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ある日カッパ姉ちゃんとカメラおじさんの家に一匹の子犬がやってきた。
日々のうつろいの発見と冒険を胸に生きていこう!

愛するココロ-40-

2007年12月21日 | 投稿連載
     愛するココロ 作者 大隅 充 
          40
 その日の昼前から、カトキチのケイタイがつながらず
研究室に由香が連絡しても、朝若松の古い無声映画の
フィルムをもっている老人の家に行ったきり行方が
わからないと電話に出た助手の善明も困り果てていた。
 仕方ないので由香とトオルは、九州に帰る指示を
カトキチから待つ間、エノケン一号と学を学校に送って
から、学の家に行ってみょうということになった。
ワゴン車が小学校の体育館の脇を大通りへ抜けようと
したとき、体操服に着替えた学が渡り廊下から
元気に手を振った。
ひとり遅れて体育の授業に臨もうとするには、余りにも
のんびりとした可愛らしい笑顔だったのでたぶん遅刻
やズル休みなんか慣れているのだろうと珍しくトオル
が人物分析を右折のウィンカーを出しながら、披露する
ので由香がよくわかるねと感心して頼もしそうにトオル
の横顔を眺めた。
「でなきゃ、先生に叱られるのにぼくらに手を振る
どころか引き攣ってるよ。」
「そうね!確かに。」
「ソレハ、ケイケンシャシカ、イエナイコト」
後部座席からエノケン一号が合いの手を入れた。
「け、け、経験者?」
トオルは突然どもるとぷうっとふくれた。
「オナジケイケンシャ、ヨクワカル」
「なるほど!確かに。」
と由香は、バックミラーの中のトオルの眼を見て
ケラケラ笑い出した。
 やがてワゴン車は、繁華街を出て、そのメイン通り
に面したパチンコ屋を過ぎようとしていた。
「ココデ、トメテクダサイ」
「ええー。なんで?」
トオルがブレーキを踏んだ。
「ココニ、シラガ、イルカモ」
「白髪って何?」
サイドドアを開きながら、由香が言うとエノケン一号は、
キャタピラをうまく変化させて歩道へ降りてふりかえった。
「マナブクンの、カリノチチオヤ」
「仮の父親?」
「何?あの酔っ払いのDV!」
「イツモオソバンノトキ、パチンコ」
「学くんが言っていたのね。」
由香の問いかけにコックリとエノケン一号は頷いた。
エノケン一号とトオルと由香がパチンコ屋に入って
行ったとき、警官に取り押さえられた白髪の男が狭い
スロットマシーンに挟まれた通路を足をバタつかせて
暴れていた。
「わしがなんしたっちゅうねん。離さんかい。われっ。」
「毎回台に細工してからに。防犯カメラにちゃんと
映っとうねん。」
と黒ブチ眼鏡の店長が携帯ラジオぐらいのスロット
マシーンに妨害電波を出す機器を白髪男の腹の中から
取り出した。
「離せ!離せ!アホンダラ!」
「はい。おとうさん、署でゆっくり話聞きますよ。
他にも余罪がいっぱいあるみたいですから。」
若い警官は、中年の白髪男の両腕を背中でとって
落ち着いて店の外に連れ出した。
ちょうどトオルたちが入っていった自動ドアの入口と
反対側の商店街へ出る入口から三人が出て行った。
停めてあったパトカーに警官にそくされて白髪男が
観念して乗り込もうとして、前を見て立ち止まった。
歩美がパトカーの向かい側に立っていた。
「あんた・・・・」
「何見ようんじゃ。胸くそわるいわ。いね!」
「・・・・さよなら。」
唾をぺっと吐いて商店街を走り去った。
「学ちゃんのおばさん・・・」
由香が追ったが人ごみの中へ消えていった。
パトカーは白髪男を乗せて同時に表通りへ去っていった。
「学ちゃんどうなる?」
由香は、パチンコ屋の入口に戻ってきて不安そうに
ぽつりと言った。
「でもあのアパートにあのバカ男は、しばらくは戻って
こないから安心やん。」
トオルが洟をかみながら言った。
「でもああいう男ってシツコイのよ。」
「ダイジョウブ、ママヒッコスヨ。マナブト」
エノケン一号が店内から声を出した。
「キット、アノアユミサン。ヤリナオス。」
「そうならいいんだけど・・・」
「な、なんでわかんの。そんなこと。」
トオルは、店の中のエノケン一号に近づいてそういうと、
冷蔵庫型ロボットは、トランペットの音を鳴らして答えた。
「カン、ダヨ。」
「勘って?」
「カン、ダヨ。」
するとエノケン一号が廻していたスロットがスリー7が
揃ってフィーバーし始めた。
ランプがついて店員が飛んできたのでエノケン一号は、
トオルに台を譲って店の外へ出た。
トオルは、由香が自動ドアの外から呼ぶのも
お構いなしにニヤニヤフィーバーに浸ってしまった。
 結局三時間台の大当たりが止まらずスタバで由香と
エノケン一号は待つはめになった。
そして夕方カトキチからの連絡で九州に帰るため又
高速道路にのった。
ワゴン車の中でトオルが持ってきた山のような景品の
お菓子とお菓子とお菓子に埋もれながら。 



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東京ばな奈~シーちゃんのおやつ手帖28

2007年12月21日 | 味わい探訪
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