前回の記事『妙顕寺』に続き、この春の「まるごと美術館」の妙蓮寺へ。妙蓮寺は、堀川通を挟んで、妙顕寺のちょうど反対側辺りにある。
塀の右側に「まるごと美術館」の幟。
本堂向かって右手前にある桜は御会式櫻という。10月13日(日蓮の入滅日)頃から咲き始め、春に満開になるという桜で、俳句で冬の季語でもあるらしい。
枝に括りつけられた注意書きには、「枝からもぎ取らないで」「散った花弁を持ち帰る」とある。花弁を持ち帰ると恋愛が成就するという言い伝えがあるらしいが、不心得者がよほど多かったのだろう。桜の木がかわいそうだ。
御会式櫻は奥書院に面した十六羅漢の石庭にも植えられている。
北山杉と御会式櫻を背景にした石庭。きちんと整えられた植栽が清々しい。枝先しか写っていないが、庭に向かって左手には、モチノキが植わっていた。この庭には不釣り合いな気がして、初めから植えられていたのかどうか気になる。
妙蓮寺では、本堂を抜けて奥書院手前の外庭脇の廊下突き当りから、森島善則氏の写真が展示されていた。見に行って良かった。撮影自由だったので写してみたが、実物はもっとずっといい色である。
ご本人のHPで見た方がいい。
unreality flows ► Yoshinori Morishima
なんだろう、アクリル絵の具のフルイドアートかな?と思いながら数点見ていると、解説ボランティアの方が「写真なんですよ」と声をかけてきた。特にカラフルな作品のひとつは、道頓堀川を撮ったものなのだそうだ。川の水面にゆらめく色彩を写真に収めるとこんな風になるなんて。
「写真には合成や加工は加えず、『光の反射する水面』を切り取った写真作品」と展示会案内にあった。
別の作家の屏風も迫力があって、お寺という空間にぴったり。
奥書院には四季の襖絵があり、「冬の川」は銀箔の襖に白い鷺が描かれていた。
この襖の裏側は「秋の山」。金箔の襖に紅葉、薄、秋の花と満月である。
「春の野」は、銀箔の襖に鹿。
春の裏側は「夏の池」で杜若が八つ橋と共に描かれている。そこは床の間と違い棚を有する最も広い部屋で、東の襖には睡蓮が描かれていた。
春夏秋冬いずれもすっきりとした襖絵。ただし、長谷川等伯の襖絵は収蔵庫にあり、見ることはできなかった。収蔵庫の拝観は、毎月1日のみ(要予約)。また、水曜日は拝観休止である。
上の写真は、白い木蓮の庭。
これは、妙蓮寺椿。お茶席に人気の品種らしい。椿の見ごろは12月~2月頃か。もう花は終わりかけだ。
妙蓮寺椿のある奥書院の入り口右手には、紫木蓮がきれいに咲いている(写真では見づらいが)。
鐘楼は美しい姿をしている。横に藤棚があるので、5月頃に来るのもいい。
お天気は良かったのに、妙顕寺同様、拝観の人数は少なかった。八重桜、枝垂桜、ソメイヨシノもまだ咲いておらず、お庭はきれいに整っているが少し寂しいかもしれない。4月7日の展覧会終了までに華やかになるかどうかわからないが、桜はなくても、写真作品に興味のある方はぜひ。
寺名に聞き覚えがあるし、本堂前の様子に見覚えがある……調べてみると、2014年5月に記事を書いていた。
妙蓮寺 - 京都逍遥 (goo.ne.jp)