これからは雨ガッパの季節ねって
ポッポ通信の鳩爺さんが言っていたら
もう夏みたいな日が土日つづいたよ。
いつもの駒沢公園へ散歩に行ったら
何か若いにんげんたちがやっていたよ。
大きなカメラでパシャパシャって
女の子を撮っていたんだ。
雑誌かCMの撮影だって、見物のひとが教えてくれた。
この真夏のような暑さの中何回も笑って
ポーズを繰り返していたんだ。
たいへんだ。
ぼくは、あんな長時間ガマンできないなあ。
たとえ大好きなカミカミジャーキーをもらっても。
モデルさんが疲れて、足を組み替えたら
「お仕事!お仕事!」って誰かが怒鳴ったよ。
椅子に座った女のディレクターとかいうひとだった。
ぼくも、わき見せず頑張って歩きだしたよ。
散歩はお仕事だからね。
ポッポ通信の鳩爺さんが言っていたら
もう夏みたいな日が土日つづいたよ。
いつもの駒沢公園へ散歩に行ったら
何か若いにんげんたちがやっていたよ。
大きなカメラでパシャパシャって
女の子を撮っていたんだ。
雑誌かCMの撮影だって、見物のひとが教えてくれた。
この真夏のような暑さの中何回も笑って
ポーズを繰り返していたんだ。
たいへんだ。
ぼくは、あんな長時間ガマンできないなあ。
たとえ大好きなカミカミジャーキーをもらっても。
モデルさんが疲れて、足を組み替えたら
「お仕事!お仕事!」って誰かが怒鳴ったよ。
椅子に座った女のディレクターとかいうひとだった。
ぼくも、わき見せず頑張って歩きだしたよ。
散歩はお仕事だからね。
ときどきこの家では、ドーナッツのような丸い板で
音楽をきくよ。
チューリップとか、オフコースとか、キャンディーズとか
ぼくはよくわからないけれど
CDとかいうものになっていない曲があるんだって。
くるくる回るのでふしぎでクンクンと鼻を近づけるんだけど
すぐに危ない、危ないと引き離されちゃうよ。
A面、B面と裏返してカメラおじさんが聴いているよ。
面倒だね。
でもこれってさ、A面B面で曲の選び方が違うんだそうだよ。
確かに!
ぼくもA面で吠えてる時とB面でお腹出してるときは
態度が違うよ。B面めんちゃんは降参ですぅ、もん。
音楽をきくよ。
チューリップとか、オフコースとか、キャンディーズとか
ぼくはよくわからないけれど
CDとかいうものになっていない曲があるんだって。
くるくる回るのでふしぎでクンクンと鼻を近づけるんだけど
すぐに危ない、危ないと引き離されちゃうよ。
A面、B面と裏返してカメラおじさんが聴いているよ。
面倒だね。
でもこれってさ、A面B面で曲の選び方が違うんだそうだよ。
確かに!
ぼくもA面で吠えてる時とB面でお腹出してるときは
態度が違うよ。B面めんちゃんは降参ですぅ、もん。
愛するココロ 作者:大隈 充
13
「時をかける少女」を見ているロボット。
それは、エノケン一号と呼ばれる小さな冷蔵庫のような箱型の
ロボットであるが、前列の二三人しかいない観客からしたら、
なんだか小さな子供が入ってきたような感じがした。
おそらく館内の客席にいる十人足らずの観客はみんな夕暮れまで河原の
草むらを走りまわった男の子が親を訪ねてそっと通路へ入ってきた、
そんな生き物の実感をもったに違いない。誰一人それが機械で出来た
人工知能の器であるなんて思ってもみなかった。
黴臭い映画館の薄暗い通路でそれは、じっと動かないで
確かな呼吸で息づいていた。
スクリーンは、いつの間にか音のない光の渦で溢れていた。
エノケン一号のアンテナの耳からは、映写室の源蔵と由香たち
の話が聞こえてきた。
「あれは、昭和28年だったねえ。ちょうど私が18才で
エノケンはもう四十代で父ちゃんと子供ぐらい開きがあったなあ。」
源蔵は、A、B二台の映写機のリールの切り替わりを小窓から
スクリーンの右上のロール替えマークを見て確認しながら話をつづけた。
「あの当時の新宿は、駅前で風車が屋根にあったムーラン・ルージュ
劇場が姿を消して、都電の走っていた辺りはバラックづくりの飲み屋
と一緒に歌舞伎町までキャバレーや映画館がにょっきりと
軒を連ねていたよ・・」
映画は再び音を取り戻して、場内を物語の荒波に埋め尽していた。
エノケン一号は、ゆっくりと後ろのドアまで下がって
うす暗闇に身を静かに委ねた。
そしてそのエノケンの乗り移ったロボットの眼が赤からグリーン
に変化して、今何かを思い出しているかのようにゆっくりと
点滅しはじめた。それは遠足で小高い山の上の展望台から自分の街
を初めて眺める少年の目のような澄んだ色合いをしていて、
どこか懐かしさと驚きを露にした瞬きにも似ていた。
「マリー・・・・」
エノケンは呟いた。
「マリー・・・・」
60年近く前の東京は新宿。
マリーと呼ばれた踊り子は、キャバレー新世界のナンバーワンだった。
日本人離れした大きなバストとすらっと伸びた長い脚にアンバランス
な童女のような黒目が額縁ショウの観客の人気を一手に集めた。
伏見京子。これがマリーの踊り子名簿に書かれた名前だった。
二十歳を過ぎたばかりのマリーの素顔の頬には、赤い身が透けて見えた。
楽屋にいても一目見ただけでマリーの居場所だけ輝いてすぐに見つけられた。
「マリーちゃん。森下のマサさんが寿司おごってくれるって。
下で待ってるよ。」
とボーイが花束を手渡した。
「そこに置いてて。シツコイナ。」
「頼んだよ。俺は伝えたからね。」
と洗濯に出す踊り子の衣装の入ったカゴをもって坊主頭の
ボーイは出て行った。
森下組の若頭村越マサは、新宿の特攻くずれの愚連隊を配下に
おさめた新興のチンピラだった。そのマサがマリーに惚れた。
マサは、そのリーゼントの黒髪が一度も崩れたとこを見せないように
その暴力と支配欲への執着も一度も崩れず、貫徹する怖さがあった。
マリーは、大きなため息をついて廊下へ出ると猿の扮装をした
エノケンにいきなり抱きつかれた。
「何?エノケンさん。」
「非常階段へ出て。」
『非常階段?」
「そこから下の映画館の映写室に降りられるから
そこへ入って裏口へ抜ける道がある。」
「・・・・・・」
マリーは、被り物を外したエノケンの真剣な顔を見つめて、
この人は味方だとすぐに悟った。
「映写技師には話してある。逃げ道はそこしかない。」
「だって・・・・・」
「自分を買かぶるな。」
「買かぶってなんかいないよ。」
「自分は器用に生きられるなんて思うな。」
「・・・・・・」
マリーは、エノケンの目に見つめられて何故だか涙が出てきた。
他人から面と向かってしかられたことがなかった。
「早く!」
「ありがとう。」
廊下のホール出口と反対のトイレのある非常階段へ走った。
そしてドアを閉めるとき、振り返ってもう一度エノケンの目
を見て歌うように言った。
「ありがとう!」
13
「時をかける少女」を見ているロボット。
それは、エノケン一号と呼ばれる小さな冷蔵庫のような箱型の
ロボットであるが、前列の二三人しかいない観客からしたら、
なんだか小さな子供が入ってきたような感じがした。
おそらく館内の客席にいる十人足らずの観客はみんな夕暮れまで河原の
草むらを走りまわった男の子が親を訪ねてそっと通路へ入ってきた、
そんな生き物の実感をもったに違いない。誰一人それが機械で出来た
人工知能の器であるなんて思ってもみなかった。
黴臭い映画館の薄暗い通路でそれは、じっと動かないで
確かな呼吸で息づいていた。
スクリーンは、いつの間にか音のない光の渦で溢れていた。
エノケン一号のアンテナの耳からは、映写室の源蔵と由香たち
の話が聞こえてきた。
「あれは、昭和28年だったねえ。ちょうど私が18才で
エノケンはもう四十代で父ちゃんと子供ぐらい開きがあったなあ。」
源蔵は、A、B二台の映写機のリールの切り替わりを小窓から
スクリーンの右上のロール替えマークを見て確認しながら話をつづけた。
「あの当時の新宿は、駅前で風車が屋根にあったムーラン・ルージュ
劇場が姿を消して、都電の走っていた辺りはバラックづくりの飲み屋
と一緒に歌舞伎町までキャバレーや映画館がにょっきりと
軒を連ねていたよ・・」
映画は再び音を取り戻して、場内を物語の荒波に埋め尽していた。
エノケン一号は、ゆっくりと後ろのドアまで下がって
うす暗闇に身を静かに委ねた。
そしてそのエノケンの乗り移ったロボットの眼が赤からグリーン
に変化して、今何かを思い出しているかのようにゆっくりと
点滅しはじめた。それは遠足で小高い山の上の展望台から自分の街
を初めて眺める少年の目のような澄んだ色合いをしていて、
どこか懐かしさと驚きを露にした瞬きにも似ていた。
「マリー・・・・」
エノケンは呟いた。
「マリー・・・・」
60年近く前の東京は新宿。
マリーと呼ばれた踊り子は、キャバレー新世界のナンバーワンだった。
日本人離れした大きなバストとすらっと伸びた長い脚にアンバランス
な童女のような黒目が額縁ショウの観客の人気を一手に集めた。
伏見京子。これがマリーの踊り子名簿に書かれた名前だった。
二十歳を過ぎたばかりのマリーの素顔の頬には、赤い身が透けて見えた。
楽屋にいても一目見ただけでマリーの居場所だけ輝いてすぐに見つけられた。
「マリーちゃん。森下のマサさんが寿司おごってくれるって。
下で待ってるよ。」
とボーイが花束を手渡した。
「そこに置いてて。シツコイナ。」
「頼んだよ。俺は伝えたからね。」
と洗濯に出す踊り子の衣装の入ったカゴをもって坊主頭の
ボーイは出て行った。
森下組の若頭村越マサは、新宿の特攻くずれの愚連隊を配下に
おさめた新興のチンピラだった。そのマサがマリーに惚れた。
マサは、そのリーゼントの黒髪が一度も崩れたとこを見せないように
その暴力と支配欲への執着も一度も崩れず、貫徹する怖さがあった。
マリーは、大きなため息をついて廊下へ出ると猿の扮装をした
エノケンにいきなり抱きつかれた。
「何?エノケンさん。」
「非常階段へ出て。」
『非常階段?」
「そこから下の映画館の映写室に降りられるから
そこへ入って裏口へ抜ける道がある。」
「・・・・・・」
マリーは、被り物を外したエノケンの真剣な顔を見つめて、
この人は味方だとすぐに悟った。
「映写技師には話してある。逃げ道はそこしかない。」
「だって・・・・・」
「自分を買かぶるな。」
「買かぶってなんかいないよ。」
「自分は器用に生きられるなんて思うな。」
「・・・・・・」
マリーは、エノケンの目に見つめられて何故だか涙が出てきた。
他人から面と向かってしかられたことがなかった。
「早く!」
「ありがとう。」
廊下のホール出口と反対のトイレのある非常階段へ走った。
そしてドアを閉めるとき、振り返ってもう一度エノケンの目
を見て歌うように言った。
「ありがとう!」
代々木上原駅。
エスカレーター工事中。
何やってるの?
っておじさんに子供が聞いたら、
ママが何やってるの?
っとその男の子に聞いてきて
ぼく、エスカレーターに乗りたかったのに・・・
何で動かないのか、このおじさんに聞いていたんだ。
と英語で母子のやりとり。
ガードマンのおじさん、説明したいけど
言葉がわからない。
コウジ、ダンダンダンとプレートトリカエ、アブナイヨ・・・・
はい。わかりますよ。とママのきれいな日本語。
エスカレーター工事中。
何やってるの?
っておじさんに子供が聞いたら、
ママが何やってるの?
っとその男の子に聞いてきて
ぼく、エスカレーターに乗りたかったのに・・・
何で動かないのか、このおじさんに聞いていたんだ。
と英語で母子のやりとり。
ガードマンのおじさん、説明したいけど
言葉がわからない。
コウジ、ダンダンダンとプレートトリカエ、アブナイヨ・・・・
はい。わかりますよ。とママのきれいな日本語。
巣作りして、子育てカラスは、気が荒い。
公園でもなかなか道をゆずらないよ。
こっちがよけるんだもの。
ゴミ置き場でもにんげんにいやがられる。
のら犬君がゴミをあさるのって見ないよ。
のら猫君はタマにいるけど・・・
鳥さんたちって野生が成り立っているんだってさ。
翼があって自分でエサが穫れるからね。
ぼくは、いま野生よりカッパ姉ちゃんたちとの生活の方がいいもん。
エサは、貰うしかないけれど、
このひとたちと遊んでやらないとかわいそうだもの。
散歩だって、ドッグカフェだって、いっしょに寝ることだって、
ほくよりも本人たちの方がずーと幸せそうなんだもの。
仕事中もぼくの顔がときどき浮かぶんだって・・・
・・・うむ。そんなこと云われちゃ、
裏切って野生なんか戻れないよ。
公園でもなかなか道をゆずらないよ。
こっちがよけるんだもの。
ゴミ置き場でもにんげんにいやがられる。
のら犬君がゴミをあさるのって見ないよ。
のら猫君はタマにいるけど・・・
鳥さんたちって野生が成り立っているんだってさ。
翼があって自分でエサが穫れるからね。
ぼくは、いま野生よりカッパ姉ちゃんたちとの生活の方がいいもん。
エサは、貰うしかないけれど、
このひとたちと遊んでやらないとかわいそうだもの。
散歩だって、ドッグカフェだって、いっしょに寝ることだって、
ほくよりも本人たちの方がずーと幸せそうなんだもの。
仕事中もぼくの顔がときどき浮かぶんだって・・・
・・・うむ。そんなこと云われちゃ、
裏切って野生なんか戻れないよ。
梅雨入り間近のバカっ晴れ。
30度に迫る夏日。
思わず氷屋さんが商売繁盛。
なつかしい車で店開き。
もはや車だけでも骨董価値が高い。
70才ぐらいの氷やさんは、慣れた手つきでかき氷を回す。
あっという間に売り切れ。
氷やのおじさん、満足そうに笑顔で店じまい。
本業の氷卸しの店は女房にまかせ、
浅草で育った子供時代が忘れられず、
自分がかき氷やになって子供がうれしそうに食べるのを
見たくて、ついつい移動氷屋さんを出動してしまう。
かき氷は、縁日の道へつながるそうです。
30度に迫る夏日。
思わず氷屋さんが商売繁盛。
なつかしい車で店開き。
もはや車だけでも骨董価値が高い。
70才ぐらいの氷やさんは、慣れた手つきでかき氷を回す。
あっという間に売り切れ。
氷やのおじさん、満足そうに笑顔で店じまい。
本業の氷卸しの店は女房にまかせ、
浅草で育った子供時代が忘れられず、
自分がかき氷やになって子供がうれしそうに食べるのを
見たくて、ついつい移動氷屋さんを出動してしまう。
かき氷は、縁日の道へつながるそうです。
ぼくは、散歩で小さいわんちゃんから
大きなワンちゃんまで会ったけれど、
こんな奴は、はじめてだったよ。
カチカチ鎧でニコリともしないんだ。
コンコン鼻をくっつけてもワンとも怒らない。
お店の前でじっと動かないよ。
しばらく道行くひとの目もかまわずニラめっこ。
そしたらカメラおじさんがぼくをそっと引き寄せて
いいかい。めんちゃん。このワンちゃんはね。
あんまり食い意地が張ったり、吠えたり噛んだりしたので
魔法で鉄にされちゃったんだってさ。
と云って歩き出した。
ぼくは、そいつの間抜けな顔を振り返りながら、ぶるっと
身震いしたよ。ほんとうかなあ?
大きなワンちゃんまで会ったけれど、
こんな奴は、はじめてだったよ。
カチカチ鎧でニコリともしないんだ。
コンコン鼻をくっつけてもワンとも怒らない。
お店の前でじっと動かないよ。
しばらく道行くひとの目もかまわずニラめっこ。
そしたらカメラおじさんがぼくをそっと引き寄せて
いいかい。めんちゃん。このワンちゃんはね。
あんまり食い意地が張ったり、吠えたり噛んだりしたので
魔法で鉄にされちゃったんだってさ。
と云って歩き出した。
ぼくは、そいつの間抜けな顔を振り返りながら、ぶるっと
身震いしたよ。ほんとうかなあ?
駅のホームで人が落ちないように
気をつけて、見張りをする仕事。
毎日やっていると
自殺しそうなひとの動きがわかるという。
重松清の「送り火」の一編にそんな出世しないで
駅のホームに立ち続ける駅員の話がある。
イジメにあっている少年が落ちないように
見守る。サリンジャーのThe catcher in the ryeを引用して。
やっぱり「ライ麦畑の捕まえ手」より「ライ麦畑でつかまえて」
の方がいい。訳者は、すばらしい。二つの意味が込められている。
いつ落ちるかわからない高い崖の上に広がる青々としたライ麦畑
で不安に走りまわる子供は、つかまえてほしい。
子供を救う捕まえ手になりたい主人公ホールデンも、本当は捕まえてほしい。
かくいう駅員もつかまえてほしい時だってある。
加害者、被害者、いつだって入れ替わってしまうのが現代ではないでしょうか。
気をつけて、見張りをする仕事。
毎日やっていると
自殺しそうなひとの動きがわかるという。
重松清の「送り火」の一編にそんな出世しないで
駅のホームに立ち続ける駅員の話がある。
イジメにあっている少年が落ちないように
見守る。サリンジャーのThe catcher in the ryeを引用して。
やっぱり「ライ麦畑の捕まえ手」より「ライ麦畑でつかまえて」
の方がいい。訳者は、すばらしい。二つの意味が込められている。
いつ落ちるかわからない高い崖の上に広がる青々としたライ麦畑
で不安に走りまわる子供は、つかまえてほしい。
子供を救う捕まえ手になりたい主人公ホールデンも、本当は捕まえてほしい。
かくいう駅員もつかまえてほしい時だってある。
加害者、被害者、いつだって入れ替わってしまうのが現代ではないでしょうか。
愛するココロ 作者:大隈 充
12
廿日市を過ぎた辺りから夕陽は、ほとんど斜めに
フロントグラスを横切っていた。
太田川沿いに車を止めて、由香とトオルが広島の中心地から
外れた商店街をエノケン一号と歩き出すころには、もうどの
店の看板にも灯りが点っていた。
キャタピラで動くエノケン一号は、障害物や歩行者を実に見事に
退けながら、裏路地へ裏路地へとふたりを誘導した。
「もうすぐ商店街も終りみたいよ。」
「本当にこんなところに劇場があんの?」
エノケン一号は、由香とトオルの質問には答えずスイスイ
角を曲がっていく。
そしてぴたりとキャタピラが止まって
頭のカメラ眼が看板を見上げた。
「ここ!」
12
廿日市を過ぎた辺りから夕陽は、ほとんど斜めに
フロントグラスを横切っていた。
太田川沿いに車を止めて、由香とトオルが広島の中心地から
外れた商店街をエノケン一号と歩き出すころには、もうどの
店の看板にも灯りが点っていた。
キャタピラで動くエノケン一号は、障害物や歩行者を実に見事に
退けながら、裏路地へ裏路地へとふたりを誘導した。
「もうすぐ商店街も終りみたいよ。」
「本当にこんなところに劇場があんの?」
エノケン一号は、由香とトオルの質問には答えずスイスイ
角を曲がっていく。
そしてぴたりとキャタピラが止まって
頭のカメラ眼が看板を見上げた。
「ここ!」
小さな花弁だった紫陽花の緑が
いつの間にか大きな花束に変身。
庭にぐるりと花の帯が出来た。
6月のぽっぽ通信。
習慣と学習は、おそろしいというニュース。
先月神奈川であった大捕り物の事件。
ブリーダーから大型犬ボルゾイが逃げた。
深夜40人の警官を動員して捜索。
沿道で発見。
しかしなかなか捕まらない。
そんなときある警官が「お座り」の一言でぴたり。
飼い主が来るまで動かなかったという。
「お座り」の一言で大型犬捕まる!
いつの間にか大きな花束に変身。
庭にぐるりと花の帯が出来た。
6月のぽっぽ通信。
習慣と学習は、おそろしいというニュース。
先月神奈川であった大捕り物の事件。
ブリーダーから大型犬ボルゾイが逃げた。
深夜40人の警官を動員して捜索。
沿道で発見。
しかしなかなか捕まらない。
そんなときある警官が「お座り」の一言でぴたり。
飼い主が来るまで動かなかったという。
「お座り」の一言で大型犬捕まる!