日本経済は2021年1~3月期、前期比−1.3%(年率で−5.1%)と新型コロナウイールスの拡大で再び水面下に沈んだ。
「経済もコロナも」という二兎を追う作戦は完全に失敗した。
それなのに政府は「経済もコロナもオリパラも」という三兎を追う作戦を放棄していない。
社会的共通資本は、大気や森林、河川、土壌などの自然環境と、道路や交通機関、上下水道、電力、ガスなどの社会基盤、そして教育や医療、司法、金融資本などの制度資本から成り立つ。
「人間のための経済学」を追求する学者・宇沢弘文(1928~2014)の主張が、ようやく実行すべき段階に来たのではなかろうか。
「市場原理主義」が行き詰まり、あちこちから悲鳴が聞こえてくる。
宇沢はかねてから「社会的共通資本」を大事にすることが、豊かな経済生活を営み、すぐれた文化を展開し、人間的に魅力ある社会を持続的・安定的に維持することが可能である、と主張していた。
宇沢は医療についても鋭い指摘をしている。
「日本の医療制度の矛盾を一言で言ってしまえば、それは、医療的最適性と経営的最適性の乖離ということです」
「医療を経済に合わせるのではなく、経済を医療に合わせるべきである」
まったくこの主張は正しい。
日本のいま程度のコロナ感染者の数で「医療崩壊」が叫ばれるのは何かおかしい。
自民党と医師会が結びついて「経営的最適性」を追求しすぎたがために、「医療的最適性」が疎かにされてきたということだ。
宇沢は数学から学問の世界に入った。論理重視の人だ。しかしその限界に気が付いて「人間の生の営み重視」の経済学に舵を切ったのだ。
経済学者に必要なのは「クールヘッドにウォームハート」ーー冷静な頭脳と温かい心、とよく言われる。
しかしもっと必要なのは、政治家という国のリーダーになるべき人たちに持ってもらいたいものである。