いつから、国家でもない一種の極右軍事宗教集団のような「イスラム国(ISIL)」という極悪組織の動向が注目されるようになって来たのだろうか。
その遠因・近因についてはこれ迄縷々報道・解説もされて来ている。その遠因・近因を除去する諸策を確実に推進すれば、同集団の崩壊は可能な筈だ。しかし、それが難しいが故に大変厄介な国際問題になっている。でも例えば、関係国が厳格に提携対応して●外国からの戦闘志願員の流入阻止●食糧・武器・弾薬・燃料等の補給兵站に関する闇ルートの完全遮断等を行えば相当の効果はある筈だが、何故そう出来ないのか、何が問題なのかと云うような事柄に関する報道や解説はあまりされていないのは何故なのか●空爆参加有志連合による対応だけでは、目的達成迄にはあと2~3年もかかるとのことだから、このテロ集団「殲滅」の戦いは未だ初期段階なのだろう。
ところで、自らをカリフ(預言者ムハンマドの後継者)と称して「イスラム国(ISIL)」の最高指導者として同集団を統括しているとされる「アブ・バクル・アル・バグダディ」は、「カリフ制国家(預言者ムハンマドの後継者によるイスラム諸国の共同国家)」建設のため、敵対するものすべてを暴力的に打倒・抹殺する恐怖思想を行動原理としているようだ。
その本性は、彼等が邦人人質殺害後改めて世界に宣言した最近の声明を観る迄もなく明らかである。過日彼等が発した「テロに関する声明」を聞いて当方が想起したことがある。それは、かって、「欧州に怪物が、共産主義という怪物が出た・・との書き出しで始まる有名な「共産党宣言」の中に、「共産主義者は、その目的があらゆる現存する社会条件を暴力的に打倒することによってだけ達成出来ることを公然と宣言する」とした一文があることだ。
前記の「宣言」は,後年世界の約1/3が、社会主義国化したその国づくりの理論的教書にもなった古典書である。古い話で比較の背景・条件や対象は勿論異なるので一概には云えないが、「イスラム国(ISIL)」も、世界に脅威を与える狼軍団のよう存在で、カリフ制国家(新イスラム支配体制)樹立のための暴力的闘争手段を基本としている点で、前記宣言に通ずる原理があるように思うのだ。
何故、武装闘争を基本とした集団なのか、凶悪な暴力肯定を前提とする主義・主張のどこに、どんな問題があるのか、過日NHKの「イスラム国(ISIL)に関する報道特集」は、その辺の事情を知る番組としては、極めて有益であったように思う。
しかし、総じて云えることは、最近の「イスラム国(ISIL)」に関する報道を見聞きしても、伝えられるのは、事件の経緯や現状等の説明や解説が殆どで、視聴者は一連の事件を「ドラマ的感覚」で何度も見せら、観ている感じがしている。もっと「イスラム国(ISIL)」等過激諸集団の「悪性」をその宗教思想・主義の面からも取り上げて解説し、正しい知識を啓蒙する報道姿勢があってしかるべきなのに、マスコミ各社ともその努力が概して不備不足していると当方には思えてならない。
この傾向は、国内で近年発生し続けている不可解な「殺人事件」等に関する一連の報道についても云えることだ。「悪の真似事連鎖」に類する事件が何故起き続けるのか、どうすれば、そうした事件の連鎖的発生を防止乃至は減少させることが出来るのか、国・関係機関や識者等はもっとこの観点からの報道姿勢や努力があってしかるべきではないか。
「イスラム国(ISIL)」という狼軍団を宗教思想面で中東地域だけでなく、世界の脅威集団として拡大させないためにも、日本を含め関係各国は、彼等の宗教原理思想や行動原理に関する批判的啓蒙を機会ある毎に、更にもっと伝える努力を続けて貰いたいものである。
世界的にそうした地道な努力の成果が、結果的には「イスラム国(ISIL)」への心情的同調者を生み出さず、テロの脅威に屈しない抑止効果に繋がるのではないかと思う。
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます