JR京都駅から嵯峨野線(山陰線)で2駅、丹波口駅東西に、中央卸売市場がある。HPには「中央市場内に開設された」とあるが、市場内というよりは市場の敷地内のビルに、とした方がわかりやすいかもしれない。西側の最北に新築されたビルの一室が展示場となっている。
(12月12日追記:平成24年11月竣工 京都青果センター seikacenterpamphlet.pdf)
京野菜、京菓子、京料理、京の酒、調理道具、行事・儀礼食などの展示(パネルと食品サンプル)をはじめ、映像による行事食の説明や、だしの試飲コーナー、食に関する書籍コーナー、お土産コーナーなどがある。調理室、試食室もあるが、こちらは有料のイベントに使用されるようだ。
☆冬の京ブランド産品パネル
京のブランド産品については館内にリーフレットがあり、詳しく知ることができる。
☆冬の京野菜サンプル
☆京菓子食品サンプル☆京菓子パネル
展示品のガラスケースは通常のガラスを使用しているため、撮影時は反射してしまう。こういった場所では、映り込みを抑える低反射ガラスを使用してくれたら見やすいのに、と思う。
☆12月の行事食パネルとサンプル
☆12月のおばんざいパネル
以前、京都では「おばんざい」という言葉を使用しなかった、とパネル解説にある。これは、料理展示および解説を監修された杉本家9代目次女である料理研究家HPに詳しい。現在のように使われるようになったのは「ここ半世紀ぐらいのこと」であるらしい。
「江戸時代に生まれた言葉」としているHP(七味屋本舗)も見られる。生まれたかどうか明らかではないが、前出の杉本氏HPによれば、『年中番菜録』(嘉永2年)という料理書に掲載された「番菜」という言葉を、昭和39年以降、随筆家・料理研究家の大村しげ氏らが使用するようになって広まった、とある。
国書データベース(年中番菜録)
「一.番菜は日用の……此の書を……まわりに置き番菜の種本と心得…… 一.此の書大てい四季の序(ついで)……といへどもばんざいはかならずしも……抱(かかわ)るべからず されど殊に時候ならざるものは献立の部にわけて記せり 折ふし到来の品ありたる時……番菜の例に見ならひ……べし 一. さしかかり来客ある時は随分番菜を取りつくろひもてなすにてよろし……精進の番菜は上品になり魚るいの番菜は下品になりやすきものなり 此の心をよくよくわきまふべし…… 一.家々の風儀により……嫁入したる女などは日用番ざいにいたるまでその家の風の料理にしたがひ…… 嘉永貳早春日」(『年中番菜録』附言)
(*翻刻文がないため、自信はないが読んでみた。また、データベースの元本には虫食いも多く文字欠損がある)
「番菜」「番ざい」「ばんざい」の表現が見られる。
引用したものは冒頭の「附言」であるが、このあと「番菜目録」として「四季青物之部」「四季通用之部」「生肴之部」「塩物之部」「干物之部」と続く。
「四季青物之部」では「若菜 水菜 嫁菜 蒲公英……」とあり、タンポポが常のおかずであったことを知る。47種の青物の後に「糟入り納豆汁」という項目が続くのも意外である。
「四季通用之部」においては「干大根、切干大根、干蕪……氷蒟蒻」とあり、私は見たことのない干し大根や干し蕪、氷蒟蒻に興味がわく。19種の後に「薯蕷(とろろ)汁」の項目がある。
「生肴之部」は「蛤、蜆……生海鼠、昼網の類」の25種。昼網とは、検索したところ、当日揚がった魚のことであるらしい。
「塩物之部」では「鯛、鰤、身鯨、皮鯨……鱪」の10種。鯨を塩漬けにしていたとは。
「干物之部」は「鰷、■(=鯼あるいは魚偏に愛)、鰺……鯡(にしん)、目刺の類」の15種。■が鯼ならイシモチ、魚偏に愛ならムツのようだ。
目録からわかるように、番菜に、肉・卵は含まれていない。
子細に読み込むと面白いだろうと思われるが、そこまでの力量はなく、残念。
ただ、ざっと見たところ「ばんさい」「ばんざい」は京都独自のものとは書いていない。今「京のおばんざい」という言葉で通っているのが不思議と言えば不思議である。
☆おばんざいサンプルとレシピ
上の写真のように、サンプルがいくつか並べられ、配布用のレシピも準備されている。
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