ある宇和島市議会議員のトレーニング

阪神大震災支援で動きの悪い体に気づいてトレーニングを始め、いつのまにかトライアスリートになってしまった私。

【メールから】難波先生より

2012-10-27 22:39:19 | 難波紘二先生
【メールから】
 1)香川のI 先生から「道徳意識」の問題についてご返事があった。ありがとうございました。


<正義を貫くことはなかなか大変なことだとも思います。人間は、心に弱い部分も持っていて、嘘も、いじめもしたくなるときがあります。でも、そこを何とか踏みとどまることが出来るのは、親や家族の顔が思い浮かんだり、少しは教師の顔も思い浮かんだりするからかもしれません。昔の子ども達は「、お天道様が見ている、神様が見ている、嘘をつくと閻魔様に舌を抜かれる、地獄に落とされる」などと親や祖父母から聞かされて、自分の行いを戒めていたと思います。今は、神様が見ているといわれても、証拠を見せろと言われる時代。人が見ていようが、見てなかろうが、正しいと思う道を貫いていく人を育てていくこと、ますます難しくなっていると思います。今、「お天道様が見ている、お天道様に恥ずかしい」的なもの(これが倫理と言えるのかどうかはともかく)ってあるのでしょうか。>


 最近読んだ本に、外山滋比古「空気の教育」(ちくま文庫)があります。吉田松陰の「松下村塾」からは、優秀な人材が輩出していますが、みな半年か1年しか塾生ではなかった。つまり塾では「知識」は教えなかった。何を学んだかというと「空気」つまり「風」を学んだと彼はいいます。


 それが「校風」であり、「家風」なのだといいます。この「風」は「知識の学び方」、「ふるまいのあり方」を教えることなのです。
 ユダヤのことわざに、「子供には魚の食べ方を教えるのではなく、魚の取り方を教えよ」というのがあります。
 知識そのものではなく、知識への到達の方法のことを「メタ知識」といいます。
 今の学校は「校風」がなく、家庭には「家風」がありません。私見ではそこに一番大きな問題があります。


 文化人類学者が、未開社会を調査研究し、「道徳的基準がどのように形成され、伝えられるか」を調べたところ、子供が幼いうちに、大人が手本を見せて、やってもよいこと、やってはいけないこと、を仕込むそうです。「子供は親の背中を見て育つ」といいますが、見られても恥ずかしくないような背中を今の親はもっていません。教師も同様でしょう。


 先日、岡山の「閑谷学校」を見学し、その歴史と実態のお話しを聞いて驚いたのは、「入学随時、卒業式なし、平均在学期間2年」ということでした。
これは「校風」ないし「メタ知識」の伝達が教育の内容であり、「知識の伝達」ではなかったことを意味していると思いました。


 2)「国家とは」という私の意見に対して、元海上自衛隊(将校)のMさんから意見が寄せられた。


 <契約国民説に大賛成です。少し心配なことがあります。戦勝国に与えられた日本、憲法のために戦ったことのない日本、には「憲法を守る」本質は理解されていないと思います。特に9条に特化されている人間や、先生のお話を聞いたことのない人には、本質が理解されないと思います。>


 私の言い方にも足りない点があったと思いますので、補足いたします。
 ルソーが「社会契約論」を書いた18世紀には、まだ「国民国家」という概念がありませんでした。そこで彼は自然発生的に成立した「原始社会」と憲法の下に組織された近代の人工的な「国民国家」を混同したのです。(正義概念の根底に、この仮説的な社会契約論を置いたのが、マイケル・サンデルの「正義論」です。)


 国家が憲法の下に組織された「人工的な結社である」という考え方は、1776年に独立したアメリカ合衆国でも理解されていませんでした。だから、「独立宣言」には、「政府が暴政を行い、人民を抑圧する場合には、それを倒し新しい政府を創設することが、人民の権利であり義務である」という文言が入っているのです。これは暴力革命の肯定です。今の「米国憲法」には、この文言はありません。


 「国家契約社会論」では、「日本が嫌なら他国へ行けばよい」という立場です。「日本国憲法に従い、市民の義務を遂行するのなら、他国からの移籍も歓迎」という立場です。実際にカナダ国籍は、150万円以上の保証金で買えるそうですし、オーストラリアでも専門職の移民を歓迎しています。
 私は、世界がグローバルになること、共通語は英語であることを予想していましたので、家族全員が英語が話せるようにしてあり、子供の一人がアメリカに永住し、アメリカ人と結婚することにも反対しませんでした。別に日本だけが国家じゃありません。


 それにしても「日本国憲法」はまともに読まれていませんね。今夜の「報道ステーション」で石原慎太郎辞任の記者会見で、彼のコメント、「憲法前文など、みんな読んだことないんだろう」というのが、字幕で「憲法全文」となって出てきたので、びっくりしました。日本の憲法には前文と本文とがあることを、テレビ局の人間が知らないとは…

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