ミクロネシア 青年海外協力隊環境隊員のブログ

ミクロネシア連邦国において環境分野で活動する青年海外協力隊、シニアボランティアからの報告。コメントお待ちしています。

ヤップ州の衛生的最終処分場の建設-パ-ト4

2012-04-24 12:59:14 | ヤップ州
 浸出水処理設備--パ-ト2(設計者がサモア独立国の最終処分場を参考に設計)

 1.サンドベットフィルタ-装置(Sand Bed Filter)
  * 物理的(砂層・コ-ラル砂等で沈殿物除去)・生物活性法(コ-ラル砂、ココナツハスク層等)
    の両方でフィルタ-効果・有機物の分解をうながす。
    
 2.グラベルフィルタ-チャネル装置(Grabel Filter Channel,礫間接触酸化流路)
  * 砂層・コ-ラル砂・ココナツハスク層を敷きつめて、フィルタ-効果と有機物の分解促進
   (BOD・COD値を下げる)更に、悪臭防止効果も
  * 流路は直線ではなくジグザグ路にすれば短かく出来る、深さは50cmで充分
    
 3.ウエットランド装置
  *アシ・ヨシ類の植物を植えて、リン化合物・窒素化合物を吸収除去する。
    

 排出浸出水の水質管理

 1.通常、数十項目を測定、モニタリングしているが、ヤップ州では、スキル・予算を考慮して
  PH,導電率、COD(BODの代わり)SSについて測定・モニタリングする。
  写真のごとく水質基準を決める

  COD,SSは上記水質基準より厳しく管理基準を設定する
  COD:0~50mg/l,  SS:0~50mg/l
   

2.公共ダンプサイト隣の小川の上流、中流(もっともダンプサイトの近くにあり影響大)、
  下流のPH,導電率,について測定したところ、日本の小川に比べて悪くはありませんでした。
   
 
  尚、大気測定(H2S,Co2,CH4,So2等)はスキル・予算上を考慮して行いません。
    上記、3 装置は前回の散水床装置に比べて効果は劣るので、予算が厳しい場合は
    省略は可能です。

                            次回へ続く
    
 
  

廃棄物管理向上・環境啓発住民集会(コスラエ)

2012-04-23 21:23:13 | コスラエ州
コスラエ州では不法投棄問題が大きな問題となっています。この問題を解決すべく2011年2月にKIRMAスタッフと私でコスラエ州の家庭90件を対象に廃棄物収集システムアンケート調査を実施しました。
(詳しくは「不法投棄現場の一掃に向けて」をご覧ください。)

そしてKIRMAと佐上環境企画調査員とでこの収集システムのアンケート調査の結果を生かし、どう今後コスラエ州の廃棄物収集システムの改善及び不法投棄現場の一掃に繋げていくかという事が話し合われ、各自治体を対象に廃棄物収集システムの向上、廃棄物の減量化を目指した廃棄物分別の促進及びゴミのポイ捨て防止を呼びかける住民集会を開催する事を決定しました。

2011年11月にコスラエ州の4つの村で廃棄物管理向上・環境啓発住民集会を開催しました。
住民集会の活動内容は
① 廃棄物収集システムアンケート調査情報共有
② Lelu自治体廃棄物収集システムの紹介
③ 減量化を目的とした廃棄物分別の促進啓発とごみ缶の適正な使い方
④ ごみのポイ捨て防止啓発活動
⑤ 日本の過去の廃棄物状況を掲載したDVD再生


  
     廃棄物収集システムアンケート調査結果

4つの村の廃棄物処理状況をアンケート調査を行い、その結果をグラフ化して比較したものです。Lelu自治体が最も収集システムが機能しており大きな不法投棄現場も発生しておりません。コスラエ州はまずLeluをモデルとして収集システムの向上、確立させ他の3自治体もこのLeluモデルを少しずつ普及させていくのが現段階で最良の手段であり、このLelu収集モデルを住民の皆さんに紹介しました。この紹介は佐上環境企画調査員とKIRMAスタッフが主に行いました。



              Tofol中央廃棄物処分場で見つかった壊れて使用不能なごみ缶

2010年5月に「草の根無償資金援助計画」の第二期事業で日本側より290個のごみ缶が供与されましたが、たった1年でこのように使えなくなり廃棄物処分場に捨てられていました。この原因として雨が非常に多いコスラエなのでゴミ缶に入り込み錆びやすくなったり、また物をもらい慣れているコスラエアンの悪い習慣から「また日本がすぐにごみ缶をくれる」と考えている人が多いため、この集会でごみ缶の適正な使い方を私がアクションを交えて啓発しました。

ごみのポイ捨て啓発活動に関してはKIRMAスタッフと私で始めた活動がありますが、詳しくは次回のブログで掲載予定です。

過去の日本の過去の廃棄物状況を掲載したDVD再生については大量のごみが川に捨てられている状況にはコスラエアンも驚いていました。



各村での住民集会の様子


思った以上にコスラエの人々が集まりました。環境に意識の高い人々がコスラエにも多いのは事実です。問題なのは環境に対して意識の低い人々です。環境に意識の低い人々をどう変えていくのかが非常に難しい問題です。KIRMAスタッフもこの集会は有意義であったと言っていました。集会開催の意義は大きかったと思います。大切なのはこれからです。今回は私からKIRMAに奨励して実施しましたが、継続性が大事です。「持続可能な廃棄物処理」を構築するのはそう簡単にはいきません。なかなか難しいとは思いますが今回の集会をきっかけにコスラエの人々が少しでも廃棄物処理やごみのポイ捨て抑制に意識が向上していけばと思います。

私の任期は2012年1月をもって終了しました。あと2つ記事を掲載予定です。

平成21年度3次隊 コスラエ州 柏原 庸一


2012年3月 パイロットプロジェクト始動!(チューク)

2012-04-05 10:16:00 | チューク州
こんにちは。新年度となる4月、桜が恋しいチュークから、先月の活動を報告いたします。

1.2012年3月の活動
6日には、サラメンチューク高校より、17名の生徒がやってきました。“Current Issues”(近年の問題)というコースの生徒達で、「どのようにして水が汚染されるのか?」「環境が体に与える影響は?」「ごみ問題にどのように取り組んでいるのか?」など、生活に身近な事柄を熱心に質問してきました。環境問題に関する基本的な質問でしたが英語で答えられない悔しさ。英語での勉強の必要性を痛感しました。



8日は、埋立て場を整備するために公共事業局がローラー(地面を押し固めるための重機)を1年ぶりに稼働させるも、ホースから作動油が漏れて使えず。やはり日ごろのメンテナンスが重要なのですが、スタッフの意識が低すぎです・・・。



20日には、以前に八王子市の清掃事業所で作成していただいたごみ収集車のメンテナンスに関する動画の翻訳が終了。近いうちに公共事業局の職員に見てもらい、一緒にメンテナンスに取り組んでいく予定。こうして日本の清掃職員の姿を繰り返し見せれば、スタッフの意識も大きく変わるはず。ちなみに、ごみ収集車は5月2日にチュークに到着する予定です!それまでに出来ることをやらなければ。

また、今月はお世話になっていた2人の先輩隊員が2年間の任期を終え、日本へと帰国していきました。この小さな島の中でこれまで9カ月間一緒に過ごしてきたのでとても寂しいですが、新隊員も1名加わったため、チューク州計5名のJICAボランティアでこの先も頑張っていきます。




2.パイロットプロジェクト始動!
これまでじっくりと温めていたパイロットプロジェクトが徐々に動き出しています。これは、日本から2台のごみ収集車が寄贈されることをきっかけとして、ごみ収集地域の拡大と合わせ、小さなエリアに数カ月間集中して新たな収集方法を試すとともに、NGOと協働で住民を巻き込んでごみ減量や清掃活動を普及させていこうというもの。そしてこの成功事例を、他の地域に広げていこうと計画しています。
15%ほどの世帯しかごみ収集が出来ていない現状(私の計算)から、2年後には50%へと持っていくことが目標。家の周辺や道の脇、そして海にまで平然とごみが投げ捨てられている現状を少しでも変えることができればと考えています。

また、新たな収集方法としては、収集員がベルを鳴らすことで、住民に自宅からごみを収集車まで持ってきてもらう“ベルコレクション”と呼ばれる方式を試すことになっています。これにより、ごみのステーション(集積所)を設置する必要がなくなる他、家の周りも清潔に保つことができます。基本的には各戸収集となるため、様々な問題が生ずることが想定されますが、それもこのパイロットプロジェクトのなかで解決していこうと考えています。



この写真は、NGOの核となるメンバーとの第一回目ミーティングで、事業の概要を説明しているところ。英語での説明ということもあり緊張でがくがくの私です(笑)。ただ、NGOの方々はとても協力的で、このパイロットプロジェクトの前に行う調査にも積極的に参加してくれることになっています。パイロットプロジェクトを実施するのは5月下旬を予定。それまでにパートナーとなるNGOとタッグを組みながら、細かい部分を詰めていきます。(詳しくは「パイロットプロジェクト始動!」

3.両親のチューク訪問
23~27日の5日間、日本から両親がやってきましたので、チュークガイドをしてきました。まず訪れたのがトノアス島、日本統治時代には夏島と呼ばれていたところで、日本海軍の中心拠点となった場所です。当時は、学校や病院、花街や映画館など何でもあったそうですが、ほとんどの建物が戦後米軍によって壊されたとのことで、今ではその面影はありません。ただ、基地跡や空爆を受けた建物の一部が残っているほか、慰霊碑もあるなど、かつては多くの日本人がいたんだということを実感しました。






また、日本人観光客に大人気のジープ島にも滞在し、のんびりとチュークの美しい海を満喫してもらいました。



最終日の夜には、ホストファミリーとその兄弟が集まりパーティーを開催。母が手料理を振る舞いました。英語が全く話せない両親ですが、そんな中でのホストファミリーとのやり取りは非常に微笑ましく(笑)、2人もチュークをかなり満喫したようです。また、私の生活している状況を実際に見れたことで、安心してもらえたのではないでしょうか。



皆さまもバケーションの際には、チュークにぜひお越しください♪(詳しくは「両親のチューク訪問」


4.この1か月を振り返って 
収集車の到着が2カ月後に迫り、今まで検討してきたプロジェクトをそろそろ正式にスタートしなければということで、これまで心の壁があって話しづらかった局長に思い切って相談。意外にもあっさりと局長が認めてくれたおかげで、NGOとのミーティングにこぎつけることができました。また、これ以降、局長との壁は小さくなり、気軽に相談ができるように。やはり上司とのコミュニケーションは避けてはいけないことを実感。

NGOとはこれまで数回会議を行っていますが、私たちのプロジェクトに対してかなり協力的で、現在作成中のアンケートの配布をお願いしたところ、手間のかかるインタビュー形式でアンケート調査を行うと言ってくれています。このようにプロジェクトは、現地スタッフを交えて良い方向に動き出しましたので、今月はこれと並行し、ごみ収集車を扱う公共事業局に対して、日常点検やメンテナンスの重要性を伝えていこうと考えています。

これまでに分かったことですが、公共事業局では、メンテナンスの意識が非常に低く、「壊れたら直す」といった具合で点検というものをこれまでやったことがないようです。「日本の清掃事業所ではあれだけのことをやっているのに、チュークではなぜこんなことまでできないのか」と思ってしまうことも多々ありますが、様々な環境が原因して今の状態に至っていることも分かってきたので、現地スタッフと一緒になってどうやったら今よりも改善することができるかを考え、それに向けて一緒になって取り組んでいきたいです。
今後どのような展開を見せるのか予想がつきませんが、自分に出来ることをやっていきます。

それではまた報告します。

ヤップ州の衛生的最終処分場(福岡方式)の建設-パ-ト3

2012-04-02 13:46:04 | ヤップ州
 浸出水の処理設備-No1

 1.浸出水貯留池の決め方
  A.容量 a.埋立敷地に外から入る雨量は溝を作り遮断する
      b.埋立敷地内に降る雨量
      c.廃棄物(有機物)の分解より発生する水
      d.覆土層・廃棄物層からの蒸発       等を考慮する。
    この中で、a.を完全に除去出来れば、c. d.は少量なので除外、b.から容量を求めた。
    埋立敷地内に降る100mm/1時間を基準に設計(1年間の降雨量を基準に求めず)
    ヤップは、現ダンプサイトからの浸出水をも考慮したので、大きくした。更に、貯留池の
    容量を大きくすれば、リサイクルポンプの送液量も小さく出来る。結果的に、コスラエ州と
    同じ容積になりました。

  B.構造
    ・堤の勾配 1:1(盛土、切土により異なる)
    ・地下浸透を避けるためIiner(1.5mm厚、LDPE or HDPE)使用
    ・浸出水の流入口--排出口の高低差を10cm以上とる

 2.浸出水の循環ライン設備(散水濾床設備を含む)
   浸出水の水質改善のためにはこの設備が一番効果的、サンドベットフィルタ-+グラベルチャンネル
   +ウエットランド等の組合せ設備に比べて
  A.ポンプ ・総液量・ヘッド圧が重要、維持費も考慮
       ・専門家のアドヴァイスで浸出水貯留池容積とポンプ送液量は反比例
       ・ポンプ種類 水中ポンプ


  B.散水濾床設備
   下写真の様な設備を浸出水貯留池に一番近い排出ガス設備のところに作る



 3.エアレ-ション装置(表面ばっ気装置)
   下写真 浸出水貯留池の浸出水に空気を送り(通気)バクテリアの生育を助けて、有機物の
   分解を促進


                         次回 続く