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ある日カッパ姉ちゃんとカメラおじさんの家に一匹の子犬がやってきた。
日々のうつろいの発見と冒険を胸に生きていこう!

こちら、自由が丘ペット探偵局-26-

2008年09月05日 | 投稿連載
こちら、自由が丘ペット探偵局 作者 古海めぐみ
            26
ダンボールの中にいたメスの10才ほどのチワワは、
すでに死んでいた。健太が何かないかとサーブのトランク
からYAZAWAと書かれたバスタオルを持ち出してきて
そのチワワを包もうとすると、上田祐二が親の死に目に
駆けつけた舞台俳優みたいに急に大きな声で健太の行動
を止めにかかった。そして自分の上着を脱いでTシャツ
をくるりとめくるとこっちを使ってくれ、とYAZAWA
を奪い取ってそのTシャツを健太に渡した。
「悪いね。」
「いいッス。もう。汗臭いけど・・・」
と言いながら中島が持っているずぶ濡れの電化製品のマー
クの入ったダンボールをいっしょに抱えた。
健太は、馴れた手つきで亡骸をクルリンと包んで丁寧に
ダンボールの中に寝かせた。
白い毛の亡骸は首が少し垂れたがカチカチでブルーのT
シャツを着た冷凍まぐろみたいにころんと転がって
横向きになった。
「これは、不法投棄と動物虐待で警察に届けてからオレ
が動物霊園に連れて行く。」
「そうう。被害届けは奥多摩町で出してるからこっちで
処理してもいいけどさ。」
中島が消防団の帽子のツバを整えながら言ったが、健太
は強い力を両腕に漲らせてダンボールをしっかりと掴ん
で自分の胸に抱きかかえた。
春は、健太が普段見せない、男らしいといえば男らしい、
おちゃらけない、強い決意の表情をたのもしく見守った。
「この半年で何匹も死んだ犬は、俺たち、処分してきた
から、ちゃんと埋めてやるよ。」
「いや、自分、やります。」
「いいの?」
「こいつは、オレが供養してやりますって。」
健太が静かだがはげしい心の渦を押し出してきっぱりと
言ったので、中島は黙った。
湖の波が雑草のはみ出したコンクリの岸にチャプチャプ
とリズミカルに音を立てていた。
「顎がなくなるまで子供を産まされたこいつを事故死の
犬と同じに山に埋めてやれない。オレ、胸が痛くて、
ただ埋められない。せめて最後は供養したい。」
「健太さんー。」
と春が健太の背中をそっと摩った。
「こんな姿になるまでこき使いやがって・・」
健太は震える指でダンボールのフタを閉じた。
「これって、奇形で顎がないんじゃねえの?」
中島が驚いて聞いた。
「あんまり無理にかけ合わせて何十回も子供産ませると、
メスの骨からカルシュウムが溶け出して子供の方に行っ
ちゃうの。だから、顎の骨がなくなっちゃうの。」
「そういうことで・・・」
春が中島に説明しているのを聞き流して健太はサーブの
荷台にダンボールを運んだ。
「それにしてもヒドイことするよな。」
と祐二もサーブに乗り込んでスポーツバッグから替えの
Tシャツを出して着ると運転台に座った。
健太が助手席に乗り込んでコンパクト・デジカメを祐二
に見せて、パチンと指を鳴らすみたいに言った。
「こいつ、絶対捕まえてやる。」
突き出されたデジカメの液晶画面を見て祐二は驚いた。
「これ、撮ってたんだ。さすが探偵!」
健太は、液晶のボタンを押して、中の画像を拡大した。
するとそこには、逃げるミニワゴンの後ろ姿が映っていて、
どんどん拡大すると後ろのナンバープレートが読める
までになった。
「オレは、許さない。」
そう吐き捨てると、デジカメの電源を切った。
サーブの車内がすうっと暗闇に戻った。
祐二は、室内灯をつけてバックミラーでヘヤースタイル
をチェックしようと前髪を櫛で梳かそうとしたとき、車内
が真昼のように明るくなった。バックミラーが光の反射で
見えなくなって眼球の奥が真っ白に感光した。
「中島さーん。」
上流の方からオートバイが走ってきたのだった。
中島を呼ぶ声の主は、そこに乗っていた。
「根津さん。」
中島が道路の真ん中へ走り出た。
「さっき電話もらって、おばあさんが行方不明だっつうて
たの。見っけたぞ。」
根津さんというシワが深くて農協のキャップを被った痩せ
た老人がカブに跨ったまま、エンジンを切らずに声かけた。
「ハルさん!」
春も眠い目をした朗報配達人のヘッドライトまで駆けつけた。
そばにいた中島が春に大きく頷いた。
サーブから健太と祐二も出てきた。
「どこにいたんですか?」
春が聞くと、エンジン音で聞き取れないのか老人で耳が遠い
のか、ええ?と春に聞き返して春が大きな声で同じ質問を
繰り返すとエンジンを切って、やっと根津爺さんが答えた。
「この先の道で倒れていたっさ。」
「大丈夫なの?」
「なんか寝てるみていぇだ。」
「意識がないの?」
中島がカブから一歩下がって言った。
「わかんねえ。起こしてたらなかなか起きねえで、中島さん
たちの声がすぐ先で聞こえたもんで、こっち来たぅんだ。」
「中島さん。車出してください。」
健太は、一番近い軽トラの荷台に飛び乗った。
中島と春がその運転台に乗ってエンジンをかけると方向転換
してカブの横につけた。
「根津さん。先導して。」
カブと中島の軽トラが発進して、祐二がサーブで後についた。
軽トラの荷台で吠える二匹の犬にエサをやりながら健太が
運転台上の幌フレームにしっかりと捕まった。
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アルマド~シーちゃんのおやつ手帖62

2008年09月05日 | 味わい探訪
原宿と言えば一昔前はクレープのイメージでしたが、
今、密かに人気があるのはパンダのお菓子。
パンダ顔のシュークリームは可愛いだけでなく味もグッドです♪
他にフィナンシェやスイートポテトなどがあり、
どれもパンダ顔で心和みます☆
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