北海道の中央部に空知郡奈井江町というところがある。
ここに96歳の現役開業医がおられる。方波見康夫(かたばみやすお)さんだ。
25日の北海道新聞に「診療から考える高齢者像」と題してコラムが掲載された。
外来診療をしていて、ちかごろ面白いなと思うのは、96歳の医師が80代や90代、時として100歳を超えた患者さんの診療をしているという構図だ。
この年代のみなさんは、それぞれに病気の苦しみや悩みを抱えながら、その病苦を押してでも外来受診に見えるという、何かしらの人間的なきまじめさをお持ちなのだ。
次いで、小林博北大名誉教授の言葉を引用する。
「社会の成熟化」が食生活をはじめとするさまざまな環境因子の改善を促し、それが持つ圧倒的な力が結果的にわが国の平均寿命の延長、人口高齢化をもたらしたといえる。
そして次のように語る。
最初に紹介した年齢層の患者さんたちはどなたも、この社会の成熟化を醸成させる戦列におのずと位置していた方々だ。そのきまじめさも、成熟化を担う意識的あるいは無意識的の努力のなかでいつしか身につけたものと言えよう。
この巨大とも言える社会の成熟化現象を、戦乱や不見識な政治権力への批判のとりでとしておきたいものだ。
尽きるところがない人間の愚かさに立ち向かう批判と抵抗の精神こそが、先の大戦の反省から生まれた社会の成熟化のほんとうの在りようだと思っている。
96歳にして何とも迫力のある強い言葉ではなかろうか。
人はいくつになっても日々研鑽が必要だと痛感した次第です。