ある宇和島市議会議員のトレーニング

阪神大震災支援で動きの悪い体に気づいてトレーニングを始め、いつのまにかトライアスリートになってしまった私。

【不思議な事件】難波先生より

2015-01-29 12:33:09 | 難波紘二先生
【不思議な事件】
 1/26「読売」が
<北海道厚岸(あっけし)町で昨年10月に住宅の一部が焼け、この家に住む保育士の女性(当時53歳)の遺体が見つかる火災があり、北海道警厚岸署は26日、同居していた夫で会社員中嶋克則容疑者(53)(釧路市春採はるとり)を殺人容疑で逮捕した。>と報じている。
http://www.yomiuri.co.jp/national/20150126-OYT1T50071.html
 不思議なのは、司法解剖がおこなわれ<死因は「焼死の疑い」とされたが、首に絞められた痕があったことなどから、同署は珠己さんが出火前に殺害された可能性があるとみて調べていた。>という条。

 もし首を絞めて殺したあと家に火をつけたのであれば、もう呼吸が止まっているから、肺に煤を吸い込むことがない。もし生きた状態で「焼死した」のであれば、鼻や喉に煤がつくし、肺内にも煤が溜まる。それが死体を焼いたのか生きたまま焼いた(焼かれた)のかの、鑑別点になるということは、法医学の初歩の初歩で、どの本にもちゃんと書いてある。
 法医解剖を北大がやったのか、旭川医大がやったのか、それとも付近の病院で病理医がやったのかわからないが、頸部に絞め痕があったのなら、当然そこも解剖しているはずだ。
 絞めたら皮下に溢血が起こるし、喉頭の軟骨が折れたり、舌骨が上にあがり、舌がおさまらなくなるだろうに。どうして司法解剖で確定的な診断が下せなかったのか…。

 私が在職中に見学した「怨恨による殺人事件」では、犯人は周到な準備をして、細いサンドバッグで被害者の顔面を何度も強打していた。その上で、ナイフで心臓を刺して殺した。
 法医学の教授が執刀したのだが、彼は顔面に変色した部分を見つけると、顔の皮全体をすっぽり剥がして裏から観察した。すると顔面いたるところに皮下出血があった。
 「これは怨恨によるものです。
 プロはこういう殺し方をしません」
 と彼は断言した。

 警察はその線で捜査を進め、間もなく真犯人を逮捕した。
 北海道の事件は、どうなるのであろうか…

<続報>この記事は医師ブログm3でも話題になり、北海道から投稿があった。
<記事を書いた記者が、司法解剖とか検死の意味を知らなかったのではないでしょうか。
 意味の分からん記事の真相は、本日1.27地元北海道新聞の記事ですっきりしました。 
「死因は当初、焼死とみられていたが、司法解剖などの結果、火災前に首を絞められたことによる窒息死と判明した。」
 本当に医療関係記事を書く時に、報道の知識、姿勢が試されますね。>
 ということだそうだ。新聞記者の質も落ちたね…。
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