徒然なるままに ~ Mikako Husselのブログ

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書評:池井戸潤著、『鉄の骨』(講談社文庫)~第31回吉川英治文学新人賞受賞作

2018年02月18日 | 書評ー小説:作者ア行

『鉄の骨』も4年ほど前に読んだ作品ですが、当時のレビューを再発見したので、こちらに転載しておきます。

商品説明

中堅ゼネコン・一松組の若手、富島平太が異動した先は“談合課”と揶揄される、大口公共事業の受注部署だった。今度の地下鉄工事を取らないと、ウチが傾く—技術力を武器に真正面から入札に挑もうとする平太らの前に「談合」の壁が。組織に殉じるか、正義を信じるか。吉川英治文学新人賞に輝いた白熱の人間ドラマ。

感想

『鉄の骨』は一言で言えば建設業界の談合にまつわる話です。この話の面白味は一つの談合の行方、それに関わってる大物政治家を追う警察の謎解きと、登場人物の考えや行動のリアリティでしょうか。分厚い一冊ですがやはり一気読みしてしまいました #^_^

池井戸潤が金融関係以外のビジネス小説を書けると証明した作品の一つ。


書評:池井戸潤著、『七つの会議』(集英社文庫)

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書評:池井戸潤著、『銀行仕置人』(双葉文庫)



書評:池井戸潤著、『銀行仕置人』(双葉文庫)

2018年02月18日 | 書評ー小説:作者ア行

『銀行仕置人』も4年ほど前に読んだ作品ですが、当時のレビューを再発見したので、こちらに転載しておきます。

商品説明

通称“座敷牢”。関東シティ銀行・人事部付、黒部一石の現在の職場だ。五百億円もの巨額融資が焦げ付き、黒部はその責任を一身に負わされた格好で、エリートコースから外された。やがて黒部は、自分を罠に嵌めた一派の存在と、その陰謀に気付く。嘆いていても始まらない。身内の不正を暴くこと—それしか復権への道はない。メガバンクの巨悪にひとり立ち向かう、孤独な復讐劇が始まった。

感想

どの短編も長編小説のためのスケッチという印象が否めません。ストーリーは面白いのですが、登場人物の細やかな心情描写に欠けるため、安易な勧善懲悪ストーリーという印象が強いのが残念です。
池井戸潤はやはり長編を書いたほうがいいと思いました。


書評:池井戸潤著、『七つの会議』(集英社文庫)

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書評:池井戸潤著、『ルーズヴェルト・ゲーム』(講談社文庫)



書評:池井戸潤著、『ルーズヴェルト・ゲーム』(講談社文庫)

2018年02月18日 | 書評ー小説:作者ア行

『ルーズヴェルト・ゲーム』も4年ほど前に読んだ作品ですが、当時のレビューを再発見したので、こちらに転載しておきます。

商品説明

大手ライバル企業に攻勢をかけられ、業績不振にあえぐ青島製作所。リストラが始まり、歴史ある野球部の存続を疑問視する声が上がる。かつての名門チームも、今やエース不在で崩壊寸前。廃部にすればコストは浮くが―社長が、選手が、監督が、技術者が、それぞれの人生とプライドをかけて挑む奇跡の大逆転とは。

感想

この作品は直木賞受賞後の第一作。敗色濃厚なタイミングで一発逆転する爽快感のあるストーリーで、最後までどうなるかハラハラする素晴らしいエンタメです。テーマは不況の煽りを食った企業スポーツ。ここでは野球部。業績不振に伴い、廃部に追い込まれそうになっている野球部に関わる人たちを描く一方、経営陣や銀行、株主の思惑、ライバル企業の策謀など企業ドラマとしての面白さも十分に備えています。
野球に全く興味のない私には作品の魅力をもしかすると十分には味わえていないかも知れませんが…


書評:池井戸潤著、『七つの会議』(集英社文庫)

書評:池井戸潤著、『アキラとあきら』(徳間文庫)

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書評:池井戸潤著、『金融探偵 』(徳間文庫)




書評:池井戸潤著、『金融探偵 』(徳間文庫)

2018年02月18日 | 書評ー小説:作者ア行

『金融探偵 』も4年ほど前に読んだ作品ですが、当時のレビューを再発見したので、こちらに転載しておきます。

商品説明

失業中の元銀行員・大原次郎は、再就職活動中に金融絡みの難題について相談を受けた。これまでの経験と知識を生かし、怪事件を鮮やかに解決していく。出納記録だけの謎めいたノートの持ち主を推理するスリル満点の「誰のノート?」他全七篇。ミステリー連作集。

感想

『金融探偵』はミステリー短編集ですが、連作で銀行倒産の際に僅か100万円の退職金で解雇された元銀行員が主人公。再就職活動中にアパートの大家に金融がらみの問題について相談を受け、これまでの経験と知識を生かして問題解決していきます。大家の娘に金融探偵でもやればと勧められますが、実際に看板を揚げるのはかなり後。就活の合間に相談を受けるというなんともうだつのあがらない男なのだけど、なかなかいい探偵ぶりで面白かったです。名探偵というより迷探偵という感じです。


書評:池井戸潤著、『七つの会議』(集英社文庫)

書評:池井戸潤著、『アキラとあきら』(徳間文庫)

書評:池井戸潤著、『架空通貨』(講談社文庫)~江戸川乱歩賞受賞作品

書評:池井戸潤著、『シャイロックの子供たち』(文春文庫)

書評:池井戸潤著、『かばん屋の相続』(文春文庫)

書評:池井戸潤著、『株価暴落 』(文春文庫)

書評:池井戸潤著、『BT’63 上・下』(講談社文庫)

書評:池井戸潤著、『民王』(文春文庫)



書評:池井戸潤著、『民王』(文春文庫)

2018年02月18日 | 書評ー小説:作者ア行

『民王』も4年ほど前に読んだ作品ですが、当時のレビューを再発見したので、こちらに転載しておきます。

『民王』は池井戸潤にしては異色の政治エンタメです。テロ攻撃として総理とその息子の脳波が入れ替わってしまいます。後にかかった歯医者にチップを埋め込まれたことが判明します。設定はSF的。入れ替わった息子は残念な成績の人で、総理として答弁の原稿にふりがなが振ってなかったために飛んでもない漢字の読み間違いをし、某元首相を思い起こされます。親父の方は息子の代わりに就職活動で、面接をこなすうちにバカ息子が実は熱い正義感を持ってることに気付き、党と自分の利益しか考えなくなっていた自己を反省し、初心に帰ろうと決意するという実に夢のある話です。政治とはいかにあるべきかという理想が奇妙な事件を通して描かれています。痛快政治コメディという触れ込みには、あまり同感できません。むしろ、現実に鑑みて情けなくなってきますね。


書評:池井戸潤著、『七つの会議』(集英社文庫)

書評:池井戸潤著、『アキラとあきら』(徳間文庫)

書評:池井戸潤著、『架空通貨』(講談社文庫)~江戸川乱歩賞受賞作品

書評:池井戸潤著、『シャイロックの子供たち』(文春文庫)

書評:池井戸潤著、『かばん屋の相続』(文春文庫)

書評:池井戸潤著、『株価暴落 』(文春文庫)

書評:池井戸潤著、『BT’63 上・下』(講談社文庫)



書評:池井戸潤著、『BT’63 上・下』(講談社文庫)

2018年02月18日 | 書評ー小説:作者ア行

『BT’63 上・下』も4年ほど前に読んだ作品ですが、当時のレビューを再発見したので、こちらに転載しておきます。

BT‘63。BTはボンネットトラックの略。作品中話題となっているのはBT21号というトラックなのですが、それが活躍した時代が1963年なので表題に63が採用されたと思われます。
精神分裂症を患い、向こう側に行ってしまった主人公が妻に離婚を宣告されるところから始まるストーリーは、SFかファンタジーのようで、池井戸潤の幅広さを感じられる一冊でしょう。主人公は退院後に、父の遺品、運送会社の制服を通して過去を見、自分探しのために、そのかいまみた過去が事実かどうかを検証するために調査し始めます。その過程で父が決して語ることのなかった生きざまを目の当たりにしていきます。ストーリーの重点は過去にありますが、最後は現代の息子の方の問題解決に収束していきます。隠されていた過去が余りにも暗いので、今ひとつすっきりしないというか。逆に考えさせられてしまう暗い系の文学作品のようです。


書評:池井戸潤著、『七つの会議』(集英社文庫)

書評:池井戸潤著、『アキラとあきら』(徳間文庫)

書評:池井戸潤著、『架空通貨』(講談社文庫)~江戸川乱歩賞受賞作品

書評:池井戸潤著、『シャイロックの子供たち』(文春文庫)

書評:池井戸潤著、『かばん屋の相続』(文春文庫)

書評:池井戸潤著、『株価暴落 』(文春文庫)



書評:池井戸潤著、『株価暴落 』(文春文庫)

2018年02月18日 | 書評ー小説:作者ア行

『株価暴落 』も4年ほど前に読んだ作品ですが、当時のレビューを再発見したので、こちらに転載しておきます。

商品説明

巨大スーパー・一風堂を襲った連続爆破事件。企業テロを示唆する犯行声明に株価は暴落、一風堂の巨額支援要請をめぐって、白水銀行審査部の板東は企画部の二戸と対立する。一方、警視庁の野猿刑事にかかったタレコミ電話で犯人と目された男の父は、一風堂の強引な出店で自殺に追いこまれていた。傑作金融エンタテイメント。

感想

『株価暴落』はいいミステリーです。復讐動機のテロの犯人に銀行の問題先送りの隠蔽体質を織り込んだものかと思いきや、意外な結末で、楽しませてもらいました。


書評:池井戸潤著、『七つの会議』(集英社文庫)

書評:池井戸潤著、『アキラとあきら』(徳間文庫)

書評:池井戸潤著、『架空通貨』(講談社文庫)~江戸川乱歩賞受賞作品

書評:池井戸潤著、『シャイロックの子供たち』(文春文庫)

書評:池井戸潤著、『かばん屋の相続』(文春文庫)



書評:池井戸潤著、『かばん屋の相続』(文春文庫)

2018年02月17日 | 書評ー小説:作者ア行

『かばん屋の相続』も4年ほど前に読んだ作品ですが、当時のレビューを再発見したので、こちらに転載しておきます。

商品説明

池上信用金庫に勤める小倉太郎。その取引先「松田かばん」の社長が急逝した。残された二人の兄弟。会社を手伝っていた次男に生前、「相続を放棄しろ」と語り、遺言には会社の株全てを大手銀行に勤めていた長男に譲ると書かれていた。乗り込んできた長男と対峙する小倉太郎。父の想いはどこに?表題作他五編収録。

感想

「かばん屋の相続」は関連性のない表題作他5編の短編が収録されています。そこそこ面白かったけど、短編なので物足りない。腹五分くらいなのにお皿を下げられ、デザートも取り上げられちゃった感じです。
ミステリーとしての純度が低く、かといって人間ドラマの展開、掘り下げは短編なので今一つになってしまっています。


書評:池井戸潤著、『七つの会議』(集英社文庫)

書評:池井戸潤著、『アキラとあきら』(徳間文庫)

書評:池井戸潤著、『架空通貨』(講談社文庫)~江戸川乱歩賞受賞作品

書評:池井戸潤著、『シャイロックの子供たち』(文春文庫)




書評:池井戸潤著、『シャイロックの子供たち』(文春文庫)

2018年02月17日 | 書評ー小説:作者ア行

『シャイロックの子供たち』も4年ほど前に読んだ作品ですが、当時のレビューを再発見したので、こちらに転載しておきます。

商品説明

ある町の銀行の支店で起こった、現金紛失事件。女子行員に疑いがかかるが、別の男が失踪…!?“たたき上げ”の誇り、格差のある社内恋愛、家族への思い、上らない成績…事件の裏に透ける行員たちの人間的葛藤。銀行という組織を通して、普通に働き、普通に暮すことの幸福と困難さに迫った傑作群像劇。

感想

「シャイロックの子供たち」は東京第一銀行長原支店の行員たち各自を主人公にした短編集の体裁なのですが、実は一つの現金紛失事件を皮切りに不正、犯罪がそれぞれの視点から断片的に描き出されてて、その小さなパズルを集めていくと意外なところに辿り着く感じのミステリー。一編ごとに展開される人生ドラマ、家族との絆、あるいは崩壊した家庭と組織の論理に翻弄される普通の人たちの義憤、やるせなさ等がとても細やかに描写され、サラリーマンのための応援歌のようです。


書評:池井戸潤著、『七つの会議』(集英社文庫)

書評:池井戸潤著、『アキラとあきら』(徳間文庫)

書評:池井戸潤著、『架空通貨』(講談社文庫)~江戸川乱歩賞受賞作品



書評:池井戸潤著、『架空通貨』(講談社文庫)~江戸川乱歩賞受賞作品

2018年02月17日 | 書評ー小説:作者ア行

江戸川乱歩賞受賞作品『架空通貨』を読んだのはもう4年近く前になりますが、当時書いたレビューを見つけたのでこちらに転載します。

読後感はあまり良くないですね。破滅の群像みたいで。ストーリーはある女子校生の父の会社が破綻し、娘が何か打開策はないか試行錯誤する過程でクラスの副担任をしている社会の先生に相談することで始まります。この先生は実は元商社マンで、信用調査をしていたので、その当時のコネを生かして真相を確かめ、できれば彼女の父の会社を救おうと努力する、というのが主線。所有している社債を期限前に償還してもらおうと発行元の会社に交渉に行ったら、その会社は企業城下町の頂点をなす企業で、自社の資金調達のために社債以外にも振興券なるものを発行しており、それが地元で闇金として流通して地元経済を狂わせ始めていた、というのがサブ舞台。かなり読み応えあるけど、ハッピーにはなれない (・へ・)
しかし、文学としての完成度は非常に高いと思います。


書評:池井戸潤著、『七つの会議』(集英社文庫)

書評:池井戸潤著、『アキラとあきら』(徳間文庫)