【書評など】
エフロブ「買いたい新書」書評に、No.243:永井隆「ロザリオの鎖」,アルバ文庫 を取りあげました。長崎原爆がらみの本としては時季外れの書評になりましたが、この本が長らく品切れだったためです。来年まで書評を待てないので、取りあげました。
http://www.frob.co.jp/kaitaishinsho/book_review.php?id=1415063100
泣けた…。全46篇の随筆集だが,冒頭にある書名と同名のわずか8頁の文章を読むだけで,三度も泣いた。その涙は,百田尚樹『永遠のゼロ』や長谷川伸『瞼の母』を読んで出るものと質が異なる。宗教的感情にちかいスピリチュアルな涙だ。
「こよなく晴れた青空を,悲しと思うせつなさよ…
召されて妻は天国へ…
かたみに残るロザリオの,鎖に白きわが涙…
ああ,長崎の鐘が鳴る,…」(作詞=サトウハチロー,作曲=古関裕而)
藤山一郎が歌う、この
歌曲「長崎の鐘」(昭和24年発表)を知らぬ人も少ないだろう。
著者は放射線科医で,診察と研究中に浴びた放射線のため,キュリー夫人と同じように白血病を発症し,さらに長崎の原爆炸裂を爆心地近くの医大で体験し,負傷した学生の救援に全力を尽くした。その長崎医大教授がわずか43歳で死ぬ2年前,1949年に書き残したのがこれだ。彼の『この子を残して』(サンパウロ),『長崎の鐘』(同左)は読んでいたが,サトウと古関の歌想曲想がどこから得られたか,どうしてもわからなかった。それがこの随筆集だったのだ。
寺田寅彦の随筆集が亡き妻を偲ぶ「どんぐり」ではじまるように,カトリック信仰を通じて結ばれた亡妻との,楽しくも短かった結婚生活を回想したのが冒頭の随筆だ。
「私の骨を近いうちに妻が抱いて行く予定であったのに…。運命はわからぬものだ」。
燃え落ちた台所のあたりで,遺骨の傍らに十字架の付いたロザリオを見いだした永井博士はそう書く。
子規が絶賛した幕末福井藩の歌人で国学者の橘曙覧(たちばなあけみ)に,こういう歌がある。
「たのしみは そぞろ読みゆく 書(ふみ)の中(うち)に 我とひとしき人をみし時」。
この随筆集は「普遍的人間」が書いた。だから読めばそこに誰でも「我」を見いだすだろう。
【お礼】
①(株)マスカンの桝井寛一さんから「『八十八(やそはち)からの伝言』に寄せて」という、2014/3に「文芸出版」から出た同氏の著に対する小冊子「感想集」の恵送を受けた。お礼申し上げます。献本に対する礼状をまとめたものだが、桝井さんの交友関係、一つの書に対する読み方の違いがわかって興味深い。平岡敬元広島市長がヨットマンだったとは知らなかった。
国会図書館からの礼状も入っている。私は書物に関しては「国立国会図書館法」というのがあって、出版社は納本が義務づけられていると思っていた。これは「国会法」130条に定められた法律だ。
ところがこの法律が『岩波・大六法』、『有斐閣・六法全書』に載っていない。国会図書館が「寄付」を呼びかけている有様だ。これでは文化国家といえない。六法の出版社がネグっているのだろうか?
http://www.ndl.go.jp/jp/aboutus/deposit/deposit.html
②香川のN先生から「お布施」として、バリスタ用「ネスカフェ・ゴールドブレンド」エコ・システムパック(詰め替え用)110g入りを沢山頂いた。心から感謝いたします。
1カップで2gm(小さじ2杯分)を消費するから、一日10杯飲むと1週間で、1パックがなくなる。
「食品成分表」によるとインスタントコーヒーには、重量%でカフェインが4%、タンニンが12%、ナイアシンが0.47%含まれているそうだ。緑茶、紅茶はナイアシン含量がゼロに近く、ビタミンB群がこれほど含まれる嗜好性飲料も珍しい。
カフェインのLD50は「メルク・マニュアル」によると、ラットで355mg/Kg。ヒト換算だと体重50キロの人が、一気に18杯のコーヒーを飲むと急性中毒症状が出ることになる。
カフェインには薬理学的に、呼吸と心臓の刺激、それに利尿作用があり、ナイアシン(ニコチン酸)とともに、私の脳の活性剤として欠かせない。
喫茶店文化を滅ぼしたのはインスタントコーヒーである。西洋が胡椒、茶、コーヒーの導入にどれほど苦労したことか。
コーヒー・ハウスはロンドンでもパリでも、文化人・知識人の交流の場となった(小林彰夫『コーヒー・ハウス』講談社学術文庫)。政治情報交換の貴重な場所でもあった。サルトルの大著『存在と無』はパリの「カフェ・ロワイアル」の自分用のスペースで、パイプタバコを薫らせながら書かれた。(ポール・ジョンソン『インテレクチャルズ』講談社学術文庫)。
パリのものをまねた東京の「カフェ・プランタン」は会員制だった。軽食と女給のサービスがあり、後にこれが「カフェ、クラブ」と「純喫茶」に分かれた。日本でも新宿中村屋のような喫茶サロンがあった(中島岳志『中村屋のボース』白水社)。
昔、口渇と頻尿・多尿は糖尿病のサインとされた。カフェインで利尿がつけば、体内の水分が欠乏して口が渇き、またコーヒーを飲むので、頻尿が起き、1日尿量は多尿となる。糖尿病の検査値が正常でも、こういう現象が起きるの。やはり医者の問診は重要だろう。今は、問診、視診、触診をなおざりにして検査データをパソコン画面で見ている医者が多すぎる。
コーヒーを飲むと胃が悪くなる人もいるが、私の場合は幸いにして、まったく異常がない。
エフロブ「買いたい新書」書評に、No.243:永井隆「ロザリオの鎖」,アルバ文庫 を取りあげました。長崎原爆がらみの本としては時季外れの書評になりましたが、この本が長らく品切れだったためです。来年まで書評を待てないので、取りあげました。
http://www.frob.co.jp/kaitaishinsho/book_review.php?id=1415063100
泣けた…。全46篇の随筆集だが,冒頭にある書名と同名のわずか8頁の文章を読むだけで,三度も泣いた。その涙は,百田尚樹『永遠のゼロ』や長谷川伸『瞼の母』を読んで出るものと質が異なる。宗教的感情にちかいスピリチュアルな涙だ。
「こよなく晴れた青空を,悲しと思うせつなさよ…
召されて妻は天国へ…
かたみに残るロザリオの,鎖に白きわが涙…
ああ,長崎の鐘が鳴る,…」(作詞=サトウハチロー,作曲=古関裕而)
藤山一郎が歌う、この
歌曲「長崎の鐘」(昭和24年発表)を知らぬ人も少ないだろう。
著者は放射線科医で,診察と研究中に浴びた放射線のため,キュリー夫人と同じように白血病を発症し,さらに長崎の原爆炸裂を爆心地近くの医大で体験し,負傷した学生の救援に全力を尽くした。その長崎医大教授がわずか43歳で死ぬ2年前,1949年に書き残したのがこれだ。彼の『この子を残して』(サンパウロ),『長崎の鐘』(同左)は読んでいたが,サトウと古関の歌想曲想がどこから得られたか,どうしてもわからなかった。それがこの随筆集だったのだ。
寺田寅彦の随筆集が亡き妻を偲ぶ「どんぐり」ではじまるように,カトリック信仰を通じて結ばれた亡妻との,楽しくも短かった結婚生活を回想したのが冒頭の随筆だ。
「私の骨を近いうちに妻が抱いて行く予定であったのに…。運命はわからぬものだ」。
燃え落ちた台所のあたりで,遺骨の傍らに十字架の付いたロザリオを見いだした永井博士はそう書く。
子規が絶賛した幕末福井藩の歌人で国学者の橘曙覧(たちばなあけみ)に,こういう歌がある。
「たのしみは そぞろ読みゆく 書(ふみ)の中(うち)に 我とひとしき人をみし時」。
この随筆集は「普遍的人間」が書いた。だから読めばそこに誰でも「我」を見いだすだろう。
【お礼】
①(株)マスカンの桝井寛一さんから「『八十八(やそはち)からの伝言』に寄せて」という、2014/3に「文芸出版」から出た同氏の著に対する小冊子「感想集」の恵送を受けた。お礼申し上げます。献本に対する礼状をまとめたものだが、桝井さんの交友関係、一つの書に対する読み方の違いがわかって興味深い。平岡敬元広島市長がヨットマンだったとは知らなかった。
国会図書館からの礼状も入っている。私は書物に関しては「国立国会図書館法」というのがあって、出版社は納本が義務づけられていると思っていた。これは「国会法」130条に定められた法律だ。
ところがこの法律が『岩波・大六法』、『有斐閣・六法全書』に載っていない。国会図書館が「寄付」を呼びかけている有様だ。これでは文化国家といえない。六法の出版社がネグっているのだろうか?
http://www.ndl.go.jp/jp/aboutus/deposit/deposit.html
②香川のN先生から「お布施」として、バリスタ用「ネスカフェ・ゴールドブレンド」エコ・システムパック(詰め替え用)110g入りを沢山頂いた。心から感謝いたします。
1カップで2gm(小さじ2杯分)を消費するから、一日10杯飲むと1週間で、1パックがなくなる。
「食品成分表」によるとインスタントコーヒーには、重量%でカフェインが4%、タンニンが12%、ナイアシンが0.47%含まれているそうだ。緑茶、紅茶はナイアシン含量がゼロに近く、ビタミンB群がこれほど含まれる嗜好性飲料も珍しい。
カフェインのLD50は「メルク・マニュアル」によると、ラットで355mg/Kg。ヒト換算だと体重50キロの人が、一気に18杯のコーヒーを飲むと急性中毒症状が出ることになる。
カフェインには薬理学的に、呼吸と心臓の刺激、それに利尿作用があり、ナイアシン(ニコチン酸)とともに、私の脳の活性剤として欠かせない。
喫茶店文化を滅ぼしたのはインスタントコーヒーである。西洋が胡椒、茶、コーヒーの導入にどれほど苦労したことか。
コーヒー・ハウスはロンドンでもパリでも、文化人・知識人の交流の場となった(小林彰夫『コーヒー・ハウス』講談社学術文庫)。政治情報交換の貴重な場所でもあった。サルトルの大著『存在と無』はパリの「カフェ・ロワイアル」の自分用のスペースで、パイプタバコを薫らせながら書かれた。(ポール・ジョンソン『インテレクチャルズ』講談社学術文庫)。
パリのものをまねた東京の「カフェ・プランタン」は会員制だった。軽食と女給のサービスがあり、後にこれが「カフェ、クラブ」と「純喫茶」に分かれた。日本でも新宿中村屋のような喫茶サロンがあった(中島岳志『中村屋のボース』白水社)。
昔、口渇と頻尿・多尿は糖尿病のサインとされた。カフェインで利尿がつけば、体内の水分が欠乏して口が渇き、またコーヒーを飲むので、頻尿が起き、1日尿量は多尿となる。糖尿病の検査値が正常でも、こういう現象が起きるの。やはり医者の問診は重要だろう。今は、問診、視診、触診をなおざりにして検査データをパソコン画面で見ている医者が多すぎる。
コーヒーを飲むと胃が悪くなる人もいるが、私の場合は幸いにして、まったく異常がない。
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