走るナースプラクティショナー ~診断も治療もできる資格を持ち診療所の他に診療移動車に乗って街を走り診療しています~

カナダ、BC州でメンタルヘルス、薬物依存、ホームレス、貧困層の方々を診療しています。登場人物は全て仮名です。

ダブルエマージェンシー

2020年06月14日 | 仕事
パンデミック宣言がされて以来、3ヶ月連続で違法麻薬によるオーバードース(OD)の死亡者が激増しました。要因は2つあるとされています。

1つ目は高容量(高濃度と言った方が良い?)の麻薬が出回っている。いつもと同じ純正度と思って使用して死亡するケース。きちんとした工場で基準を守って作られる製薬会社製造の薬品と異なり、計量もまばら、目計りで混ぜる違法薬はばらつきがあります。そして今出回っているものには麻薬だけではなくベンゾ系も混ぜ込んでいます。使用しているものは痛みから解放され眠りにつく感がありますが、同時に呼吸停止による死亡確率も上がると言うわけです。

2つ目はステイホームで孤立していること。死亡しているのはホームレスの人だけではありません。普通の学生や会社員だってリクリエーション的に使用しています。薬物依存は病気です。しかし社会の目を避けて隠そうとする人。そのような人たちがステイホームで孤立し、孤独感から使用する回数が増える。そして死亡。ODを起こさないように使用するとき、お互いに監視し合うと言う手があります。効きすぎて呼吸抑制が起こっている事がわかれば、ナロキソン(麻薬の拮抗薬)を使ってリバースすれば良いのです。しかしステイホームのおかげでそのようなバディをなくしているから、死亡率が上がる。だから先日紹介したようなアプリが重要になります。

私も患者2人を亡くし、1人はICUで数日滞在して一命を取り止めました。

これらを避ける為にOATの他に違法ではない製薬会社で作られたモルヒネやヒドロモルヒネを処方する策もパンデミック以来行っています。私も数人に処方しています。しかし処方する側も処方される側も障壁が高いようです。

先日の記者会見でボニー博士の涙声は印象的でした。州の長として2016年のODの緊急事態宣言以来力を入れてきた分野だとわかりました。コロナのパンデミック以前はOD数も徐々に減り良い方向へ向いていたので尚更です。私の大切な患者層の一つ、薬物依存者。彼らの健康向上を目指して気持ち新たに挑んで行きたいと思います。


最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。