サヨナラ チュニ君 ２

震災以降お休みだったアラビア語の授業が6月に再開し2回目の日曜日。
教室として使われているセミナー室Aを出て出口に向かうと、カウンターの受付係ナナちゃんに呼び止められた。

「チュニ君、来週の木曜日に成田に行って、金曜日に出発だそうです。」
「えっ！自分からその話して来たんですか？」
「いえ、久しぶりにメールしたらそういう返事が。びっくりしました。」

この20代女子は、チュニ君とは5年来の付き合いである。渡日の早い段階でチュニ君は自治体のホームスティで彼女の家に滞在したことがあるそうで、いわゆる家族ぐるみの付き合いをしている。

「この間、就活用健康診断書を連休前の4月28日に5月2日がデッドラインと言われイラッときました。前の日の昼休みに会う約束をしていたのですが、当日向こうが遅刻して会えず順延していたし。」なぜか、保護者に文句を言っているような気分になってきた。
「昼休み？」
「同じ敷地にクリニックと職場があるので。30分だけなら付き合えると思って。」
「30分！！！！大変だったでしょう。時間かかるから。」
「発狂しそうでしたよ。診断書が3か月以内のものって、その時、聞いたんですよ。クリニックでは一斉診断のコピーしか出せないってメールをあらかじめしていたのに、読んでいないし。」
「多分読んでいないんじゃなく、どうにかなるんでしょうね。母国だったら。」
「結局ほかの大学のクリニックでカナダ人の先生からフランス語の診断書を当日発行してもらったようですが。最初からそこへ行けよっていうか。効率が悪いっていうか。イラッときました。」

「ほんとに独特ですよね。かなり不思議ちゃん※かな。でも、銀行で働いていたんですよね。」
「？？？？？？？銀行？？？？？？？？」

※http://ja.wikipedia.org/wiki/%E4%B8%8D%E6%80%9D%E8%AD%B0%E3%81%A1%E3%82%83%E3%82%93

「・・・・確かにCentral Bankで働いていたと聞いたことがあって・・・そのとき私も三井住友りそな中央銀行みたいなのを、一瞬思い浮かべましたけど・・・・・。」
「銀行員だったんですよね？」
「中央銀行って金利を上げたり下げたり、通貨量をコントロールしたりする政府機関ですよね。日銀とかFRBみたいな。だから官僚だったのではと思います。」
「えっつ！銀行員じゃなかったの？なんで、そんな確実な仕事を辞めて日本に来たのかしら？そのまま、働いていたほうがお金がもうかったんじゃないでしょうか？」

す、すごい。5年間誤解してたみたい。そういえば、意味の分からない計算式がごちゃごちゃしたノートに「私は銀行員です。」と走り書きがしてあったのを見たことがあるなぁ。誰かが勘違いして教えたのがそのままになったのか。。。。