本当は怖いアイドリッシュセブン

　アイドリッシュセブンというアプリゲームがある。
　イケメンだらけで男性アイドルの世界が舞台だから、てっきり乙女ゲームかと思ったら違うようだ。
　登録すると「私」はマネージャーになる。
　マネージャーとして誰か一人イケメンを決めて、選択肢を選んで進んで好感度を上げてラブラブとなる……なんて展開は無い。
　ぶっちゃけ「私」は脇役オブ脇役で、登場人物たちからの好感度は高いけれど、メインストーリーはかなり骨太で深い。
　リズムゲームをしてストーリーを読み進める。

　それで何が怖いかというと、アルコール依存症視点からだ。

　アイドリッシュセブン（＝アイナナと略す）と名乗る7人の男性アイドルグループの中に、さらに「メッゾ」というユニットがある。
　17歳の高校生と20歳の美青年のユニットで、多分作品中一番人気だと思う。
　その17歳の子は父親がアル中で、母親がエネmeで幼い息子（と娘）を残して亡くなるため、兄妹は施設に預けられて別れ別れになった過去がある。
　20歳美青年の方は大財閥の一人息子で抑圧されて育ったけれど、スカウトを機に家も親も捨てて芸能界へ入った経緯がある。
　何が怖いかというと、20歳君は酒を飲むと記憶を失いいろいろやらかすという設定なんだ。
　20歳でこの癖はヤバい。
　アルコール依存症の素質バリバリだ。
　二次の世界だから笑えるネタだけど、リアルのアル依を知ってる身としてはうすら寒くある。
　17歳君はアル依の父親に殴られて育ち、その父親のせいで母親を失った自覚があるのに、泥酔してる20歳君を咎める気持ちが薄い。
　二次創作の世界では20歳の相方のために、自分も酒を飲もうとするとか描くファンがいる。
　自分たちがどんだけ怖いもの描いてるかわかってないんだろうな。

　アル依の息子はアル依になる。
　どれだけ父親を軽蔑していてもアルコールを飲み、パートナーに暴力を振るう。
　アイナナの17歳君がいつか酒を飲み、相方の20歳君を殴る蹴るする姿は決して妄想じゃ無いと思う。
　20歳君も20歳の若さで酒を飲んで記憶を失い、人間関係を壊すギリギリのヤバい橋を渡ってる。
　物語の世界だから笑い話だ。
　しかしその世界を楽しんでいるファンの10代〜上限無しの女の子は、その怖さを怖いとも思ってない。
　アルコールの席での笑い話……だと、現実世界とは違うんだと、理解できる人がどれだけいるか。

　こんなことをリアルのファンの間で言っても、ポカーンとされるか失笑されるかなのでここで言う。
　酒の席とか盛り上がりとかが笑い話にする世界観が怖い。
　まあ、アイナナだけでは無いんだろうけど、人気アプリゲームで二次創作も盛んだからこそ怖い。
　アイドルの酒の上の不祥事は、リアルでヤバい事件があったわけだし。
　アイナナ世界でも先輩たちが酒の席で吐いてまで付き合ったとか、生々しいエピソードが出てきて頭が痛い。

　アルハラダメ、絶対！！

　アイナナの世界に酒はいらないと思う。
　そうちゃん、酒やめよう。
　たまき、酒は飲むな。
　老婆心ながら……。