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一事起則一害生。
故天下常以無事為福。
読前人詩云、勧君莫話封候事、一将功成万骨枯。
又云、天下常令万事平、匣中不惜千年死。
雖有雄心猛気、不覚化為氷霰矣。
一事(いちじ)起(お)これば一害(いちがい)生(しょう)ず。
故(ゆえ)に天下(てんか)は常(つね)に無事を以(もっ)て福(ふく)と為(な)す。
前人(ぜんじん)の詩(し)を読(よ)むに、云(いわ)く「君(きみ)に勧(すす)む封候(ほうこう)の事(こと)を語(かた)ること莫(なか)れ、一将(いっしょう)功成(こうなり)りて万骨(ばんこつ)枯(か)る」。
又(ま)た云(い)く、「天下(てんか)常(つね)に万事(ばんじ)をして平(たい)らかならしむれば、匣中(こうちゅう)に千年(せんねん)死(し)するを惜(お)しまず」。
雄心(ゆうしん)猛気(もうき)有(あ)りと雖(いえど)も、覚(おぼ)えず化(か)して氷霰(ひょうさん)と為(な)る。
何か一つ出来事があれば、一つの弊害が生れる。
だから、この世は、何事も起きないことを良しとしてきた。
昔の人の詩を読むと、「君、立身出世の話はしないでくれ。何故なら、一人の将軍の功績の影では膨大な兵士が犠牲となり、戦場で朽ち果てているからだ」
また、「天下泰平が実現できるなら、箱の中で千年も使われなくても、少しも悔むことはない(武将が自分を刀に準えたのだろう)」
(この弁からすれば)勇猛果敢な心があっても、氷やあられのように、知らない内に消えてしまう。
つまり、百戦錬磨の将軍でさえ、悲惨な現実を見続けていれば、戦意は消失し、何事も無い事が一番だと悟るものなのだ。
言い換えれば、達人は、禅語にいう「無事是貴人」、自然に手を加えないことが貴い事、ということを心に銘じておくべきだだろう。
平和な時代が続くと、平和の有り難さを忘れるものです。江戸時代の元和年間に長く続いた戦乱の世が終わり、幕末まで、平和な時代が続いたわけですが、血気盛んな若者の中には、戦いを望む者もいたわけです。
私は、明治維新というのは、いいようには評価できません。なぜなら、日本が軍国主義に向かって行くきっかけになったからです。
現代も、明治維新前に似たところがあって、平和の有り難さを忘れかけているところには憂慮しなければなりません。
故天下常以無事為福。
読前人詩云、勧君莫話封候事、一将功成万骨枯。
又云、天下常令万事平、匣中不惜千年死。
雖有雄心猛気、不覚化為氷霰矣。
一事(いちじ)起(お)これば一害(いちがい)生(しょう)ず。
故(ゆえ)に天下(てんか)は常(つね)に無事を以(もっ)て福(ふく)と為(な)す。
前人(ぜんじん)の詩(し)を読(よ)むに、云(いわ)く「君(きみ)に勧(すす)む封候(ほうこう)の事(こと)を語(かた)ること莫(なか)れ、一将(いっしょう)功成(こうなり)りて万骨(ばんこつ)枯(か)る」。
又(ま)た云(い)く、「天下(てんか)常(つね)に万事(ばんじ)をして平(たい)らかならしむれば、匣中(こうちゅう)に千年(せんねん)死(し)するを惜(お)しまず」。
雄心(ゆうしん)猛気(もうき)有(あ)りと雖(いえど)も、覚(おぼ)えず化(か)して氷霰(ひょうさん)と為(な)る。
何か一つ出来事があれば、一つの弊害が生れる。
だから、この世は、何事も起きないことを良しとしてきた。
昔の人の詩を読むと、「君、立身出世の話はしないでくれ。何故なら、一人の将軍の功績の影では膨大な兵士が犠牲となり、戦場で朽ち果てているからだ」
また、「天下泰平が実現できるなら、箱の中で千年も使われなくても、少しも悔むことはない(武将が自分を刀に準えたのだろう)」
(この弁からすれば)勇猛果敢な心があっても、氷やあられのように、知らない内に消えてしまう。
つまり、百戦錬磨の将軍でさえ、悲惨な現実を見続けていれば、戦意は消失し、何事も無い事が一番だと悟るものなのだ。
言い換えれば、達人は、禅語にいう「無事是貴人」、自然に手を加えないことが貴い事、ということを心に銘じておくべきだだろう。
平和な時代が続くと、平和の有り難さを忘れるものです。江戸時代の元和年間に長く続いた戦乱の世が終わり、幕末まで、平和な時代が続いたわけですが、血気盛んな若者の中には、戦いを望む者もいたわけです。
私は、明治維新というのは、いいようには評価できません。なぜなら、日本が軍国主義に向かって行くきっかけになったからです。
現代も、明治維新前に似たところがあって、平和の有り難さを忘れかけているところには憂慮しなければなりません。