ある宇和島市議会議員のトレーニング

阪神大震災支援で動きの悪い体に気づいてトレーニングを始め、いつのまにかトライアスリートになってしまった私。

【中国臓器狩り】難波先生より(途中稿)

2016-01-12 11:58:29 | 難波紘二先生
【中国臓器狩り】
 中国での臓器移植は、以下のような略史を持つ。(中国政府は統計を明らかにしていないので、すべては断片的情報による。特に筆者の場合は、下記2書の記述からの抜粋による。)
1) D. マタス、D.キルガー:『中国臓器狩り』, (アスペクト,2013, 原著:D. Matas, D. Kilgour: “Bloody Harvest”,2006)
2) 謝冠園(監)D.マタス, T.トレイ(編):『中国の移植犯罪:国家による臓器狩り』(自由社, 2013)

 1970頃:生体腎移植開始
 1984=中国、免疫抑制剤サイクロスポリンを初輸入
 1984/10=中国、「処刑者の遺体及び臓器の利用に関する暫定施行規程」を制定、死刑囚の臓器利用を可能にする。当初は普通犯処刑者の遺体が利用された。
 1994=ウィグル人政治犯から最初の臓器摘出(「良心の囚人」の処刑者。これが後に「法輪講」関係者をドナーとする道を拓いた。)

 1992=李洪志、仏教を基礎とし「真、善、忍」、精神修養と健康法を兼ねた法輪講を開始
 1996=「法輪講」の書籍、中国でベストセラーに
 1999頃=「法輪講学習者」数、中国共産党員数より多い7000万人と推定、
 1999/7=江沢民政府「法輪講」を禁止、学習者のうち50万〜200万人が強制収容所送りに、
(法輪講は教祖も経典もなく宗教団体ともいえない。彼らはちょうどユダヤ人が収容所に送られたと同様に、裁判にかけられることもなく、突然に「蒸発」した)。
 1999=中国全国の腎移植件数、約4000件に(1965〜1999の年平均死刑執行数1680人)
 2002〜05=年平均死刑執行数1616人
 2005=腎移植、約1万件、肝移植、約4000件、他を合わせ約2万件と過去最高に
(過去の累計では約9万件に)
(中国、アメリカに次ぐ世界第二位の移植大国となる。
 2005の米国の臓器移植件数28,116件、うち死亡ドナー21,213件、生存ドナー6,903件)
 2005/7=中国衛生部(日本の厚労省)黄副部長「移植臓器の95%が処刑者由来」と発言
 
 2007/3=中国、「臓器移植法(人体器官移植条令)」を公布、死刑囚の臓器提供を合法化
 2008=中国の死刑執行数、1718人に(アムネスティ・インターナショナルの推計)
 2010/3=11省で「臓器移植ネットワーク」発足(心臓死からの臓器提供のみ受付)
 2011/3=ネットワーク職員「ドナー登録者は(1年間に)全国でたった37人」と認める。

 1971〜2001の期間に中国で行われた腎移植のうち、家族が提供したのが227例(0.6%)だという。2005の腎移植1万件のうち、死刑囚に由来するものは、この年の死刑執行数からみて、最大でも3232件しかありえない。家族由来はおよそ60件だ。すると残りの約6700件のドナーは誰なのか?
 これが法輪講学習者など「良心の囚人」に由来するというのが、カナダの弁護士D.マタスと同じく政治家・弁護士D.キルガーの詳細な調査により明らかにされた。(『中国臓器狩り』2013,原著2009)
 法輪講収容者のうち、2000〜2008の9年間に、生体解剖され臓器と生命を奪われた人数は約6万5000人とE.ガットマンは推計している。マタスとキルガーは、別の計算法により2000〜2005までの6年間の犠牲者数を約4万1500人と推定している。(ガットマン推計の6年間分は約4万3000人となり、両者の数値はほぼ一致する。)
 悪名高い関東軍の「731部隊」が細菌戦・毒ガス戦の研究実験に用いた中国人捕虜等の総数は約1000人と推定されている。これに対して中国側は「27万人」という数をあげている。(「世界戦争犯罪事典」項目担当者:常石敬一)

 中国でのこうした事態は2002年以後、世界が徐々に知るところとなり、国際的な大事件として、世界医師会や世界移植学会などが中国への批判をつよめて行った。
 「中国の大規模な臓器狩りは、2002年秋に始まり、2006〜2007年にピークに達した。」(『中国の移植犯罪:国家による臓器狩り』2013)
 国際移植学会の「イスタンブール宣言」(2008/5)やWHOの「移植指針」(2010/5)は、
「中国において臓器移植手術は成長産業だ。…2002年には天津市で、地上14階、地下2階、300床を持つ、アジア最大の臓器移植センター<東方臓器移植センター>の建設が始まった」(Matasら,2009)とあるように、上記書などの指摘による人道上の危機意識に基づいてなされたものだ。

 日本で当時、この問題に気づいていたのは、おそらく岡山大の粟屋剛教授だけだろう。少なくとも「病腎移植」問題に集中していた私は、完全に見落としていた。
 日本移植学会の幹部も同様で、元日本移植学会理事長田中紘一が監修して、雑誌「医学のあゆみ」特集号(2011/4/30)「臓器移植の新時代」が刊行された。これには高原史他による「イスタンブール宣言後のWHO・国際移植学会の取組み」、加藤俊一(東海大医学部教授)「生体ドナーの保護と補償のあり方」という2論文が掲載されている。
 高原論文では、「日本のこれからの課題」として、人口100万人当たりの年間臓器提供者が、欧米先進国15〜40人、韓国6〜7人、台湾5〜6人に対して、日本は1.5人と最低であることが述べられているが、中国の状況についてまったく触れていない。
 加藤論文でも「中国渡航移植問題」が解説されていない。つまり中国で、年間に約7000人の「法輪講」学習者が生体解剖され、臓器ドナーにされているという事実は、これら二つの論文ではまったく紹介されていない。

 同年11月の雑誌「Pharmacia Medica」の特集「臓器移植をめぐる最近の話題:臓器移植法改正後の展開」では、前移植学会理事長寺岡慧(国際医療福祉大・熱海病院)が「非倫理的生体腎移植の防止のために」という論文を寄せ、「イスタンブール宣言」と「WHO指導指針2010」について解説している。寺岡は、「病腎移植は非倫理的である」ということを強調しているだけで、中国における「非倫理的な国家的臓器狩り」には一言も触れていない。WHOの指導指針について寺岡は、「臓器売買により移植した患者の管理を断った場合においても医師は何らの制裁を受けない」と書いている。(これは明らかにWHO指針の誤読だ)

 「医学のあゆみ」の加藤論文は、「WHO指針」の原則(ガイディング・プリンシプル)全11項のうち、第5項までを翻訳紹介しているが、第6項以下を翻訳紹介していない。
 「寺岡言明」に対応する英語原文は、原則第7項の補足説明にあり、「Post-transplant care may be provided to patients who have undergone transplantation at such facilities (臓器売買により移植を行う施設をさす), but physicians who decline to provide such care should not face professional sanction for such refusals, provided that they refer such patients elsewhere.」となっている。Sanctionは「制裁」であり、文意は以下の如くになる。
 「かかる施設で移植を受けた患者にも術後の医療が与えられてよいが、もし医師がそのような医療をしたくないとしても、その患者をどこかに紹介するのであれば、職業上の制裁を与えられるべきではない。」
 意味するところは「渡航移植後の患者の受診を受けた医師は、自分が引き受けたくない場合は、引き受けてくれる他の医療施設に紹介するのであれば、(医師の義務違反として)職業上の制裁を受けるべきでない」であり、寺岡の「臓器売買により移植した患者の管理を断った場合においても医師は何らの制裁を受けない」というのは、元移植学会理事長にあるまじき誤読であり、人道と医師法無視の文言である。
 原則第7項の主文は「問題の細胞・組織・臓器が、ドナーまたは死亡したドナーの近親者に対する搾取、強制または売買により獲得されたものである場合には、医師や医療関係者は移植に関与すべきでないし、保険会社などはかかる行為に支払いをすべきでない」とあり、明らかに中国での臓器移植を対象としている。
 外国の医療保険会社が、医療費の負担が安くてすむ「渡航移植」を歓迎していることが、中国渡航移植が増える一因だということは、上記2書にも書いてある。
 移植学会が示し合わせたのかどうかは知らないが、結果的に寺岡慧の独断と偏見がまん延してしまった。高原史が、寺岡のこの文言を拡大解釈して,のちに関西における「海外渡航移植者のケアをした場合、厚労省から処罰される」という風評になったものであろう。

 「渡航移植患者」の診療拒否は医師法違反である。厚労省から罰せられるという虚言を振りまき、渡航移植患者の診療拒否を日本移植学会が指導しているとしたら、「日本では最初の心臓移植が殺人だったから、移植医療が国民の信頼を失った」というオペルツ教授の指摘は正しい。「渡航移植患者の診療拒否」は移植医療への信頼をさらに増幅するだろう。
 批判するだけではいけない。イスラエルが「渡航移植問題」にどう対処したかを述べ、対案を提示したい。(別項とする)
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