ある宇和島市議会議員のトレーニング

阪神大震災支援で動きの悪い体に気づいてトレーニングを始め、いつのまにかトライアスリートになってしまった私。

【書評】山中伸弥・緑慎也:「山中伸弥先生に,人生とiPS細胞について聞いてみた」/難波先生より

2014-05-19 14:34:55 | 難波紘二先生
【書評】エフロブ「買いたい新書」の書評No.217に山中伸弥・緑慎也:「山中伸弥先生に,人生とiPS細胞について聞いてみた」を取り上げた。
http://www.frob.co.jp/kaitaishinsho/book_review.php?id=1399599364
 No.215で学問的側面が主体の対談本『iPS細胞ができた!』を紹介したが,こちらは7割が自叙伝,終りの3割がジャーナリスト緑のインタビューになっている。「人間山中伸弥」をよくうかがわせてくれる本で,内容も読みやすい。
 山中は1962年,東大阪市で父がミシン部品の町工場を経営する家に生まれた。中学では柔道,高校時代は柔道とヴォーカル・バンドに熱中し,骨折も10回以上している。大学は「一浪して…」と思っていたが高三の夏に,経営不振のため父が自宅を売却し,一家が工場の二階暮らしになり,現役で入学できる神戸大学医学部に進んだ。星新一のショートショートやSF小説のファンで,徳田虎雄の著書『生命だけは平等だ』や中学時代から医師になることを勧めた父親の影響を受けたという。
 ある特定の遺伝子の働きをブロックしたノックアウト・マウスの作成技術を習得するため,1993年カリフォルニアの研究所に留学。ここで脂質代謝に関連する遺伝子を増強したマウスを作成したところマウスに肝がんができ,新しいがん遺伝子だと見つけた。続いてこの働きを抑制する別の遺伝子NAT1を見つけた。
 96年に帰国し,元の教室の助手となった。研究所から送られてきた3匹のNAT1を潰したマウスを増やして実験したら,なんとこの遺伝子はがん抑制遺伝子ではなく,初期胚の発生に不可欠な遺伝子だった。NAT1を潰すと子供が生まれないので,実験は失敗だが,山中が受精卵の発生や ES(胚性幹)細胞に関心をシフトさせたのはこの体験からだという。以後,体細胞に4つの遺伝子を注入して,iPS細胞を作成するまでの話はよく知られている。
 「人間万事塞翁が馬」という彼の好きな格言がピタリの人生だ。STAP騒動では,とばっちりが彼にも及んだがこの格言をきっと胸中につぶやいて,あの記者会見に臨んだのだろう。恩師や共同研究者への感謝や配慮の言葉を忘れない点にも,著者の謙虚な人柄が窺われる。
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3 コメント

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素人なので (酒井重治)
2014-05-20 03:02:44
私は生物科学分野には素人なので、感情でものを言わせて貰いますが、最初にSTAP細胞報道があった頃、何に嫌悪感を示したかと言うと、小保方でもムーミンでもなく、
ips細胞をSTAPと比較して貶した事が非常に悔しくてたまらなかった。
絶対に何かの間違いか詐欺であってほしいと、何の根拠もなく思ったのです。
小保方が胡散臭いと思えた裏には、そうした感情がありました。
思った通りの展開になって嬉しく思っています。
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酒井さんへ (うるさいおばさん)
2014-06-08 20:19:56
間違っていますよ。ipsを一番貶めたのは笹井さんですよ!
自分でわざわざ手書きで書いて、それも嘘のデータで!
次に、若山さん、小保方さんですよ。二人とも黙って聞いてたんですから!皆同罪です!
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よく読むこと (酒井重治)
2014-06-08 21:01:41
文章をよく読んでください。
最初の頃の話をしてるんです。
誰が初めから笹井氏の魂胆だと思いますか?
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