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新潟市の住宅設計事務所ネイティブディメンションズ=狭小住宅や小さい家、構造計算、高気密高断熱が好きな建築士のブログ

住宅の気密化

2010-02-17 16:56:15 | 温熱環境

昨年の次世代省エネルギー基準の改正において、気密性能に関する定量的基準と仕様規定は削除されました。

別に「きみつはきにしなくていいよ。ひみつでいいよ」と言う訳ではありません。(読めました?)

住宅の気密化は元々下記の目的があります。

①漏気による熱負荷を削減する為

②計画する換気性能を保つ為

③断熱効果の補完

④壁体内結露を防ぐ為

①と②は空気のコントロールで、③は熱のコントロール、④は湿気のコントロールでそれぞれ目的が違います。尚、④については以前透湿抵抗の記事で内装材で気密化するのは意味がない事を紹介済です。

なぜ、削除されたかと言うと①と②は近年住宅は黙っていてもそこそこ隙間の少ない建物が出来てしまうから、③と④については次世代省エネ基準の別の項目で対策されているからで、決して不要な訳ではないんです

ある意味、気密化と言っても一言じゃ片付けられないので、それぞれに分散してしまったという感じですね

だから、分散してしまうほど多岐に渡るのでとっても大切なんですが、分散してしまって表舞台に出にくくなった分、あまり注目を浴びていません

しかも、③と④は別項目で対策が図られているので確認方法がありますが、①と②については、まったく基準がなくなってしまったので設計士及び施工店側の判断がとっても重要です。

何の判断かと言うと、このブログでいつも言ってますが確認する事です。構造や熱損失を計算で確認するように、気密については、現場で測定して確認する事です。

「測定しなくても相当隙間面積は大体5.0c㎡/㎡以下だから大丈夫でしょう。」

の場合、1.0c㎡/㎡の可能性もあれば5.0c㎡/㎡の可能性もあるわけです。

基準以下であればOKじゃないんです(まぁ、その基準もなくなったわけですが)。数値が違うという事は、性能が違という事を理解するべきです。

では、どの位違うのでしょうか。

建築基準法では室内の空気が2時間に1回入れ替わる換気量を確保しなさいと決められています。つまり1時間あたり0.5回入れ替えなければいけません。

機械で強制的に空気が入れ替わる仕組みを作っている訳ですが、建物に隙間があればそこからも自然に空気が漏れたり入ってきたりします。ギョーカイでは温度差換気と言ってます。

温度差換気の目安は、隙間1c㎡/㎡当たり0.1回程度です。(新潟市の場合はもう少し少なくなるはずですが)

だから、1.0c㎡/㎡の建物だったら0.1回/h、5.0c㎡/㎡の建物だったら0.5回/hが勝手に換気されてるんです。

まだ、ピンと来なくても大丈夫です。

熱損失の計算をする時、空気は1立方メートル(m3)当たり0.35W/m3kの熱を含んでいると想定しています。つまり、1m3の空気が換気で外に出ていっちゃうと0.35W/m3kの熱も出て行ってるよと言う事です。

例えば、30坪(100㎡)の家で天井高が2.4mであれば240m3です。

相当隙間面積5.0c㎡/㎡の建物だと、240(m3)×0.5(回/h)=120(m3/h)の空気が勝手に入れ替わります。そこに容積比熱0.35を掛けた42W/Kの熱が勝手に逃げて行きます。

隙間相当面積1.0c㎡/㎡の建物だと、240(m3)×0.1(回/h)=24(m3/h)の空気が勝手に入れ替わって、容積比熱0.35を掛けた8.4W/Kの熱が勝手に逃げて行きます。

これを熱損失係数で表現すると、100㎡の建物なので5.0c㎡/㎡の建物ならば42/100=0.42W/K㎡、1.0c㎡/㎡の建物ならば8.4/100=0.084W/K㎡になります。

もうすぐピンときます。

次世代省エネ基準の場合においては新潟市は2.7W/K㎡以下にしなければいけないのですが、5.0c㎡/㎡の建物だと温度差換気だけで0.42W/K㎡も増えちゃう訳です。温度差換気は、熱損失係数の計算には含まれないので、気密化を意識していない設計のままだと2.7W/K㎡になるように断熱材を設定したつもりが、知らずに3.12W/K㎡になってる可能性があるという事です。

家を建てる前は「見違えるほど温かくなりますよ」と説明を受けて、現にその断熱材が施工されているのに、住んでみると「そんなに温かくないような」と感じる場合があれば、それは建物の隙間から洩れている可能性があります。5.0c㎡/㎡以下だろうから隙間なんて大した事ないだろうと思っていた事が、実は暖房効率を15%以上も悪くしている可能性があるんです。(2.7W/K㎡の建物がどれほどの性能かも知らずに説明している場合は問題外と言う事で)

その上、内部結露もしていたら目も当てられないっていう悲惨な状況になってしまいます

大切なのは確認する事。気密化の場合、気密測定をする事。

それが設計士のお仕事です。


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