走るナースプラクティショナー ~診断も治療もできる資格を持ち診療所の他に診療移動車に乗って街を走り診療しています~

カナダ、BC州でメンタルヘルス、薬物依存、ホームレス、貧困層の方々を診療しています。登場人物は全て仮名です。

日本版 ナースプラクティショナーの目的

2023年04月02日 | 仕事

昨日の続き


私はブログの中で「アクセス」を頻回に使います。医療は国民のためにあり、医療へのアクセスは平等でなくてはなりません。しかし実際、医療偏在と言われるように患者千人あたりの医療機関の数、医師の数、看護師の数は都市部では高く、過疎地では低い。過疎地に住んでいるから医療へのアクセスがない、低い。このような状況を地域格差と呼びます。これを是正するためにBC州ではNP制度ができました。


カナダはイギリスと同じく家庭医制度の医療なので、家庭医を持っていないと専門医へのアクセスが難しくなります。緊急医療の利用率も上がります。家庭医の数も地域格差があります。それを補うためにNP制度ができました。


先程平等と言う視点で二例示しました。次は公平と言う視点です。システム(社会構造)はマジョリティー(大多数)のために作られています。日本で人種のマジョリティーは日本人、日本語を使える人。日本人以外の人(移民者、訪問者)には不都合が多い。医療へのアクセスも然り。このような状態を人種によって医療へのアクセスが限られている、つまり公平性に欠ける医療と呼びます。人種だけではありません。所得や教育や職業(まだまだあります。このような因子を健康に与える社会的因子と呼びます)で、アクセスできる医療が制限されます。診療費が払えないから医者にかからない、と言う人がそれにあたります。


カナダは無料の医療費だからそれはないでしょ?と思うかもしれません。しかし医師にかかるために使うバスのバス賃がないから医師にかからない人もいます。昨今はこの公平性によるアクセス障害を是正することに医療先進国は力を入れています。カナダでは医師の圧倒的な数の少なさから、家庭医が患者を選り好みするようになりました。受け付けない患者のリストには精神科系疾患、薬物依存、ホームレス、慢性期疾患、高齢者、疾病障害手当を受け取っている者など、とても悲しい現状が続いています。それを是正するためにNP制度ができました。


日本では医師の働き方改革の一策として診療看護師案が議論されていますが、カナダでは医療偏在の是正と公平な医療の提供のために、つまり国民の医療へのアクセス向上のためにNP制度が作られました。このように主語も目的も違うのです。よって教育プログラムも異なると言うわけです。


さあ、日本のみなさん、国民として、医療者として日本に必要なのは何なのでしょうか?

このようなことを筑井さんの講演を聞きながら私は考えていました。この答えによって日本の看護系大学院と看護協会は日本版ナースプラクティショナーのプログラムや目的を考え直す必要があるのではないでしょうか?



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