ある宇和島市議会議員のトレーニング

阪神大震災支援で動きの悪い体に気づいてトレーニングを始め、いつのまにかトライアスリートになってしまった私。

Season’s Greetings 2015~16/難波先生より

2016-01-02 11:00:28 | 難波紘二先生
 Season’s Greetings 2015~16: うたかたの記
 暮れに山道を気分転換にドライブした。自宅北西にある鷹巣山(922m)の東南山麓は「県民の森公園」になっていて、林道・遊歩道が整備されている。約500mの高度で南山麓を東向きに半周したのち、細い林道を北東の豊栄町に下りて行くドライブを楽しんだ。
 途中に林道から登山道が分岐する地点があった。緑に苔むした道を歩いて行くとせせらぎを挟んで、丸太で滑り止めをした登山道が始まる。真冬だから鹿の鳴き声もなく、あたりは静寂そのもの。渓流には小さな滝が三つできていて、1/fゆらぎ音が強弱、高低のハーモニーになって聞こえる。思わず苔の上に座り込み、うっとりと水音に聞き惚れた。(写真1)

 「こんな風景が我が家の庭にもほしいな…」と思った。せせらぎはある。苔むした平らな遊歩道もある。しかし滝と滝壺と隣地境界を斜めに上がる落ち葉が敷きつめた坂道はない。
 一番大きな滝を観察すると、滝壺の水面に「うたかた(泡沫)」が浮いているのを目にした。この山の伏流水は三原の「酔心酒造」が醸造に用いている水質のよい硬水だ。だが渓流は鷹巣山の落葉樹の腐葉土をくぐり抜けた表層水だから不純物が多いのかも知れない。純水だとこれだけの水泡はできない。界面活性をもつ成分が含まれているのだろう。
 滝壺のアップ写真を撮ろうとしたが、木立に囲まれて薄暗く自然光では無理だ。そこでフラッシュを使用して1/200くらいのシャッターを切った。するとあっと驚く写真が撮れた。肉眼には残像効果が1/18秒あるから、それより早く動く物はつながって見える。だが写真は瞬間を切り取りフラッシュは反射光を生みだす。それがセレンディピティだった。何と滝の白さは多数の小水泡の集合から成り立っていた。(写真2)

 「よどみに浮かぶうたかたは かつ消えかつ結びて 久しくとどまりたるためしなし」と書いた鴨長明は滝壺表面の水泡を何度も観察したにちがいない。しかし肉眼での観察だから、水の乱流が空気を取り込んで小さな泡の集合となり、それが落下する滝は光を乱反射して白く見え、滝壺では水泡が癒合して次第に大きくなり、表面張力の限界に達すると破裂して消えてしまう、というプロセスを観察できなかった。
 たった1枚の写真が、滝そのもののなかにすでに微細水泡が形成されており、落下地点を中心に水しぶきが上がり、それが再落下する時に、同心円状により大きな水泡が形成されることを示してくれた。よどみにある泡は驚くほど大きい。
 コップのなかの静止したミルクに一滴のミルクを落下させると、表面に美事な花冠(ロゼット)が形成される。滝壺表面に生じる現象は物理化学的には同じ原理によるものだ。これは寺田寅彦がどこかにもう書いているかもしれない。
 病気だけでなく自然も実験をやっている。それに学ぶ新しい年でありたい。(12/31/2015記)
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1 コメント

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耳鳴り (Mr.S)
2016-01-02 11:56:00
明けましておめでとうございます。
渓流のせせらぎは心休まりますね。
私などは年末から半月ほど過度のキーンという耳鳴りに悩まされ、TRTという耳鳴療法をyoutubeで行っていますが、医者に貰った薬は全く効きませんね。
渓流や雨音などの自然音や水道水が水道管を通る音も耳鳴りを緩和させてくれますが完治には至りません。
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