ある宇和島市議会議員のトレーニング

阪神大震災支援で動きの悪い体に気づいてトレーニングを始め、いつのまにかトライアスリートになってしまった私。

【書評】 芥川龍之介『薮の中・将軍』/難波先生より

2014-06-03 10:16:02 | 難波紘二先生
【書評】
 エフロブ「買いたい新書」書評に芥川龍之介『薮の中・将軍』,角川文庫を取り上げた。
 http://www.frob.co.jp/kaitaishinsho/book_review.php?id=1400047771
 芥川に長編小説はないが「蜘蛛の糸」,「杜子春」などの寓話や各国の古典に素材を求めたすぐれた短編小説がある。代表作は本書に収録されている「薮の中」だろう。1950年黒澤明が「羅生門」として映画化した。海外でも知られ, 洋画リメイク版「暴行」(1964)もある。
 時代は平安時代,都から近江に向かう街道脇の深い薮の裏で, 胸を一刺しで殺された若い武士の死体が発見された。現場には一本の縄と櫛しかなかった。事件を捜査する「検非違使」が第一発見者の木樵(きこり)など4人の証言から犯人の盗賊多襄丸(たじょうまる)を逮捕する。この男の供述があり,武士の妻の懺悔にくわえて,武士の死霊が事件を語るという構成だ。いわば4つの検事調書と2つの独白で物語が出来ており,ミステリー小説としても傑作だ。真実はひとつなのに, 三人の説明がまったく異なるというのが際だった特徴だ。
 盗賊は犯行を認め,極刑を希望する。馬に乗った女に一目惚れし,ぜひものにしようと欺いて夫を薮の中に連れ込んだ。不意打ちで倒し樹に縛りつけ,薮の外にいた女に男が急病だと告げ,引っ張り込んで犯した。夫の前で陵辱された女は二人が決闘して勝った方のものになることを望んだ。縄をほどき対決し男の胸を太刀で突き刺したが,終わって見ると女は姿を消していた。
 女は寺でこう懺悔する。手込めにあった後,縛られた夫の眼には蔑みの色があった。夫と無理心中しようと思ったが,懐刀で夫の胸を突いたところで失神し自殺は果たせなかった。
 死霊はこういう。犯した後で盗賊は妻をくどき始めた。妻は「どこへでも連れて行ってくれ」と言った。盗賊は俺に「あの女を生かすか殺すか?」と聞いた。妻はこれを聞いて一目散に逃げた。盗賊が縄を切って立ち去った後,落ちていた小刀で自分の胸を一突きした。
 三人が語る物語が全然ちがうところから「真相は薮の中」という日本語の表現が生まれた。「STAP細胞事件」でこの言葉を連想した人も多いだろう。しかし芥川は真相解明の手がかりを残したのかも知れない。(この後の推理は書評のHP本編で…)。
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4 コメント

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関由行、、、2014*05*13 (スタップ細胞騒動を振り返る)
2014-06-04 04:18:23
スタップ細胞は本当にあったのだろうか?私としては、あの論文全てが捏造だとは思っておらず、どこかに正しい断片が存在すると考えている。ただの自家蛍光の細胞塊からあそこまでのストーリーを作ったとは到底おもえない。スタップ細胞から作成したスタップ幹細胞は若山氏が第三者機関に解析依頼をだしているので、数か月中にスタップ幹細胞の正体、すなわちES細胞であったかどうかの結論はでるだろう。問題はスタップ細胞である。スタップ細胞は増殖しないため、現在世の中に存在しない。従って、小保方氏がスタップ細胞を作製したかどうか実験的に検証することは不可能である。また、あの実験ノートを見ると実験ノートと生データから追跡することもおそらく不可能。そうなると第三者が再現するしか道がないわけで、多能性幹細胞分野の世界的権威である丹羽氏の検証実験を見守るしかない。丹羽氏の実験結果によって、小保方論文の何が正しくて、何が間違っていたのかが明らかになることを期待する。
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Unknown (丹羽会見)
2014-06-04 04:25:17
ライヴイメージングはビデオで見ました。その後小保方さんがリンパ球採取からスタップ細胞迄作る一連の流れを自分の目で見ました。三回見ました。プロトコルエクスチェンジを書くにあたって、逐一手順を確認する必要があるから。
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いい子ぶるな (酒井重治)
2014-06-04 04:25:34
全部が捏造じゃないって?
詐欺師はな、嘘の中に真実を混ぜ込むんだよ。
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Unknown (Unknown)
2014-06-04 04:33:29
そうか、直接関さんに聞いてみよう。酒井さんのことも。
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