【書評】エフロブ「買いたい新書」の書評に、三上延「ビブリア古書店の事件手帖」を取りあげました。JR鎌倉駅北側にある架空の古書店「ビブリア」が舞台の、古書にまつわる4つの話から成り立っています。
副題が「栞子(しおりこ)さんと奇妙な客人たち」で、店主で若い女性の篠川栞子がシャーロック・ホームズ、俺こと五浦大輔がワトソン博士という格好。梶山季之「せどり男爵数奇譚」を読まれた方なら、にやにやしながら読めるでしょう。
「ビブリア古書店」に出てくる1冊が350万円という太宰治「晩年」のアンカット判(但し復刻本)の「道化の華」のページを切って読みました。厚手の和紙に印刷してあり、紙の腰が固いので西洋のペーパーナイフでは切れず、カッターナイフが必要でした。
昔の人は、この「まだ誰も読んでいないページを切る」ことに無上の喜びを感じたそうですが、私には面倒なばかりです。それがこの「晩年」の最初の短編「葉」のページが切ってあるだけで、他がぜんぜん切ってない理由でしょう。
中味は作中人物、大場葉蔵こと太宰治が銀座のバーの若い女と鎌倉袖ヶ浦で投身自殺を図り、女は死んだが葉蔵は助かり、青松園という鎌倉の結核病院に収容される。入院してから退院までの、付き添い看護婦や尋ねてきた友人たちや兄とのやりとりなど、一時の交流を淡々と書いた、随筆とも物語ともつかない、駄作である。
退院の前日、看護婦の真野に誘われて、病院の裏山に富士山を見に登るが、曇っていて見えない。こうして「冨士を見たい」という希望を抱いて、葉蔵は退院する。自殺幇助剤は、兄が動いてくれて起訴猶予になるだろうと、楽観している。
わずかに、後年の冨士のモチーフがこの時に着想されたのだとわかるのが、収穫である。
副題が「栞子(しおりこ)さんと奇妙な客人たち」で、店主で若い女性の篠川栞子がシャーロック・ホームズ、俺こと五浦大輔がワトソン博士という格好。梶山季之「せどり男爵数奇譚」を読まれた方なら、にやにやしながら読めるでしょう。
「ビブリア古書店」に出てくる1冊が350万円という太宰治「晩年」のアンカット判(但し復刻本)の「道化の華」のページを切って読みました。厚手の和紙に印刷してあり、紙の腰が固いので西洋のペーパーナイフでは切れず、カッターナイフが必要でした。
昔の人は、この「まだ誰も読んでいないページを切る」ことに無上の喜びを感じたそうですが、私には面倒なばかりです。それがこの「晩年」の最初の短編「葉」のページが切ってあるだけで、他がぜんぜん切ってない理由でしょう。
中味は作中人物、大場葉蔵こと太宰治が銀座のバーの若い女と鎌倉袖ヶ浦で投身自殺を図り、女は死んだが葉蔵は助かり、青松園という鎌倉の結核病院に収容される。入院してから退院までの、付き添い看護婦や尋ねてきた友人たちや兄とのやりとりなど、一時の交流を淡々と書いた、随筆とも物語ともつかない、駄作である。
退院の前日、看護婦の真野に誘われて、病院の裏山に富士山を見に登るが、曇っていて見えない。こうして「冨士を見たい」という希望を抱いて、葉蔵は退院する。自殺幇助剤は、兄が動いてくれて起訴猶予になるだろうと、楽観している。
わずかに、後年の冨士のモチーフがこの時に着想されたのだとわかるのが、収穫である。
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