予定通り上記交換会を実施しました。以下、その報告をいたします。
① 担当・美津島:藤井厳喜氏のケンブリッジ・フォーキャスト・レポート2月号の紹介。全体をざっと紹介したうえで、展望〔1〕「消費増税がもたらす大不況と国防危機 リーマンショック級の国際危機に増税を断行する安倍政権の愚行」をやや詳しく紹介しました。
消費と投資は、国民経済の成長を支える2つの柱です。「消費に対するペナルティ」である消費税の税率を上げると、消費は打撃を受けます。そのことを通じて投資も打撃を受けます。結果、国民経済は縮小を余儀なくされます。それをカバーするには、貿易収支の黒字を拡大するよりほかはありません。
ところが国際情勢は、米中経済戦争の長期化とイギリスの合意なきEU離脱突入危機によってリーマンショック級の国際危機を迎えようとしています。つまり、到底輸出増が期待できる状況ではありません。
そのタイミングで消費増税を強行するのは、国家としての自殺行為以外のなにものでもない。
さらには、国民経済の縮小は、対中安全保障の危機をも招くことになる。そういうお話でした。その通りでしょう。
② 担当:村田 北野幸伯(よしのり)氏の『日本の生き筋』(育鵬社)の紹介と問題提起。
本書において北野氏は、まず、いまの日本人が自分を幸せとは感じていなことを客観的なデータを提示することで指摘します。そうしてその根本原因は戦後の日本人を精神的に支えてきた「会社教」の崩壊であるとします。
私見によれば、「会社教」崩壊の根本原因は1997年の「橋本デフレ」に端を発する「失われた20年」である、と思います。またブラック企業の跋扈の根本原因は、「会社教」を支えてきた終身雇用と年功序列が消滅したのにもかかわらず、それらを実現するための、会社への滅私奉公という行動様式だけは残ったことに求められると考えております。つまりブラック企業の跋扈の根本原因は、「会社教」の形骸化である。そう私は考えます。
北野氏は、崩壊した「会社教」の代わりに、日本人を支える新たな価値観として「家族大事主義」を提唱します。そうして、それを実現する具体的で大胆な政策をいくつか提示しそれらを実行することによ って、少子化という民族の大きな危機を乗り越えることを提唱しています。子どもを三人産んだら家が一軒建つくらいの資金援助をするなんて、グッドアイデアだと思います。
国の繁栄を心から願っている、心ある政治家は、少子化こそが実は最大の国家的課題であることを肝に銘じていただきたい(安全保障といっても、民族の存在がなくなれば、意味がありませんものね)。遠慮がちではありますが、村田氏は、そう主張しているように感じられました。むろん、当方、大賛成です。
いうまでもなく、そういう心ある政治家は、真っ先に、緊縮財政と闘わなければなりません。
③ 担当・大村:「東京裁判」
大村氏は、歴史家・西鋭夫(としお)氏に師事し、「東京裁判」の根本的再検討を通じて、戦後日本の本質に迫ろうとしています。氏が「東京裁判」をきちっと語ろうとしたらおそらく膨大な時間が必要となるでしょう。今回は、初めてということもあり、論点のメニューを並べるというスタンスにとどめました。以下、レジュメの小見出しを列挙します。
・西鋭夫教授について
*『国破れてマッカーサー』(中公文庫)の著者です。
・西鋭夫教授を知ったきっかけ
・東京裁判の一般情報
・今回「東京裁判」に関心を持った理由
・東京裁判新論考に入る前の予備知識
・問題提起1:空白の2週間問題(公文書焚書)
・問題提起2:吉田茂と外務省の裏切り問題
・なぜ暗号が解読されたのか?
・問題提起3:奥村勝蔵問題
*奥村勝蔵は、対米宣戦布告書遅滞の張本人です。
・田中隆吉(=「日本のユダ」)裏切り問題
・問題提起4:阿片(あへん)について、および対中阿片密売について
*当時の日本は、世界の阿片生産の90%を占めていたそうです。これには驚きました。
・満州への強い影響力「弐キ参スケ」
*「弐キ参スケ」とは、東條英機・星野直樹・鮎川義介・岸信介・
松岡洋右の名前の末尾を列挙したネーミングです。
・硫黄島/沖縄/台湾は、アジアのコカインの産地
・興亜観音について
*南京事件の責任を取った形で絞首刑に処された松井石根大将が建立したものです。
・「東京裁判」は、戦後日本の起点である。そえゆえ、その実態が事実に基づいて正確に把握されなければならない。
以上、報告まで。
当会は、参加者それぞれのポジションに役立つ情報提供を目指しています。たとえば、株で儲けようとする投資家が、思わず聴き耳を立ててしまうような情報でなければ価値がない。そう考えております。別にお金儲けのための集まり、というわけではありません。健全な功利主義に根ざした集いでありたい。そう思っているだけです。