでは?情報ソースが判明しないと、確かにそれ以上のことは言えませんね。ここでの上念氏はやや軽率な感じがします。
〔コメント〕
Commented by 2010-09-07 さん
こんにちは。丁寧な検証記事と御返信、ありがとうございます。
上念氏、三橋氏、藤井氏、中野氏それぞれを取り巻く枠やバランス、そういったものに対する美津島さんの認識はすごくよくわかります。モノとカネに対する違いもおっしゃるとおりですね。理論や範囲、そして人品骨柄が、明確に、主張にあらわれていると思います。
以下に私が考えたことを素直に書かせていただきます。(私が正しいと主張しているわけではありません)
まず、容認派か否かという点。おっしゃるように区分けするのはよくないかもしれませんね。その上で、稚拙ながら私が考えたことは
上念氏のTPPに関する発信を見ますと、TPP反対派の主張(危険性)に対するアンチテーゼに偏っていると思われます。海外の動向にも視野を広げるべきであるとの点はおっしゃるとおりですが、廣宮氏などは、同じく海外の動向を挙げつつ主として懸念材料を示されます。「情報を取得し、何を主として発信するか」にはその人の意思やスタンスが反映されると考えます。「マスコミフィルター」などがよい例でしょうか。あくまで私の見聞きした範囲ですが、上念氏が積極的に危険性を論じられた印象はなく、危険性に対するアンチテーゼが主であるとのことから、私は容認派ではないかと考えてきました。
加えて、反省すべき点は言葉足らずであったことです。私は上念氏の功績は大きいと考えます。日銀の件、金融緩和の解説などは言うまでもありません。にもかかわらず、前回記事のコメントは批判のみ、陰謀論的なものまで(あくまで「成立し得る」ですが)発出してしまいました。例えば○○を肯定する文を見て「危険性も併記してよ」などと思ってしまうのですが、非常に不十分な表現でした。気をつけたく思います。
その他、思うことはあるのですが、うまく表現できない部分もあります。時間的制約や文章の長さの問題もありますので、このあたりで切り上げさせていただきます。
言葉とは本当に難しいですね。やりとりを通じて改めて痛感しました。美津島さんの柔軟な考え方や俯瞰での視点、非常に参考になります。私の硬直的な部分について顧みることもでき、反省材料もいただきました。考えを深めるきっかけにもなり、非常に楽しかったです。重ねまして、ありがとうございました。
Commented by 美津島明 さん
To 2010-09-07さん
2010-09-07さんのおかげで、上念司氏の発言を受けとめる新たな視点を持つことができました。オピニオン・リーダーの発言を冷静に受けとめて、自分なりに咀嚼することはとても大切なことですね。それに気づかせていただいたことを感謝します。
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