昨日、私が取り上げた東京新聞の「特ダネ」を、三橋経済新聞で、上念司さんが早速取り上げています。
上念司@大門オフィス 3月14日
「東京新聞の報道はウソか、ホントか?」
先週の国会で以下の記事が話題になりました。
〈TPP参加に極秘条件 後発国、再交渉できず〉
環太平洋連携協定(TPP)への交渉参加問題で、二〇一一年十一月に後れて交渉参加を表明したカナダとメキシコが、米国など既に交渉を始めていた九カ国から「交渉を打ち切る権利は九カ国のみにある」「既に現在の参加国間で合意した条文は原則として受け入れ、再交渉は要求できない」などと、極めて不利な追加条件を承諾した上で参加を認められていた。複数の外交関係筋への取材で七日分かった。
www.tokyo-np.co.jp/article/economics/news/CK2013030702000237.ht...
これが事実だとしたら大変なことで、さっそく維新の会の松野頼三議員が予算委員会で質問しました。
〈TPP後発国に不利条件 首相 説明は後ろ向き〉
環太平洋連携協定(TPP)への交渉参加に関連し、後から交渉に参加したカナダとメキシコが著しく不利な交渉条件を求められた問題が、八日の衆院予算委員会で論戦の主要テーマになった。野党側が事実関係の公表を求めたのに対し、安倍晋三首相らは終始、後ろ向きな姿勢。TPPは国民生活を大きく変える可能性のある重要な課題なのに、首相は説明責任を軽視したまま、交渉参加表明に踏み切ろうとしている。(金杉貴雄、関口克己)
www.tokyo-np.co.jp/article/politics/news/CK2013030902000165.htm...
さて、ここで普段からマスコミの謀略報道になれているみなさんは、どのように考えますか?
私が真っ先に考えたのは、どうすればこの情報の裏が取れるかということです。
いちばん簡単なのは海外のメディアや関係機関のサイトを片っ端からチェックして、この東京新聞の「特ダネ」を証明する事実がないか探すことです。
今は、インターネットが発達したのでこういうことが自宅で簡単にできるようになりました。しかも、今回はtwitterのフォロワーさんからの情報により、3月10日付のハフィントンポストの記事にいとも簡単にたどり着いてしまいました。
The Trans-Pacific Partnership Would Destroy our National Sovereignty
In his State of the Union address, President Obama declared in his intent to complete negotiations for a Trans-Pacific Partnership (TPP). The Obama administration has pursued the TPP through the offices of U.S. Trade Representative Ron Kirk instead of under the auspices of the Department of State.
This was the first time negotiations to create a free trade zone with Pacific Rim countries were made public although 15 rounds have been concluded.
Eleven nations are participating: Australia, Brunei, Canada, Chile, Malaysia, Mexico, New Zealand, Peru, Singapore, the United States and Vietnam. Although Japan and China are not presently participating in TPP negotiations, "docking provisions" being written into the TPP draft agreement would permit either Japan or China to join the TPP at a later date without suffering any disadvantage.
http://www.huffingtonpost.com/michele-nashhoff/the-transpacific-partne...
(上念によるざっくり翻訳)
〈TPPは国家の主権を侵害しかねない〉
オバマ大統領は一般教書演説で、TPP交渉妥結に向けた意欲を示した。 オバマ政権は、これまで国務省ではなく米通商代表部のロン・カーク氏を通じてにTPPを推し進めてきた。
これはすでに15回の会合を経てきた環太平洋諸国と自由貿易ゾーンを作る初めての交渉であった。(この交渉には)11カ国が参加している:オーストラリア、ブルネイ、カナダ、チリ、マレーシア、メキシコ、ニュージーランド、ペルー、シンガポール、米国、ベトナム。しかし、日本と中国は現在、TPP交渉に参加していない。とはいえ、TPPの協定案に書き込まれる「ドッキング条項」によって日本や中国のどちらも不利益を被ることなく、後日TPPへの参加が可能になるだろう。
ということで、アメリカのいわゆるリベラルな左系メディアの雄、ハフィントンポストはTPPを思いっきり批判しております。
日本や中国が入ってくれば益々アメリカの労働者が仕事を奪われるのではないか、しかも、会社が政府を直接訴える権利を認めるなってトンデモない!と憤慨しております。
ここは面白いのでぜひみなさんでお読みいただき、ハフィントンポストを応援してほしいのですが、今日指摘したいのはその前段です。
この部分をもう一度よく読んでみましょう。
"docking provisions" being written into the TPP draft agreement would permit either Japan or China to join the TPP at a later date without suffering any disadvantage.
TPPの協定案に書き込まれる「ドッキング条項」によって日本や中国のどちらも不利益を被ることなく、後日TPPへの参加が可能になるだろう。
ハフィントンポストの「敵」はグローバル資本主義です。
「敵」はTPPをよりグローバルで包括的な協定にするために、日本や中国に甘い条件を出して交渉に引き込もうとしていると批判している訳です。
でも、ちょっと待って下さい。
このハフィントンポストの指摘は、東京新聞の「特ダネ」と完全に矛盾しているではありませんか!
一体どっちが本当なんでしょう?
ということで、この問題については情報が錯綜し過ぎなので、特に日本のメディアが垂れながす「特ダネ」には要注意です。
これぞまさに危機管理ですね。
というわけで、東京新聞の記事は少なくとも鵜呑みにできないものであることが判明しました(虚報である、とまでは現段階では断定できません)。にもかかわらず、鵜呑みにして文章を書いた自分が迂闊であったことを、ここに反省します。
ただし上記の引用は、TPP交渉参加に反対する理由にはなっても賛成する理由にはなりません。ハフィントンポストが主張するとおり、TPPの本質がグローバル資本主義の世界戦略にあるのだとすれば、それに日本が自分からのこのこと出かけて行って巻き込まれるのはとんでもない、ということなるものと思われるからです。軽挙妄動の最たるものと形容するよりほかはありません。
間違っても、みんなの党や維新の会のようなハードな推進派が主張するように、「自由貿易はとにかくすばらしいのだから、あらゆる悪条件を呑んでもTPPには参加すべき」とはなりませんね。原理主義的な自由貿易推進論者の発言は、私からすれば、常軌を逸しているとしか思えません。彼らは、アダム・スミスを自由貿易論の元祖のように言い募りたがります。しかし、スミスは当時、国富のなんたるかを解しない重商主義への対抗上、自由貿易の肩を持とうとしたのであって、無条件に自由貿易を肯定したわけではありません。国富を増やすかぎりにおいて自由貿易を認めたにすぎないのです。スミスは、いまの自由貿易原理主義者たちとは、その立場を全く異にするのです。彼らは、国富(国益)を犠牲にしても、TPPは自由貿易なのだからとにかく推進すべきである、と言い張っているのです。愚の骨頂であります。
話を戻しましょう。
どう転んでも、TPPがろくでもないものであることに変わりはないようです。実のところ、それが常識になっていない現状が、私にはどこか解せません。TPPのどこがそんなにいいのでしょうか。だれか、教えてくれませんか。
上念司@大門オフィス 3月14日
「東京新聞の報道はウソか、ホントか?」
先週の国会で以下の記事が話題になりました。
〈TPP参加に極秘条件 後発国、再交渉できず〉
環太平洋連携協定(TPP)への交渉参加問題で、二〇一一年十一月に後れて交渉参加を表明したカナダとメキシコが、米国など既に交渉を始めていた九カ国から「交渉を打ち切る権利は九カ国のみにある」「既に現在の参加国間で合意した条文は原則として受け入れ、再交渉は要求できない」などと、極めて不利な追加条件を承諾した上で参加を認められていた。複数の外交関係筋への取材で七日分かった。
www.tokyo-np.co.jp/article/economics/news/CK2013030702000237.ht...
これが事実だとしたら大変なことで、さっそく維新の会の松野頼三議員が予算委員会で質問しました。
〈TPP後発国に不利条件 首相 説明は後ろ向き〉
環太平洋連携協定(TPP)への交渉参加に関連し、後から交渉に参加したカナダとメキシコが著しく不利な交渉条件を求められた問題が、八日の衆院予算委員会で論戦の主要テーマになった。野党側が事実関係の公表を求めたのに対し、安倍晋三首相らは終始、後ろ向きな姿勢。TPPは国民生活を大きく変える可能性のある重要な課題なのに、首相は説明責任を軽視したまま、交渉参加表明に踏み切ろうとしている。(金杉貴雄、関口克己)
www.tokyo-np.co.jp/article/politics/news/CK2013030902000165.htm...
さて、ここで普段からマスコミの謀略報道になれているみなさんは、どのように考えますか?
私が真っ先に考えたのは、どうすればこの情報の裏が取れるかということです。
いちばん簡単なのは海外のメディアや関係機関のサイトを片っ端からチェックして、この東京新聞の「特ダネ」を証明する事実がないか探すことです。
今は、インターネットが発達したのでこういうことが自宅で簡単にできるようになりました。しかも、今回はtwitterのフォロワーさんからの情報により、3月10日付のハフィントンポストの記事にいとも簡単にたどり着いてしまいました。
The Trans-Pacific Partnership Would Destroy our National Sovereignty
In his State of the Union address, President Obama declared in his intent to complete negotiations for a Trans-Pacific Partnership (TPP). The Obama administration has pursued the TPP through the offices of U.S. Trade Representative Ron Kirk instead of under the auspices of the Department of State.
This was the first time negotiations to create a free trade zone with Pacific Rim countries were made public although 15 rounds have been concluded.
Eleven nations are participating: Australia, Brunei, Canada, Chile, Malaysia, Mexico, New Zealand, Peru, Singapore, the United States and Vietnam. Although Japan and China are not presently participating in TPP negotiations, "docking provisions" being written into the TPP draft agreement would permit either Japan or China to join the TPP at a later date without suffering any disadvantage.
http://www.huffingtonpost.com/michele-nashhoff/the-transpacific-partne...
(上念によるざっくり翻訳)
〈TPPは国家の主権を侵害しかねない〉
オバマ大統領は一般教書演説で、TPP交渉妥結に向けた意欲を示した。 オバマ政権は、これまで国務省ではなく米通商代表部のロン・カーク氏を通じてにTPPを推し進めてきた。
これはすでに15回の会合を経てきた環太平洋諸国と自由貿易ゾーンを作る初めての交渉であった。(この交渉には)11カ国が参加している:オーストラリア、ブルネイ、カナダ、チリ、マレーシア、メキシコ、ニュージーランド、ペルー、シンガポール、米国、ベトナム。しかし、日本と中国は現在、TPP交渉に参加していない。とはいえ、TPPの協定案に書き込まれる「ドッキング条項」によって日本や中国のどちらも不利益を被ることなく、後日TPPへの参加が可能になるだろう。
ということで、アメリカのいわゆるリベラルな左系メディアの雄、ハフィントンポストはTPPを思いっきり批判しております。
日本や中国が入ってくれば益々アメリカの労働者が仕事を奪われるのではないか、しかも、会社が政府を直接訴える権利を認めるなってトンデモない!と憤慨しております。
ここは面白いのでぜひみなさんでお読みいただき、ハフィントンポストを応援してほしいのですが、今日指摘したいのはその前段です。
この部分をもう一度よく読んでみましょう。
"docking provisions" being written into the TPP draft agreement would permit either Japan or China to join the TPP at a later date without suffering any disadvantage.
TPPの協定案に書き込まれる「ドッキング条項」によって日本や中国のどちらも不利益を被ることなく、後日TPPへの参加が可能になるだろう。
ハフィントンポストの「敵」はグローバル資本主義です。
「敵」はTPPをよりグローバルで包括的な協定にするために、日本や中国に甘い条件を出して交渉に引き込もうとしていると批判している訳です。
でも、ちょっと待って下さい。
このハフィントンポストの指摘は、東京新聞の「特ダネ」と完全に矛盾しているではありませんか!
一体どっちが本当なんでしょう?
ということで、この問題については情報が錯綜し過ぎなので、特に日本のメディアが垂れながす「特ダネ」には要注意です。
これぞまさに危機管理ですね。
というわけで、東京新聞の記事は少なくとも鵜呑みにできないものであることが判明しました(虚報である、とまでは現段階では断定できません)。にもかかわらず、鵜呑みにして文章を書いた自分が迂闊であったことを、ここに反省します。
ただし上記の引用は、TPP交渉参加に反対する理由にはなっても賛成する理由にはなりません。ハフィントンポストが主張するとおり、TPPの本質がグローバル資本主義の世界戦略にあるのだとすれば、それに日本が自分からのこのこと出かけて行って巻き込まれるのはとんでもない、ということなるものと思われるからです。軽挙妄動の最たるものと形容するよりほかはありません。
間違っても、みんなの党や維新の会のようなハードな推進派が主張するように、「自由貿易はとにかくすばらしいのだから、あらゆる悪条件を呑んでもTPPには参加すべき」とはなりませんね。原理主義的な自由貿易推進論者の発言は、私からすれば、常軌を逸しているとしか思えません。彼らは、アダム・スミスを自由貿易論の元祖のように言い募りたがります。しかし、スミスは当時、国富のなんたるかを解しない重商主義への対抗上、自由貿易の肩を持とうとしたのであって、無条件に自由貿易を肯定したわけではありません。国富を増やすかぎりにおいて自由貿易を認めたにすぎないのです。スミスは、いまの自由貿易原理主義者たちとは、その立場を全く異にするのです。彼らは、国富(国益)を犠牲にしても、TPPは自由貿易なのだからとにかく推進すべきである、と言い張っているのです。愚の骨頂であります。
話を戻しましょう。
どう転んでも、TPPがろくでもないものであることに変わりはないようです。実のところ、それが常識になっていない現状が、私にはどこか解せません。TPPのどこがそんなにいいのでしょうか。だれか、教えてくれませんか。
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