【ケトン食: 実験のまとめ】
手帳を繰ってみると、かなり進行した糖尿病(空腹時血糖300mg/dL、HbA1c 11.5%)が発見されて「東広島市医療センター」内分泌内科に2週間の「教育入院」をしたのが、2008/4初めのことだから、もう8年もこの病気と取り組んでいる。
最初は主治医の指示どおりに、自己血糖測定器で血糖値測定をし、血圧を測定し、食前にインシュリンを打ち、2種類の内服薬を飲んでいたが、いっこうに病状が改善しない。
私は「病気は自然の実験である」と考えているから、「病気は実験チャンス」と考える方である。主治医と相談して2010年から「糖質制限食」に切り換えた。すると見る見る、空腹時血糖値が140mg/dL、HbA1c値が6.0%まで落ちた。内分泌の専門医がびっくりするような治療効果だった。
そこでまた相談の上、「自宅近所の診療所へ紹介してもらい、検査値や症状が悪化したら、医療センターを再受診する」という話をまとめた。それで2013/5から近医に受診するようになった。それまで飲んでいた糖尿病薬2種とインスリン注射はやめた。
ところが「糖質制限食」には弱点があり、食卓の上に炭水化物が並ぶ。それを適量だけ食べるというのは、不可能に近い。このためつい過剰摂取してしまい。血糖値上昇やHbA1c値の上昇が起きる。(下表の2015/4を参照)
<糖質制限食、ケトン食を比較した血液データ>
そこで2015/8から「炭水化物ゼロ」の「ケトン食」に移行した。これは前にも写真を紹介したが、今日食ったのはこんなものである(写真1)。
肉と野菜とヨーグルトとぶどう6粒、食卓の調味料としては塩胡椒とオリーブ油を用いている。私は幸いに腎機能がよいから塩の摂取は問題にならない。オリーブ油は500ml入りを月に1本は消費する。
「ケトン食」の専門書を読むと、果物には炭水化物(ブドウ糖)が含まれているが、この程度の量なら問題ないそうなので、ぶどうも食っている。
飲み物は「35%果実酒用甲類焼酎」にポッカレモンを加えて水で希釈したものだ。幸い深井戸なので16度の水道水が出る。夏はやはり冷たいレモン水のようなものが飲みたくなる。
前にケトン食を始めたら、血中ケトン体が3,100と正常値上限の27.6倍にまで上昇し、空腹時血糖値が137に下がったことを書いた(2016/4データ、表には記載せず)。
ただこのデータには、「ケトン食後1時間」の対比データがなかった。血中ケトン体値も食事後一過性に上昇し、体内での代謝が進むにつれて、値が低下することは当然予期される。
そこでこの8月9日には、食後1時間後に正確に採血してもらい、血糖値とケトン値を測定してもらった。(これは自費検査。)その結果は表の右端にあるように総ケトン3,793(うち3,267=86%がβヒドロキシ酪酸)という驚くべき結果が出た。
「総ケトン体」というのはアセト酢酸とβヒドロキシ酪酸の量の和をいい、いわゆるケトン体の主体はβヒドロキシ酪酸であり、これを燃料として燃やすのがいわゆる「ケトン・エンジン」だと納得した次第だ。
以上「ケトン食実験」の結果をまとめると、純粋のケトン食に移行するとケトン体の主体をなすβヒドロキシ酪酸が食直後には3,000を超えるが、身体や脳への悪影響はない。
8/8の天皇の「玉音放送」録画内容も、8/9に診療所で出会った他の患者さんのことも、ナースに2年がかりで教えてきた「絶対に針跡から出血しない採血方法」を、やっと彼女が体得したので、ほめてあげたこともきちんと記憶している。
私は宗田哲男医師の「ケトン体が人類を救う:糖質制限食でなぜ健康になるのか」(光文社新書)を読み、内容がもっともだと思ったので、自分の身体で実験してみた。ケトン食は「糖尿病、肥満だけでなく、がん、アルツハイマー病にも有効」と帯にあるが、私たちも「過剰なグルコースが、タンパク質と非特異的に結合する糖化反応」がこれらすべて病気の根底にあるのではないか、という「作業仮説」で研究を進めている。
「がんの早期診断」にPET(ポジトロン・エミッション・トモグラフィー)が良く使われるのは知られているが、あれはがん細胞が選択的にグルコースを取り込む性質を利用して、放射能標識したグルコースを注射し、それが集中して集まる場所(早期がん病巣)を検出するものである。
糖化反応のもっともよい指標が、過剰グルコースがヘモグロビンのアルファ鎖と結合するHbA1cの割合で、これは過去4ヶ月の血中グルコース平均値と相関するので、コントロールに成功した糖尿病患者は、服薬もインスリン注射も必要ない。4ヶ月に1度、血液の生化学検査を行い、数値が安定していることを確かめればよいのである。(現に、アメリカ糖尿病学会は、そのように患者指導している。)
これでもう「糖尿病対策としてのケトン食」については、理論的説明もでき、実験結果も出たので、何か特別なことが起こらなければ、もう書かないことにしたい。納得された方の実践を望みたい。
(写真1)
βヒドロキシ酪酸(beta-hydroxybutrate =BHB)はすで米国では「商品名KetoCaNa」としてAMAZONでサプリとして販売されているという情報が、山口昌美さんから寄せられた。先日の英「TIMES」報道にあったように、FDAが承認したものだろう。
ただその価格は
KetoCaNa (10.75oz=305g)$70.50 (=$0.23 /g)
Amazon(日本); 同上商品、¥22,015~28,697円
とかなり高価である。
私自身はサプリを一切服用しないので関係ないが、サプリには過信による過剰摂取のおそれがあるように思う。焼酎を薄めるのに、水とポッカレモンをいま使っているのは、夏場はチンする必要がなく、ポッカレモン中のビタミンCを破壊する恐れがないからだ。
冬になると、お湯割りが飲みたくなるので、また「梅昆布茶」パウダーを用いるつもりだ。
なお高グルコース血症(糖尿病)が、βアミロイド性認知症(アルツハイマー病)、動脈硬化症、がんのリスクを高めることについては、「集合知の会」で独自に検討を進めており、理論的仮説と実証データ(メタアナリシスを含む)が結びつき次第、別途に書く予定だ。
手帳を繰ってみると、かなり進行した糖尿病(空腹時血糖300mg/dL、HbA1c 11.5%)が発見されて「東広島市医療センター」内分泌内科に2週間の「教育入院」をしたのが、2008/4初めのことだから、もう8年もこの病気と取り組んでいる。
最初は主治医の指示どおりに、自己血糖測定器で血糖値測定をし、血圧を測定し、食前にインシュリンを打ち、2種類の内服薬を飲んでいたが、いっこうに病状が改善しない。
私は「病気は自然の実験である」と考えているから、「病気は実験チャンス」と考える方である。主治医と相談して2010年から「糖質制限食」に切り換えた。すると見る見る、空腹時血糖値が140mg/dL、HbA1c値が6.0%まで落ちた。内分泌の専門医がびっくりするような治療効果だった。
そこでまた相談の上、「自宅近所の診療所へ紹介してもらい、検査値や症状が悪化したら、医療センターを再受診する」という話をまとめた。それで2013/5から近医に受診するようになった。それまで飲んでいた糖尿病薬2種とインスリン注射はやめた。
ところが「糖質制限食」には弱点があり、食卓の上に炭水化物が並ぶ。それを適量だけ食べるというのは、不可能に近い。このためつい過剰摂取してしまい。血糖値上昇やHbA1c値の上昇が起きる。(下表の2015/4を参照)
<糖質制限食、ケトン食を比較した血液データ>
そこで2015/8から「炭水化物ゼロ」の「ケトン食」に移行した。これは前にも写真を紹介したが、今日食ったのはこんなものである(写真1)。
肉と野菜とヨーグルトとぶどう6粒、食卓の調味料としては塩胡椒とオリーブ油を用いている。私は幸いに腎機能がよいから塩の摂取は問題にならない。オリーブ油は500ml入りを月に1本は消費する。
「ケトン食」の専門書を読むと、果物には炭水化物(ブドウ糖)が含まれているが、この程度の量なら問題ないそうなので、ぶどうも食っている。
飲み物は「35%果実酒用甲類焼酎」にポッカレモンを加えて水で希釈したものだ。幸い深井戸なので16度の水道水が出る。夏はやはり冷たいレモン水のようなものが飲みたくなる。
前にケトン食を始めたら、血中ケトン体が3,100と正常値上限の27.6倍にまで上昇し、空腹時血糖値が137に下がったことを書いた(2016/4データ、表には記載せず)。
ただこのデータには、「ケトン食後1時間」の対比データがなかった。血中ケトン体値も食事後一過性に上昇し、体内での代謝が進むにつれて、値が低下することは当然予期される。
そこでこの8月9日には、食後1時間後に正確に採血してもらい、血糖値とケトン値を測定してもらった。(これは自費検査。)その結果は表の右端にあるように総ケトン3,793(うち3,267=86%がβヒドロキシ酪酸)という驚くべき結果が出た。
「総ケトン体」というのはアセト酢酸とβヒドロキシ酪酸の量の和をいい、いわゆるケトン体の主体はβヒドロキシ酪酸であり、これを燃料として燃やすのがいわゆる「ケトン・エンジン」だと納得した次第だ。
以上「ケトン食実験」の結果をまとめると、純粋のケトン食に移行するとケトン体の主体をなすβヒドロキシ酪酸が食直後には3,000を超えるが、身体や脳への悪影響はない。
8/8の天皇の「玉音放送」録画内容も、8/9に診療所で出会った他の患者さんのことも、ナースに2年がかりで教えてきた「絶対に針跡から出血しない採血方法」を、やっと彼女が体得したので、ほめてあげたこともきちんと記憶している。
私は宗田哲男医師の「ケトン体が人類を救う:糖質制限食でなぜ健康になるのか」(光文社新書)を読み、内容がもっともだと思ったので、自分の身体で実験してみた。ケトン食は「糖尿病、肥満だけでなく、がん、アルツハイマー病にも有効」と帯にあるが、私たちも「過剰なグルコースが、タンパク質と非特異的に結合する糖化反応」がこれらすべて病気の根底にあるのではないか、という「作業仮説」で研究を進めている。
「がんの早期診断」にPET(ポジトロン・エミッション・トモグラフィー)が良く使われるのは知られているが、あれはがん細胞が選択的にグルコースを取り込む性質を利用して、放射能標識したグルコースを注射し、それが集中して集まる場所(早期がん病巣)を検出するものである。
糖化反応のもっともよい指標が、過剰グルコースがヘモグロビンのアルファ鎖と結合するHbA1cの割合で、これは過去4ヶ月の血中グルコース平均値と相関するので、コントロールに成功した糖尿病患者は、服薬もインスリン注射も必要ない。4ヶ月に1度、血液の生化学検査を行い、数値が安定していることを確かめればよいのである。(現に、アメリカ糖尿病学会は、そのように患者指導している。)
これでもう「糖尿病対策としてのケトン食」については、理論的説明もでき、実験結果も出たので、何か特別なことが起こらなければ、もう書かないことにしたい。納得された方の実践を望みたい。
(写真1)
βヒドロキシ酪酸(beta-hydroxybutrate =BHB)はすで米国では「商品名KetoCaNa」としてAMAZONでサプリとして販売されているという情報が、山口昌美さんから寄せられた。先日の英「TIMES」報道にあったように、FDAが承認したものだろう。
ただその価格は
KetoCaNa (10.75oz=305g)$70.50 (=$0.23 /g)
Amazon(日本); 同上商品、¥22,015~28,697円
とかなり高価である。
私自身はサプリを一切服用しないので関係ないが、サプリには過信による過剰摂取のおそれがあるように思う。焼酎を薄めるのに、水とポッカレモンをいま使っているのは、夏場はチンする必要がなく、ポッカレモン中のビタミンCを破壊する恐れがないからだ。
冬になると、お湯割りが飲みたくなるので、また「梅昆布茶」パウダーを用いるつもりだ。
なお高グルコース血症(糖尿病)が、βアミロイド性認知症(アルツハイマー病)、動脈硬化症、がんのリスクを高めることについては、「集合知の会」で独自に検討を進めており、理論的仮説と実証データ(メタアナリシスを含む)が結びつき次第、別途に書く予定だ。
てんかん患者をケトン食治療する際、痙攣発作を抑止できる指標として用いられている。
最近は、BHBがある種のインフラマソームの形成を抑えるっていう論文が出てたりするね。関連した自己免疫疾患に効く可能性がある。