異文化異聞記

異文化に絡んだつれづれをつづる記録。

漢語雑感

2009-03-03 21:21:58 | Weblog
漢字は、字体が違うとはいえ現在、中国本土、台湾、日本で使われていて、また、かつては韓国、ベトナムでも使われていた。

韓国の漢字使用は知っていたけれど、ベトナムの方は知り合いサイトウ(中国語中級者、中国麻雀の達人)が王さんの講座に一見さんで出席し指摘するまで知らないでいた。自分の属する文化圏に関しての好奇心の無さは我ながら呆れる。知識レベルが小学校低学年に等しい (気のきいた子は幸運に恵まれれば4年生くらいで気が付くかもしれない)。 
で、WiKiに訊いてみた。

~中国の支配を受けていたため、ベトナムの古典や歴史的な記録の多くは漢文で書かれている。現代語をみても、辞書に載っている単語の 70% 以上が漢字語であり、漢字表記が可能である。対応する漢字が無い語については、古壮字などと同じく、漢字を応用した独自の文字チュノム(字喃)を作り、漢字と交ぜ書きをすることが行われた。しかし1919年の科挙廃止、1945年の阮朝滅亡とベトナム民主共和国の成立などをへて漢字やチュノムは一般には使用されなくなった。~

漢字を応用して独自の文字を作ったのは日本だけではない。なんで、こんなありがちなことを考えたことがないのか自分でも不思議だ。漢字の表す概念をこの広大なアジア圏が共有していた時代が確実にあったという事実。ヨーロッパの国々が、ギリシャ語とラテン語ベースの言葉の概念を共有しているのと理屈はあまり変わらない。発音は各国語で様々で書き文字でしか認識できないことだが、今や我々は書き文字ですらそれを共有できない。

今、韓国はハングル、ベトナムはローマ字表記「クォックグー(Quốc ngữ)国語」を文字として使っているので、若い世代が漢字で書いてある文書を読むには特別な訓練を受けないと無理になっているそうだ。サイトウは文化が全て継承されるわけではなく、伝えられないものの方が多いこと。途絶えてしまったものは忘却されること。必ずしも優れたものが残る訳ではないことをその日、王さんに話していた。

書き言葉を変えて20年もすれば歴史を教えないのと同じことが起こること。豊富な資料があったとしても、専門家しか読めなくなっているから、普通の人の興味には上らず一般教養としては共有されないこと。旧字を読める世代が亡くなってしまうと、民族全体からその教養が失われること。知識を伝えるにはそれを難なく理解することのできる人口の厚みが必要であるといった内容を王さんはサイトウに返していた。

6声あるベトナム語の音声はお手上げだが、Quốc ngữが国語と漢語表記されていれば日本人の私が、意味を理解できる。韓国もベトナムも大陸で常に中国の覇権を意識しなければならなかったため、独自の文字で独立を守ろうとしたのだろう。たまたま海で遮られ安穏と漢字を使い続けてこられた日本。漢字が大昔、中国から来て、そこから変形してカナとかなを作ったということを中国語を習い出すまで忘却していたこの鈍さ。手の届く近さになければ知識は姿を潜めるという実例みたいである。それも1世代でやってのけているのだ。オソロシイ。



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