徒然なるままに ~ Mikako Husselのブログ

ドイツ情報、ヨーロッパ旅行記、書評、その他「心にうつりゆくよしなし事」

書評:恩田陸著、『訪問者』(祥伝社文庫)

2018年02月17日 | 書評ー小説:作者ア行

『訪問者』はいかにもミステリー小説らしいストーリー展開です。

舞台は山中の洋館で、急死した映画監督・峠昌彦の親友で顧問弁護士である井上はカメラマンの長田と共に昌彦の遺言を果たすために訪れます。敷地内には湖があり、そこで三年前、昌彦を育てた実業家・朝霞千沙子が不審死を遂げたという。現在その洋館には旧家・朝霞家の人々が住んでいて、館には「訪問者に気をつけろ」という不気味な警告状が届いていました。死んだはずの「大おばちゃま」の姿を見たと主張する少女・愛華。夜に「娘が病気だ」と聞いて突然訪れた愛華の母親。そして嵐の中死体が発見されます。翌日にはもう一人新たな訪問者が来て、嵐で土砂崩れがあり、麓へ降りられないことを伝えます。復旧には2・3日かかるため、彼らは疑心暗鬼のままその洋館に閉じ込められることになります。千沙子が船から湖に落ちたのは事故だったのか、他殺だったのか。昌彦は自分の死を予感して遺言書を井上に預けていたが、本当に殺されたのか、見かけ通り単なる事故だったのか。そして嵐の夜に洋館の屋根から落ちた男は本当に足を滑らせただけだったのか。。。

あとがきによると、著者はきっちりとしたプロットを予め考えていたわけではなく、いわゆる「嵐の山荘」、「クローズド・サークル」、「記憶の中の殺人」、「各章の出だしは同じ文章だが、毎回先の読めない展開」などの目標を立てて、展開に悩み、自分でも先が読めなかったそうです(笑)
ならば読者が先を読めなくても当然ですね。読み進むほど疑問が増えていき、一体どこに辿り着くのか気になって、一気読みしていまいました。

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2018年02月16日 | 書評ー小説:作者ア行

『ブラザー・サン シスター・ムーン』は著者の自伝的小説だそうで、3部プラス予告編プラス特別対談「恩田陸、大学の先輩と語る」が収録されています。

第1部の「あいつと私」の主人公は作家になった楡崎彩音で、作家になるきっかけとなった出来事をいろいろと遠回りしながら振り返ります。ここで語られるきっかけは実話だそうです。

第2部「青い花」の主人公は楡崎彩音の高校時代の同期で、同じ大学に進学し、なんとなく付き合ってたっぽい戸崎衛。高校のころからベースをやっていて、大学のサークルでジャズバンドに入って活躍する話。ここに登場するサークルの先輩のモデルが特別対談のお相手の先輩だそうです。このストーリーにも作者の実体験が色濃く反映されているとか。

第3部「陽のあたる場所」の主人公は楡崎彩音と戸崎衛と同じ高校の同期で、やはり同じ大学に進学し、シネマ研究会でもっぱら「鑑賞班」に属していた箱崎一。彼は卒業後大手証券会社に就職したにもかかわらず、自分で映画を撮り始め、V映画祭のコンペティション部門での出品に招待されたために映画雑誌からインタビューを受けることになります。そのインタビューシーンと彼の回想が交互に語られます。

予告編「糾える縄のごとく」はこの3人が初めて出会い、一緒に行動した学校の課外授業での出来事が描かれています。

三人三様の人生で、繋がっているようで繋がっていない三人の回想録は、実話っぽいドラマの無さで面白いのか面白くないのかよく分からない小説です。読んでいて退屈ということはないですが、小説を読んでいる感じがしませんでした。

特別対談を読んで、この小説の位置づけが分かり、「へえ、そうだったんだ」と納得した次第です。

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2018年02月15日 | 書評ー小説:作者ア行

『ネジの回転 FEBRUARY MOMENT』は二・二六事件と時間遡行を組み合わせたSF小説。時間遡行装置の発明により、過去に介入した国連は、歴史を大きくねじ曲げたことによって、人類絶滅の危機を招いてしまい、その悲惨な未来を回避するために、もう一度、過去を修復してやり直そうとします。その介入ポイントとして選ばれたのが1936年2月26日、東京「二・二六事件」の早朝。史実にかかわる人物3人がその修復の使命を負うことになります。しかし、そのうちの一人である安藤大尉を殺そうとしている「侵入者」またはハッカーが居るらしく、歴史再生と確定という事務作業(?)に一気に不穏さが加わります。

ストーリーは何重もの入れ子構造のように複雑なので、少々疲れますが、文句なしに面白いです。事前にコンピュータ『シンデレラの靴』に読み込まれた史実データとの「不一致」が出るとリセットして、ある時点からやり直しにすることができるという設定も面白いですが、リセットされる際にかかる体への負荷の描写もなかなか臨場感があっていいです。

また、一つのホロコーストをなくそうとしたら100のホロコーストが起こったという国連の歴史介入の失敗例も興味深いですね。国連が二・二六事件に介入する目的が明かされるのはかなり後の方ですが、結局果たされずに史実通りになったという結論は予定調和みたいな感じがします。

もし、タイムマシンがあって過去に遡ってやり直せるのなら、人は自分の過去のどこかの時点に戻って、自分の行動の何かを変えようとすると思いますが、それがもし人類の中でただ一人時間を1回限り遡って歴史を変えることができるとしたら、一体どの時点の何に介入するべきか、と問われたらどうでしょうか?

私は「介入しない」がやはり唯一の正解なのではないかと思います。それを示唆するのが作中の国連の失敗例「一つのホロコーストをなくそうとしたら100のホロコーストが起こった」だと思うのです。

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書評:恩田陸著、『猫と針』(新潮文庫)

2018年02月14日 | 書評ー小説:作者ア行

『猫と針』は小説ではなく、戯曲で、メーキング・オブ的なエピソードも収録されています。話のプロットも何もない時点でタイトルだけ決まり、チラシやチケット見本まで出来上がってきてしまうプレッシャーが描かれてましたが、本当にそのプレッシャーかなり怖いですね。

戯曲の内容は、商品説明を引用しておきましょう。

高校時代の友人が亡くなり、映画研究会の同窓生男女5人が葬式帰りに集まった。小宴がはじまり、四方山話に花が咲くが、どこかぎこちない面々。誰かが席を外すと、残りの仲間は、憶測をめぐらし不在の人物について語り合う。やがて話題は、高校時代の不可解な事件へと及んだ……。15年前の事件の真相とは? そしてこの宴の本当の目的は? 著者が初めて挑んだ密室心理サスペンス劇。

ストーリー展開はいかにも「恩田ミステリー」という感じですが、ほぼセリフのみで構成されているのでやはり小説とは違います。劇の評価は「小説を書く人の劇」なんだそうです。著者もよく分からないと書いてましたが、私もお芝居自体見ないので、その辺はよく分かりません。

お話自体はなかなか面白いと思います。「印象に残る作品か」と聞かれれば、それはちょっと怪しいような気がします。

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2018年02月14日 | 書評ー小説:作者ア行

『酩酊混乱紀行 『恐怖の報酬』日記』は紀行文です。イギリス・アイルランド旅行と国内のビール工場見学ツアーをまとめたものなので「酩酊」がタイトルに入ってます。「恐怖」は著者が言うところの「アレ」(飛行機)に対するものです。

笑ったら気の毒だとは思うのですが、それでも本人が恐怖を克服するためにする様々な言い聞かせや現実逃避の手段などがユーモラスで笑っちゃいます。

旅をして、いろんな風景の中で小説の中のシーンがふっと浮かんで、そのイメージを捉えて「小説」という形にしていくというのが興味深いですね。同じ風景を見ていても、同じものを見ているわけではない。やはり架空の物語を書ける人は違うんだ、と感心しました。

私は文章は下手ではないとは思いますが、基本的に見たこと、聞いたこと、調べたこと以外のことは書けません。他人にとっても面白いフィクションを作り出せるって凄いことですよね。

ビール談義も面白かったです。


三月・理瀬シリーズ

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2018年02月13日 | 書評ー小説:作者ア行

『蛇行する川のほとり』は、作者が感じていた「少女たち」を封じ込めたいと思って書いた小説とのことで、作中でも「正しい少女」とか「少女と女のバランス」とか「すでに死んでいる少女」など並々ならぬ「少女」という存在に対するこだわりが伝わってきます。

演劇祭の舞台装置を描くために高校美術部の先輩・久瀬香澄に彼女の家での夏合宿に誘われた鞠子。香澄の家は蛇行する川のほとりにある「船着き場のある家」としてその地域では知られた建物で、10年前の不幸な事件以降空き家になっていました。その事件とは首を絞められて殺されたらしい女性がボートに乗って下流に流されていたのが発見されたというもので、未解決の事件。その事件が起きた人同じ日に近くの音楽堂で女の子が置きっぱなしになっていた工事のための梯子に上って転落死する事件もありましたが、後者は「事故」として処理されました。

この2つの事件が徐々に解明されて行きます。

第一部「ハルジョオン」は鞠子視点、第二部「ケンタウロス」は香澄の幼馴染・芳野の視点、第三部「サラバンド」は鞠子の親友・真魚子の視点、そして最後の真実を語る終章「hushaby」は香澄の視点で書かれています。

語り手は少女たちだけですが、香澄のいとこで10年前の事件を気にしている月彦と、その友達で転落死した女の子の弟でもある暁臣も香澄の家での夏合宿に参加しており、少女たちに揺さぶりをかける重要な役割を果たします。

「ハルジョオン」は、ここ2・3日に読んだ小説『キャロリング』、『島はぼくらと』にも登場していた春先の野の花ですが、正しくは「ハルジオン」、漢字では春紫苑(春に咲くキク科の紫苑)と書きます。よく似た「ヒメジョオン(姫女菀)」と混同されて「ハルジョオン」と呼ばれることが多いらしいですが、3作連続で「ハルジョオン」にお目にかかるとは思いませんでした。花言葉は「追想の愛」。

花の話はともかく、ストーリーの方は、なんと言うか、少女たちの描写に力が入った「恩田ミステリー」だなと思いました。登場する彼女たちはタイプは違えどみんな美少女。特に香澄は規格外の美少女のようですね。そういう設定がファンタジーがかってる感じがします。たまにそういう子がいることは確かでしょうが、私は実際には見たことありませんし、大部分の少女たちは顔の造形だけで言えば「やや美人」から「やや崩れてる」あたりに収まり、後は性格的なものとか雰囲気とかで「かわいい」、「優しい」、「真面目」とかに分けられるのではないかと思います。男子にチヤホヤされるタイプの子たちは大抵やや派手めで、男子とあまり関わり合いにならない少女たちは「清楚」だったり「地味」だったり。煩わしかったり、怖かったり。

作者は少女時代に自分もまぎれもなく「少女」であったにもかかわらず、その自覚がなく、自分を周りの少女たちとは別物に感じていたらしいですが、それには私も共感します。女子は色んなグループに分かれますが、私はそのどれにもぴったりと収まることがありませんでしたし、また一つのグループに属し続けるために空気を読んで回りに合わせる努力もしませんでした。かといって、確固たる自分の世界を持っていたのかと言えばそうでもなくて、その自分の中途半端さがもどかしかったと記憶してます。

第二部「ケンタウロス」の語り手である芳野は、すでに「絵を描く」という確固たる自分の世界を確立していて、鋭い観察眼で同世代の少女たちを見ているので、非常に興味深いです。

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三月・理瀬シリーズ

書評:恩田陸著、『三月は深き紅の淵を』(講談社文庫)

書評:恩田陸著、『麦の海に沈む果実』(講談社文庫)

書評:恩田陸著、『朝日のようにさわやかに』(新潮文庫)

書評:恩田陸著、『黒と茶の幻想』上・下巻(講談社文庫)

書評:恩田陸著、『黄昏の百合の骨』(講談社文庫)

関根家シリーズ

書評:恩田陸著、『Puzzle』(祥伝社文庫)

書評:恩田陸著、『六番目の小夜子』(新潮文庫)

書評:恩田陸著、『図書室の海』(新潮文庫)

書評:恩田陸著、『象と耳鳴り』(祥伝社文庫)

神原恵弥シリーズ

書評:恩田陸著、『Maze』&『クレオパトラの夢』(双葉文庫)

書評:恩田陸著、『ブラック・ベルベット』(双葉社)

連作

書評:恩田陸著、常野物語3部作『光の帝国』、『蒲公英草紙』、『エンド・ゲーム』(集英社e文庫)

書評:恩田陸著、『夜の底は柔らかな幻』上下 & 『終りなき夜に生れつく』(文春e-book)

学園もの

書評:恩田陸著、『ネバーランド』(集英社文庫)

書評:恩田陸著、『夜のピクニック』(新潮文庫)~第26回吉川英治文学新人賞受賞作品

書評:恩田陸著、『雪月花黙示録』(角川文庫)

劇脚本風・演劇関連

書評:恩田陸著、『チョコレートコスモス』(角川文庫)

書評:恩田陸著、『中庭の出来事』(新潮文庫)~第20回山本周五郎賞受賞作品

書評:恩田陸著、『木曜組曲』(徳間文庫)

書評:恩田陸著、『EPITAPH東京』(朝日文庫)

短編集

書評:恩田陸著、『図書室の海』(新潮文庫)

書評:恩田陸著、『朝日のようにさわやかに』(新潮文庫)

書評:恩田陸著、『私と踊って』(新潮文庫)

その他の小説

書評:恩田陸著、『蜜蜂と遠雷』(幻冬舎単行本)~第156回直木賞受賞作品

書評:恩田陸著、『錆びた太陽』(朝日新聞出版)

書評:恩田陸著、『まひるの月を追いかけて』(文春文庫)

書評:恩田陸著、『ドミノ』(角川文庫)

書評:恩田陸著、『上と外』上・下巻(幻冬舎文庫)

書評:恩田陸著、『きのうの世界』上・下巻(講談社文庫)

書評:恩田陸著、『ネクロポリス』上・下巻(朝日文庫)

書評:恩田陸著、『劫尽童女』(光文社文庫)

書評:恩田陸著、『私の家では何も起こらない』(角川文庫)

書評:恩田陸著、『ユージニア』(角川文庫)

書評:恩田陸著、『不安な童話』(祥伝社文庫)

書評:恩田陸著、『ライオンハート』(新潮文庫)

書評:恩田陸著、『蛇行する川のほとり』(集英社文庫)

書評:恩田陸著、『ネジの回転 FEBRUARY MOMENT』上・下(集英社文庫)

書評:恩田陸著、『ブラザー・サン シスター・ムーン』(河出書房新社)

書評:恩田陸著、『球形の季節』(新潮文庫)

書評:恩田陸著、『夏の名残りの薔薇』(文春文庫)

書評:恩田陸著、『月の裏側』(幻冬舎文庫)

書評:恩田陸著、『夢違』(角川文庫)

書評:恩田陸著、『七月に流れる花』(講談社タイガ)

書評:恩田陸著、『八月は冷たい城』(講談社タイガ)

エッセイ

書評:恩田陸著、『酩酊混乱紀行 『恐怖の報酬』日記』(講談社文庫)

書評:恩田陸著、『小説以外』(新潮文庫)

書評:恩田陸著、『隅の風景』(新潮文庫)

 

書評:辻村深月著、『島はぼくらと』(講談社文庫)

2018年02月13日 | 書評ー小説:作者サ・タ・ナ行

瀬戸内海に浮かぶ冴島を舞台にし、そこからフェリーで本土の高校に通う島で4人きりの同級生・朱里、衣花、源樹、新を主人公にした小説。これが何の賞も受賞していないのが不思議なくらいの読後感さわやかな素晴らしい作品です。青春小説というくくりだけではもったいない、島で生きる人々の逞しさや優しさや懐の深さ、美しい風景とゆったりと流れる時間が情感細やかに描かれていて、思わずそういう島に移住してみたいと思わせてしまうだけの力があります。

いわゆる過疎地ではなく、島の村長が積極的に外からの移住を助成し、特にシングルマザー支援に力を入れているため、子供も増えてきているというなかなか未来のある島です。それでも島の子供たちは本土のフェリーで通える高校に行くのでなければ、中学卒業後に島を出ざるを得ないので、親たちはそれまでの15年間を大切にしているというくだりも素敵ですし、移住者と元からの島民の間や島民同士、移住者同士でも複雑な人間関係があるにせよ、島の子供たちはみんな「うちの子たち」と見なされる共同体意識とか、こういうところで育っていれば自ずと郷土愛というものも生まれるんだろうな、と思える環境です。

そうした島の情景描写と子どもたちの友情や淡い恋心とかばかりでなく、お話の赤い糸はさる有名な脚本家の「幻の脚本」です。ある日この「幻の脚本」を求めて自称作家の怪しげな人物が冴島にやってきます。なかなかの小物ぶりの鼻につくいやな奴だったので、朱里、衣花、源樹、新の4人はこの人を追い出そうと偽の脚本を作って渡します。彼らはそんなものが島にあるわけないと思っていましたが、それが事実で、かなり身近なところにあったことがあとから意外な形で判明します。それがまた興味深いものでした。

老若男女問わずみんなにお勧めしたい1冊ですね。

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書評:辻村深月著、『鍵のない夢を見る』(文春文庫)~第147回(2012上半期)直木賞受賞作

書評:辻村深月著、『かがみの孤城』(ポプラ社)~生きにくさを感じるすべての人に贈る辻村深月の最新刊

書評:辻村深月著、『ツナグ』(新潮文庫)~第32回吉川英治文学新人賞受賞作

書評:辻村深月著、『ハケンアニメ!』(マガジンハウス)

書評:辻村深月著、『盲目的な恋と友情』(新潮文庫)


書評:辻村深月著、『盲目的な恋と友情』(新潮文庫)

2018年02月12日 | 書評ー小説:作者サ・タ・ナ行

『盲目的な恋と友情』は2編構成で、主人公も二人います。第1章は「恋」で、主人公はタカラジェンヌの母をもつ一瀬蘭花(いちのせらんか)。自身の美貌に無自覚で、恋もまだ知らなかった彼女は、大学のオーケストラに指揮者として迎えられた茂実星近(しげみほしちか)と恋に落ち、人生が一変します。彼の裏切りの発覚後も離れられず、彼の指揮者としての将来が絶たれて後は加速度的に泥沼化。

この章は蘭花と茂美以外の男との結婚式から始まりますが、ほとんどのページは茂美との恋愛の描写に費やされています。

第2章は「友情」で、主人公は蘭花の親友・傘沼留利絵(かさぬまるりえ)。有名な画家の娘で、大学オーケストラのコンマスを務め、観劇やクラシック鑑賞など蘭花と芸術方面の話が唯一合う友達ですが、容姿コンプレックスから蘭花のもう一人の親友でどちらかという派手な美波とはあまり折り合いがよくなく、ある事件をきっかけに絶縁します。留利絵は自分が蘭花の一番の親友で、彼女の母親からも信頼されていること、彼女の茂美との恋愛による苦悩を自分だけがそばで支えてあげられることに価値を見出しているような、少々歪んだ精神構造を持っています。

この章もラストは蘭花の結婚式ですが、第1章で描写された部分より後の経緯が書かれています。

なかなか重い話ですが、ぞくぞくしました。

贅沢を言えば、相手方の茂実星近の語りも欲しかったですね。彼自身は、自分の師事する指揮者の妻との関係を実際どう考えていて、蘭花のことはどう思っていたのか興味津々なんですけど。

蘭花の恋愛に溺れている感じ、苦しくても離れられない葛藤もさることながら、留利絵の半端じゃない容姿コンプレックスやトラウマも綿密に描写されていて、鬼気迫る感じすらしました。

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書評:辻村深月著、『鍵のない夢を見る』(文春文庫)~第147回(2012上半期)直木賞受賞作

書評:辻村深月著、『かがみの孤城』(ポプラ社)~生きにくさを感じるすべての人に贈る辻村深月の最新刊

書評:辻村深月著、『ツナグ』(新潮文庫)~第32回吉川英治文学新人賞受賞作

書評:辻村深月著、『ハケンアニメ!』(マガジンハウス)



書評:辻村深月著、『ハケンアニメ!』(マガジンハウス)

2018年02月12日 | 書評ー小説:作者サ・タ・ナ行

『ハケンアニメ!』は辻村深月の初のお仕事小説とのことですが、面白い!タイトルの「ハケン」の意味するところが何なのかしばらく分かりませんでしたが(笑)

とにかくアニメ制作現場に関わる人たちの胃がキリキリ痛むような苦労の末に生み出されるこだわりのアニメ作品にたいする愛がたっぷりと感じられる小説です。

伝説の天才アニメ監督・王子千晴が、9年ぶりに挑む『運命戦線リデルライト』。プロデューサーの有科香屋子が渾身の願いを込めて口説いた作品で、わがまま監督の願いを聞き入れて、脚本家を3人も降板させた末に監督自身が脚本を手掛けると言い出し、その挙句に連絡もなしにいきなり監督がバックレるという何とも胃の痛い状況からストーリは始まりす。同じクールには、期待の新人監督・斎藤瞳と次々にヒットを飛ばすプロデューサー・行城理が組む『サウンドバック 奏の石』もオンエアされ、ハケン(覇権)をとるのは、はたしてどっち?そして、両作品に関わる「神原画」ともてはやされるアニメーター並澤和奈と聖地巡礼で観光の活性化を期待する公務員・宗森周平とのちぐはぐなやり取り。

章ごとに主人公が交替する連作になってます。どれも面白いですが、特にアニメーター並澤和奈が自分の殻に閉じこもった純オタクから聖地巡礼の仕事で「リア充」の宗森周平と関わっていく中で徐々に視野を広げて認識を改めていく成長過程と、人から初めて「かわいい」と言われたことでオタク女子のねじれた劣等感が氷解するシーンがすごくいいなと思いました。

過酷な現場で薄給。アニメーターが食っていけないのは有名です。だからこそ、好きじゃなきゃやってられない、良くも悪くも「愛」のある人たちしかいない業界なんだろうなと思います。

私はアニメは作品「だけ」を楽しむタイプで、キャラクターグッズやらフィギュアやらの世界はノータッチなんで、制作側にとっては全然ありがたくないファンですね(笑)

この小説の中で作成されるような「魔法少女もの」や「ロボット」ものは全然見てないですが。。。

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書評:辻村深月著、『鍵のない夢を見る』(文春文庫)~第147回(2012上半期)直木賞受賞作

書評:辻村深月著、『かがみの孤城』(ポプラ社)~生きにくさを感じるすべての人に贈る辻村深月の最新刊

書評:辻村深月著、『ツナグ』(新潮文庫)~第32回吉川英治文学新人賞受賞作



書評:有川浩著、『キャロリング』(幻冬舎文庫)

2018年02月10日 | 書評ー小説:作者ア行

ここ何日か仕事で根を詰めていて、プライベートな時間が犠牲になっていた反動で、今日は思いっきり読書三昧しました。

久々に有川浩の文庫が出たので、早速購入した『キャロリング』。

「クリスマスに倒産が決まった子供服メーカーの社員・大和俊介。同僚で元恋人の柊子に秘かな思いを残していた。そんな二人を頼ってきたのは、会社に併設された学童に通う小学生の航平。両親の離婚を止めたいという航平の願いを叶えるため、彼らは別居中の航平の父親を訪ねることに――。逆境でもたらされる、ささやかな奇跡の連鎖を描く感動の物語。」

と背表紙の粗筋を読んで、こじれた恋愛関係と、両親の離婚の危機に直面している傷ついた少年を絡めたお話しなんだろうと思って、読みだした最初の一行でびっくりしました。

「こちらを向いた銃口にはまるで現実感がなかった。」

プロローグは不穏に始まり、「大和俊介、享年三十二――墓碑銘どうする?男は思いつくまで待つつもりはないようだった。」と不穏に終わります。

なんで子供服メーカーのしがない社員でヘタレな恋愛を見せてくれるはずの主人公がいきなり物騒な銃口を向けられる羽目になっているのか、ミステリータッチで始まる物語は、全然ミステリーでなく、いろんな立場の人たちのいろいろな生い立ちや思いを描く、「根っからの悪人はいない」的なお話しでした。

大和俊介の不幸な生い立ちや不器用なキャラと両親の別居でどちらか一方の味方になることを迫られる航平の絡みや、トラウマゆえに柊子とすれ違って別れてしまったこととか、航平の両親のやり取りとか、その辺は実にうまく描写されていて、説得力があるのですが、航平の父の勤め先である整骨院の院長のところに借金の取り立てに来るチンピラが実は気弱な使えない奴らで、とかその上司である「赤木ファイナンス」社長の選択肢のない気の毒な生い立ちとか、その辺は「どうかな」と疑問が残る感じです。少しご都合主義的なキャラ設定のような印象がなくもないような気がします。身内に義理堅く優しいやーさんが居ることは別に否定しませんし、森本梢子の「ごくせん」に出て来るような年端も行かない子供のうちに親に捨てられて、たまたまやくざに拾われたのでそのままその世界に入った、みたいな生い立ちも無くはないのかもしれません。でも、他人を陥れたり傷めつけたりしてお金を稼ぐような生業は、自己都合を優先し、他人に対する共感力にどこか欠けている人でないと続けられるものではないんじゃないでしょうか。なので、「赤城ファイナンス」の面々の行動が説得力あるようなないような、どちらかというとない方に振り子が揺れるような気がして、それゆえに物語に素直に感動できないように思えました。いろんな泣けるシーンはあるのですけど、ストーリー全体を振り返ると、「でも」というひっかかりが残ってしまう気がしました。それがちょっと残念でしたね。

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書評:有川浩著、『レインツリーの国 World of Delight』(角川文庫)

書評:有川浩著、『ストーリー・セラー』(幻冬舎文庫)

書評:有川浩著、自衛隊3部作『塩の街』、『空の中』、『海の底』(角川文庫)

書評:有川浩著、『クジラの彼』(角川文庫)

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書評:有川浩著、『県庁おもてなし課』(角川文庫)

書評:有川浩著、『空飛ぶ広報室』(幻冬舎文庫)

書評:有川浩著、『阪急電車』(幻冬舎文庫)

書評:有川浩著、『三匹のおっさん』(文春文庫)&『三匹のおっさん ふたたび』(講談社文庫)

書評:有川浩著、『ヒア・カムズ・ザ・サン』(新潮文庫)

書評:有川浩著、『シアター!』&『シアター!2』(メディアワークス文庫)

書評:有川浩著、『キケン』(新潮文庫)

書評:有川浩著、『フリーター、家を買う』(幻冬舎文庫)

書評:有川浩著、『旅猫リポート』(講談社文庫)