自分の体の一部と別れを告げるのは僕にとって寂しいこと。
いや、こんな書き出しで始まるからといって、別に僕の手足がなくなるということではない。
僕の口の結構奥の方にいる白くて硬いもののことだ。
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…彼は生まれつき誰かに寄り添う運命を背負っていた。
この国家では、そのような運命を持つものは何年育てても成長せず、
国家の存続を危うくするものとして忌み嫌われていた。
国家の統治者はその子が言い伝えどおりに暴れだしても辛抱した。
いつか成長してこの国家の未来を支えてくれるに違いない、と。一縷の望みをもって。
しかし一縷の望みとはすなわち無知のことであったのかもしれない。
王は秘密組織「デンタル」に賭けた。
秘密組織「デンタル」は若干の報酬によってそのような子を国家が寝静まっている間に暗殺する。
或いは発掘してそこで得られた石灰質の代わりに銀を埋めていくという一風変わった組織だった。
そこで銀を埋めるというのは業界的な決まりなのだそうである。
組織の長「●●●●(←王の検閲により名前が塗りつぶされている)」は、
王の懇願を気の毒に思いつつもその子を救うことはできないだろうという見通しを告げた。
王は悲しんだ。
隣国の王が花粉や粉塵で大きな被害を被っている中、我が国こそは安泰だと信じきっていたからだ。
しかし、国の政治が危うくなっているのは誰が見ても明らかで、
王はその子と別れを告げる決心をした。
----------------
(普通の日記っぽく書くと…)
僕の親知らずはその手前の臼歯側に曲がって生えていた。
親知らずは曲がっていると何年経っても生えてこないらしい。
それどころか黴菌が入って腫れ上がってしまうこともある。
ある日、その腫れがメシを食えないところまでエスカレートしたので
ついに僕は歯医者に行くことを決めた。
喘息、アトピー、アレルギーなど持病の多い僕にとって、
歯に異常がないことは数少ない健康自慢だった。
よって残せるものなら残したいという希望を歯医者さんに告げたが、
「抜くタイプのケースです」と言われ、諦めて抜くことにした。
ああ、残念。
いや、こんな書き出しで始まるからといって、別に僕の手足がなくなるということではない。
僕の口の結構奥の方にいる白くて硬いもののことだ。
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…彼は生まれつき誰かに寄り添う運命を背負っていた。
この国家では、そのような運命を持つものは何年育てても成長せず、
国家の存続を危うくするものとして忌み嫌われていた。
国家の統治者はその子が言い伝えどおりに暴れだしても辛抱した。
いつか成長してこの国家の未来を支えてくれるに違いない、と。一縷の望みをもって。
しかし一縷の望みとはすなわち無知のことであったのかもしれない。
王は秘密組織「デンタル」に賭けた。
秘密組織「デンタル」は若干の報酬によってそのような子を国家が寝静まっている間に暗殺する。
或いは発掘してそこで得られた石灰質の代わりに銀を埋めていくという一風変わった組織だった。
そこで銀を埋めるというのは業界的な決まりなのだそうである。
組織の長「●●●●(←王の検閲により名前が塗りつぶされている)」は、
王の懇願を気の毒に思いつつもその子を救うことはできないだろうという見通しを告げた。
王は悲しんだ。
隣国の王が花粉や粉塵で大きな被害を被っている中、我が国こそは安泰だと信じきっていたからだ。
しかし、国の政治が危うくなっているのは誰が見ても明らかで、
王はその子と別れを告げる決心をした。
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(普通の日記っぽく書くと…)
僕の親知らずはその手前の臼歯側に曲がって生えていた。
親知らずは曲がっていると何年経っても生えてこないらしい。
それどころか黴菌が入って腫れ上がってしまうこともある。
ある日、その腫れがメシを食えないところまでエスカレートしたので
ついに僕は歯医者に行くことを決めた。
喘息、アトピー、アレルギーなど持病の多い僕にとって、
歯に異常がないことは数少ない健康自慢だった。
よって残せるものなら残したいという希望を歯医者さんに告げたが、
「抜くタイプのケースです」と言われ、諦めて抜くことにした。
ああ、残念。