1、21日の参院選に向けた各党の選挙活動が益々ヒートアップしている。毎度のこと乍ら、各党は自党の主張こそが、国民生活の安全と安心を実現出来ると声高にアピールしている。その主張の中でも特に当方が、違和感を感ずるのは、某左派政党の主張である。以下そのこと等に関し若干言及したい。
2、その1は、同党は、基本的には自衛隊違憲の立場なのに、これ迄の選挙で一度も自衛隊の縮小改組乃至は廃止の基本主張を掲げたことはない。
原理原則を貫く同党は、違憲の自衛隊を憲法9条に明記して合憲化するのは論外だとして、大反対なのは当然だ。ならば、堂々と自衛隊の違憲性を訴えて党の立場を明確にすべきなのに、本来の主張を選挙の際に何故公にしないのか、それは、自衛隊と云う軍事組織を忌み嫌い敵視はするが、自衛隊員の皆さんはそうではないとの「二股公約的な自衛隊観」の立場を採っているからなのだろう。
その2は、各野党が、今度の参院選で大幅に多数議席を占めるようになったとしても、その後の国会で以下のような同党の主張を他の野党も全面的に受け入れて、同党ペースでその公約を具現することは、常識的に考えてもまず困難だろう。
何故なら、野党の中でも同党の内政経済政策は異質で極端過ぎて、その実施には多大の「混乱とリスク」を伴うこと必至であるからだ。
その最たるものは、「消費税に頼らない別の道で」約7兆円余の財源が賄えるとの主張である。具体的には、・大企業に対する法人税率の引上げにより4兆円、大株主優遇の税制改革により3.1兆円、更に思いやり予算の廃止で0.4兆円等により必要財源は確保可能だと試算していることだ。
そして、このことにより、・消費税10%引上げ中止も出来るし、全国何処でも・最低賃金1000円以上・目標1500円、・大学授業料等の半額化・大学生等70万人に月3万円の給付制奨学金の付与、国保料の大幅値下げ等が可能だと主張していることだ。いいこと尽くめのようだが、その実施には、政財界・国民を巻き込んだ大議論が政治課題となって紛糾することになるだろう。
大企業や富裕層からの大幅税収確保や大企業の内部留保を活用する等の財源確保論議には、2年前の安保法制論議時とは比較にならない程の対立と混乱を生ずる虞れ甚大だろうが、同党はこの大規模財源確保を如何にして可能にするのか、具体論については全く語ってはいない。
その3は、「今直ぐ、全国何処でも時給1000円、最低賃金時給1500円へ、中小企業への賃上げ支援を1千倍に」するとの公約実現に関する疑問も、前記同様エンドレスである。
この点でも、同党の主張は、欺瞞とまやかしだらけだと評さざるをえない。国内には、現在約432.6万社の企業体があり、その企業は日本の産業を支えている。そして、その99.7%は、中小企業で大企業数は僅かに約1.2万社:0.3%に過ぎない。
この現状で、大企業の税負担が大幅に増え、全国一律最低賃金1000円以上1500円化が制度化された場合、本来的に経営体力の弱い中小零細企業へのマイナス効果は甚大で無視出来ない。そのための中小企業支援策を講ずるとは言ってもその財源確保も、確約されたものでない故に、その余波は、軈て国内経済の停滞と混乱を齎すこと必至であろう。
最低賃金の大幅UPにより、経済低迷を招いている韓国の例もある。だから、経済全体の底上げ効果を計りつつ、段階的に最賃制を見直す方が現実的で、妥当な改革だと思う。最低賃金全国一律一斉値上げ策に伴うマイナス局面にどう対応するのか、同党の施策具現に関する疑問も多いが、この点についても同党の主張には、具現のための確たる裏付けがみられない。
3、経済以外の諸施策に関する野党各党の主張も基本的には反安倍一辺倒で、一部を除き、一聞一見して「然りで看て呉れは良さそう」な印象を与えるものもあるが、具現の手段方法論となると、詰めが甘いPRに過ぎないものも多々散見される。
当方は、与党の政策に全面的に賛同するものではない。がしかし、各党の内外政策・主張をよく読み、よく聞き自分なりに判断して、冷静に吟味・見比べているが、その結論としては、この点でも、保守本流の今の政治の姿形や流れを変える必要は基本的にはないと考えている。
思えば、当方、学生の頃は、左傾思想に嵌り込み、反安保運動に加担する等の時期もあったので、左系の思潮・原理も良く解っている積りだ。だが、今は、全く真逆の政治認識を有する立場の老生だ。憲法改正についても、当方は、基本的に賛成で時期・条件が適えば進んでやるべきだと思っている。「憲法9条を変えれば、自衛隊は、世界中どこにでも出かけて戦争をする軍隊になる」との主張は、まやかしの方便だ。
4、現在の自衛隊の「戦力」は、憲法9条に規定する「戦力」の枠をとっくに超え、自衛隊は実質的に世界有数の軍事戦力になっている。同条中の「戦力とは何か」「その他の戦力とは何か」そのことも良く説明出来ない与野党国会議員もいると以前聞いたことがある。それはともかく、安倍さんは内心では、法理論上疑義の多い自衛隊の存在を明確にしたいと認識しているのだろう。
しかし、最高指揮官自らが、自衛隊の違憲性を口が裂けても云える筈はない。そんな理由も有之で、総理は、改憲には意欲的なのだろう。だが、総理の9条改正論は詳述は略すが、中途半端な解釈改憲案で、これも変なまやかし案だ。だが、総理の改正の意図と方向性は評価したい。9条以外にも他に加除修正すべき条文もかなりある。何はともあれ、憲法改正は避けて通れない不可欠のテーマだと思う。
5、選挙に臨んで何党の誰に投票するかは、個人の選択の問題で全く自由だ。お人好し選挙民の中には、各党の綱領や基本方針等を読んだりしたこともなく、何となく野党寄りの政治の方が良さそうだと認識しているお方も多かろう。
そうしたお人に呼びかけたいこと。それは、支持したい党や候補者がいれば、当該党や候補者の主張内容はどうなのか、その中身と実現の可能性等はどうなるのか、それに伴う問題点は何か等について「よく考え、よく知り、よく確かめて」清き一票を投ずるべしだと申したい。2019.7.18記
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます