午前6時に王さんは寮を去っていった。
この時間帯に寮に待機しているスタッフは夜勤明けの警備のおじさんのみである。
今朝、日報を見ると氏名と時間、退館と要点だけが記入されていた。
日本を去る人達の胸中は色々なのだろうけれど、寮の記録では氏名、時間、そして退館の文字が、一行残るのみだ。
昨日のことである。
窓口のガラス戸から、王さんが工具を借りに来たのが見えた。外で自転車の調整をしているらしい。暫くして館内に戻ってくると次は電気と水道の清算。担当者が応対している。暫くかかりそうな雰囲気だったので、李さんに携帯で電話をしてみた。5コール目で、李さんの声。王さんにそのまま、携帯を渡した。「李さんからです。」「あ、はい。王です。」日本語から弾んだ中国語に変わる。そして、声の大きさを配慮してか、王さん事務室の外の通路へ出て行った。「○○○○ 你忙吗?○○○○○」記憶している言葉だけが意味として響いてくる。
「これから、来るといっています。どれくらいかかるかわからないけど、部屋で待ちます。」と王さん。
ものの20分そこらで、李さんが現れた。王さんにとっては7年ぶり、私にとっても、6年ぶり。しかし昨日会ったばかりのようだ。全く違和感がない。
「研修生は見つかったんですか?」「いやーダメでした。どうも、東京に逃げたようです。倒産というアクシデントで不安なのは分かるんですが、新しい研修先も決まっていたし。まったく、そんなことをする必要など全くないのに。」と昔と変わらず、李さん何事を話しても穏やかである。
「では、部屋で少し話します。」と二人はエレベーターホールに去っていった。積もる話もあるだろう。7年ぶりだし。すると、20分も経たない内に王さんが現れた。ホールに出て話をした。「李さん港に行かなければならない仕事があるので、先ほど帰りました。私も、明日は朝早いのでここでお別れをしておきます。」
「いろいろありがとうございます。とても素晴らしい詰め込み力でした。」えらく単刀直入な感想を述べてしまった。「私も日本語を色々学べて楽しかったです。」と王さん。で、続けて「太謝謝您了。」永久の別れになるやもしれんからちゃんと頭に中国語残っているところを見せつけなくては。人称に敬語を使い発音も意識して中国語らしく言ってみた。
王さん中国語で返す。「没事儿。明年我再来。秋天左右。」
????míng nián wŏ zài lái qiū tiān zuŏ yòu ミンニィエン??ッてつぎのニィエンって何んにゃ?
察したのか王さん日本語に戻る。「来年、また来ます。秋ごろ。」
うおー、が、学習を続けなければ。はじめたからにはもう少しましにならねば。1年半あったら、成長した所を見せなくては。
そう思わせるあたり、やはり、流石筋金入りの教授なのである。
「再見。」といって別れた。文字通り再び見ることがありそう。
この時間帯に寮に待機しているスタッフは夜勤明けの警備のおじさんのみである。
今朝、日報を見ると氏名と時間、退館と要点だけが記入されていた。
日本を去る人達の胸中は色々なのだろうけれど、寮の記録では氏名、時間、そして退館の文字が、一行残るのみだ。
昨日のことである。
窓口のガラス戸から、王さんが工具を借りに来たのが見えた。外で自転車の調整をしているらしい。暫くして館内に戻ってくると次は電気と水道の清算。担当者が応対している。暫くかかりそうな雰囲気だったので、李さんに携帯で電話をしてみた。5コール目で、李さんの声。王さんにそのまま、携帯を渡した。「李さんからです。」「あ、はい。王です。」日本語から弾んだ中国語に変わる。そして、声の大きさを配慮してか、王さん事務室の外の通路へ出て行った。「○○○○ 你忙吗?○○○○○」記憶している言葉だけが意味として響いてくる。
「これから、来るといっています。どれくらいかかるかわからないけど、部屋で待ちます。」と王さん。
ものの20分そこらで、李さんが現れた。王さんにとっては7年ぶり、私にとっても、6年ぶり。しかし昨日会ったばかりのようだ。全く違和感がない。
「研修生は見つかったんですか?」「いやーダメでした。どうも、東京に逃げたようです。倒産というアクシデントで不安なのは分かるんですが、新しい研修先も決まっていたし。まったく、そんなことをする必要など全くないのに。」と昔と変わらず、李さん何事を話しても穏やかである。
「では、部屋で少し話します。」と二人はエレベーターホールに去っていった。積もる話もあるだろう。7年ぶりだし。すると、20分も経たない内に王さんが現れた。ホールに出て話をした。「李さん港に行かなければならない仕事があるので、先ほど帰りました。私も、明日は朝早いのでここでお別れをしておきます。」
「いろいろありがとうございます。とても素晴らしい詰め込み力でした。」えらく単刀直入な感想を述べてしまった。「私も日本語を色々学べて楽しかったです。」と王さん。で、続けて「太謝謝您了。」永久の別れになるやもしれんからちゃんと頭に中国語残っているところを見せつけなくては。人称に敬語を使い発音も意識して中国語らしく言ってみた。
王さん中国語で返す。「没事儿。明年我再来。秋天左右。」
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察したのか王さん日本語に戻る。「来年、また来ます。秋ごろ。」
うおー、が、学習を続けなければ。はじめたからにはもう少しましにならねば。1年半あったら、成長した所を見せなくては。
そう思わせるあたり、やはり、流石筋金入りの教授なのである。
「再見。」といって別れた。文字通り再び見ることがありそう。